二十八話 魔獣
二日後――空乃との稽古をし始めてから、ちょうど一週間が経った。
洋平達三人は、大学には変わらず通学していたが、王誠などの魔法関連者とは誰一人会うことはなかった。
◇◇◇
そして八日目。
「今日も稽古お疲れ様。ヨウ、かなりいい線いってると思うよ。意外と飲み込み早いね。意外と!」空乃は笑いながら〝意外〟という言葉を強調している。
「一言余計だっつの。でも、ありがとな。空乃のおかげで『マナと氣の知覚』ってのがかなり掴めてきた気がする。あと、『半殺し稽古』のおかげで戦闘能力が上がって、怪我への恐怖が減ったと思うわ」洋平は笑いながら答える。
「ね! いいでしょ? 半殺し稽古!」空乃は嬉しげに明るく声を出す。
「おいおいおい、今の半分冗談だぞ? 半殺し稽古を肯定してる訳じゃねェからな? これからも半殺し稽古継続してほしいとかそんなんじゃねェからな……?」洋平は真顔で伝える。
「えぇ……? ツンデレですか~? 和泉君。もう仕方ないなぁ。これからも何度でも半殺しにしてあげるよ~!」空乃は満面の笑みだ。
「あれ? ツンデレってそんな意味だっけ? 俺下手したらデレる前に死なない? 俺死にたくないから稽古つけてもらってるんだよ……?」
「分かってる、分かってる。死なないように半殺しになる練習してるんだもんね!」
「ちょいちょいちょい、もうソレ冗談なのかどうかも分からないんですけど……」
「あはははは!」空乃は楽しげに高音の笑い声を上げる。
「笑い声だけで返答されると怖ェな……。まあ、冗談だと思っとくか。さてと、時間もだいぶ遅くなったな。今二十時くらいか。晴夏と渡辺さんと合流して帰るか」
「そうだね。もう真っ暗だしね~」
◇◇◇
洋平達は晴夏と舞里と合流し、一緒に帰っていた。
すると、途中で明らかにこの世の生物ではない〝魔獣〟のようなものが女性を襲っているのを見つける。
「んだ、ありゃ。七十センチメートルくらいのコウモリみてェな生き物が人襲ってんぞ……! しかも一方的に攻撃されてる! 助けよう!」洋平は焦って声量を上げる。
「おけ。私が助ける」
空乃がそう言った直後、高速で移動する。忍刀の斬撃でコウモリの魔獣は四等分に切り裂かれる。魔獣は灰のようになりパラパラと消える。
「大丈夫ですか? お姉さん」空乃が襲われていた女性に話しかける。
しかし、女性は恐怖の悲鳴を上げ、そのまま走っていってしまう……。
「ありゃ、怖がらせちゃったかな……」空乃は呟く。
「ありがとな、空乃。つか、なんだあの魔獣は……。まさかとは思うけど、街に魔獣が複数出現してんのか……?」洋平は嫌な想像を口にする。
「あ~。もしかしたら、可能性はあるかもね。ちょっと待ってて」
空乃は近くの電柱に飛び移り、そのまま電柱のてっぺんまで登る。そして、周囲をぐるっと見渡した後、降りてくる。
「残念だけど、ヨウの予測は合ってるね……。私は夜目が利く。大体、東西南北に数体ずつ魔獣がいるのが見えた。東と南は私一人で動いた方が早く片付けれると思う。西を晴夏と舞里ちゃん、北はヨウに任せてもいい? もしかしたら、魔法で召喚されてるのかもだから、その時は術者と戦う可能性もあると思う」
空乃が指示を出しつつ、推測も述べる。
急ぎの事態ということもあり、全員からそれで良いとすぐに同意を返す。
空乃に言われた位置を参考に全員、魔獣のいる場所に急行する――。




