表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マナの天啓者  作者: 一 弓爾
メモリーオブマナ
33/102

三十三話 改造和服の女

 深山は洋平の奥を見ている。


 奥から声が聞こえる。


「リカ……。オマエ何負けてんだよ。オレが来なかったら、どぉする気だったんだ?」


 そこには〝女〟がいた。男口調だが、胸にサラシを巻いており、やや着崩した赤い和服を着ている。戦闘用になのか、動きやすいように改造しているようだ。顔立ちはつり目で凛々しく、中でも目立つのが右頬に三つの獣の爪状の傷があることだ。身長は一六五センチメートル程。両手にはトンファーを持っている。


「先輩狩りするのが愉しくてつい……。でも、ナイスタイミングだよ栄順えいじゅん」深山は笑顔を向ける。


「新手か……。お前ェも深山の仲間か?」洋平は女を睨み付ける。


「そうだぜ。オレは騎召きしょう栄順。オマエは何て名だ?」騎召は堂々と名乗りを上げる。


「あァ? ……俺ァ和泉洋平だ。つか、知ってんじゃねェのか?」


「オレは強ぇ奴以外興味ねぇからな。オマエはなかなか骨がありそうだ……」

 騎召は笑みを浮かべ、ギザギザとした歯を見せる。


「ハッ! 俺とやろうってのか?」

 だが正直、これ以上は体力もマナも持ちそうにねぇ……。どうする……。場合によっちゃ深山を人質に交渉するか……?


「オマエとヤんのも面白そうだけど、今は時じゃねぇ。とりあえず、リカから離れろ!」


「嫌だね。コイツの命は俺が握ってんだ。俺の質問に答えろ。お前ェらは何者なんだ?」


「威勢がいいこったな。状況はオマエもそんなに変わんねぇよ。オレの後ろの死にかけ見てみろ」騎召は右手の親指で後ろを指す。


 そこには、瓜生の首元に噛みつこうとしているコウモリの魔獣がいた……。


「なっ……! やめろ! 状況は分かった。深山から離れたらいいんだな?」


「そうだ。少しでも妙な動きをした瞬間、あの男の首を喰い切る」

 騎召は指示に従わないと殺すということを淡々と伝える。


「……俺が深山から二メートル離れた時点でコウモリを離れさせろ。じゃねェと、俺はここを動かねェ……! 命のやり取りしてんだ。このくらいの条件はのんでもらうぞ!」


「オマエ、オレに条件つけようってのか……? まあいい。それで動いてやるよ」騎召は俺の目を見て真っ直ぐと答える。


「分かった」

 洋平は深山から二メートル離れる。その時点で瓜生からコウモリの魔獣は離れていった。ただし、二メートル圏内で飛んでいる。


「コレで信じたか? 和泉。オレの魔法は《召喚魔法》。街に召喚獣撒いたのもオレだ。コレ以上はオマエも戦えないだろ? このままオレ達を見逃せ。お互いにとって良い提案だと思うぜ」


「…………分かった。同時にお互いの仲間のもとへ行く。それでいいか?」


「おう。それでいいぜ。賢明な判断だ、和泉」


 洋平と騎召は同時に仲間のもとへ行く。


 コウモリの魔獣は洋平と騎召がすれ違って数秒後に、マナがなくなったようにゆらゆらと消えた。


 振り返ると、そこに騎召と深山はいなかった。洋平は魔法を解除する……。


「ちゃぱつん……。すまない。僕が弱いばかりに……」瓜生が泣きそうな声で話しかける。


「ミドイケ先輩は何も悪くないですよ。むしろ、かっこよかったっす。あの命懸かった状況で俺を逃がそうとするなんて、オムファタールも伊達じゃないですね!」


「いや、ちゃぱつん……君の覚悟の方が凄かった。僕の知覚力じゃよく分からなかったんだけど、内臓焼いてまで自分を強化したんだよね? 僕にはそんなことはきっとできない……」


「いえいえ、あそこまで追い込まないと多分、俺負けてたんで。あ、んなことより、救急車呼びましょう。……いや、渡辺さんが近ければそっちの方がいいか……? 一度連絡入れてみます」


 その後、晴夏と連絡がつき、舞里と一緒に来てくれることになった。

 洋平も瓜生も死にかけではあったが、舞里の《罪花魔法――回復魔花》で回復してもらった。


 翌日以降、三日間は裁奈探偵事務所で洋平と瓜生は《回復魔花》で回復に専念することとなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ