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マナの天啓者  作者: 一 弓爾
メモリーオブマナ
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二十六話 晴夏と舞里

 裁奈探偵事務所に寄って、洋平と晴夏はいつもの山で稽古をつけてもらっていた。


「じゃあ空乃、稽古頼むわ。俺は新しく手に入れた《メモリーオブマナ》の練習がしたい。マナの知覚力ってのも上げたいんだけど、そっちは稽古する中で自然と上がると思ってる。空乃にはシンプルに俺に色んなパターンで攻撃してほしい。俺はそれに合わせた戦いができるようにしたい」


 洋平が空乃に説明する。


「オーケー。昨日にも色々聞いたけど、ヨウは結構大変な役目を執行者に任されてるんだね。私も力になれるように頑張るね!」空乃が両腕を曲げて見せる。


「おう! 頼むわ! そいじゃ《体質同調魔法、メモリーオブマナ――火炎魔法》」

 洋平の身体は火炎魔法そのものに変わる。


「よし、始めよっか。私、炎とか電気とか色んなモノに耐性あるから、気にせず攻撃してきてね。まあ、本気で来ないとヨウ一瞬で半殺しだと思うけどね~」空乃はからかうように声を出す。


「ハハ、そいつァ頼りになる。もちろん全力でいくぜ! 上道院お坊ちゃまみたいに、瞬殺されたくねェからよォ……。《火炎魔法――炎纏えんてん》……!」身体中に炎が纏われ、身体能力が引き上げられる。


 ◇◇◇


 一方その頃、晴夏と舞里も稽古をしていた。


「晴夏ちゃん、だいぶマナ知覚力も上がったし、念力もうまく使えるようになってると思う……」舞里は嬉しげに話しかける。


「ありがとう。コレも舞里ちゃんが根気強く稽古してくれたからだよ!」晴夏も笑顔で返す。


「念力の使い方が単純な『動かす攻撃』だけじゃなくなったのは大きい……。打撃、握撃、斬撃、穿孔、自身に使って一時的に身体強化もできる。最初に会った時よりずっと強くなってるよ」


「改めて言われるとできること増えたね! 問題は出力だね。僕はテレパシーが常に発動するのを抑えつつ生活してる。そのせいか、念力を使う時に能力を完全に出せてる感じがしないんだよね……。まあ、コレばかりはマナ知覚力上げたり、慣れるしかないのかもだけど」


「……晴夏ちゃん。テレパシーを戦闘で使うのは考えてる……?」言うべきか迷った後に舞里は口に出した様子だ。


「え……? あ~、そうだね。戦闘で使えたらかなり有利になると思う……。でも……自信がないんだ……。テレパシーは今までの僕の人生で良い効果を生んでくれたことが極端に少ない。そのテレパシーを積極的に、ましてや戦闘で使うのが怖いんだ……」晴夏の身体は震えだす。


「晴夏ちゃん……。ごめんね。私、晴夏ちゃんの気持ち考えずに言っちゃった……。私の気持ちを色々配慮してくれてるのに……」舞里は目を潤ませていく。


「わぁぁ、大丈夫だよ! 舞里ちゃん! でも、いずれテレパシーを使いこなせるようにしなきゃとは思ってるよ! ただ、もう少し時間がほしいな、ってだけ」


「……そっか。分かった。私、力になるよ。晴夏ちゃんが少しずつ私と距離を近づけてくれたことすごく嬉しかった。まだ、男の人は虫唾が走る程嫌いだけど、晴夏ちゃんなら大丈夫。今からの稽古は念力の精度を上げようか……」舞里は笑顔を向ける。


「舞里ちゃん……。何か僕が泣きそうになっちゃったよ……。よし! 頑張ろう! 今日もよろしくね!」


「こちらこそ……。じゃあいくよ? 《罪花魔法――食獣魔花しょくじゅうまか》」

 舞里の詠唱と同時に、地面から毒々しい紫色の五メートル程の花が咲く。花の中央には凶悪な牙が円形に並んでいる。触手状のツタのような部位は自在に動き、近くにあった岩石を両断した。


「いやぁ、いつ見ても怖いね……。でも、何回も戦ってくれてるし、感謝してるよ……!」

 晴夏は《超能力――念打撃》でツタを弾く。


 食獣魔花は動きが一気に加速する。高速のツタの鞭の攻撃。先端が花になっているツタからは、魔花の花粉を凝縮した砲撃が放たれる。


 晴夏はそれらを《超能力――念身体強化》で躱していく。


「やっぱり、速い……! けど、何とか躱せる。《超能力――念斬撃》」

 晴夏は念力を一点集中し、〝線上〟に放つことで可能とした、念による斬撃でツタを複数切り裂く。


 食獣魔花は怒りの咆哮を上げて、花の中央からマナのエネルギー砲を放つためにマナを溜めていく。


「場所が分かってるなら……。《超能力――念動力》」

 念力で食獣魔花の〝向き〟そのものを変える。結果、エネルギー砲は晴夏の一メートル隣を通過し、木々を消し飛ばした。


「晴夏ちゃん、あまり無茶はしないでね……。当たると、下手したら死んじゃうよ……?」舞里が心配そうに声をかける。


「……うん。でも、ヨウ君も死に物狂いで稽古してるんだ。僕も強くならなきゃ……」


「……そうだね。晴夏ちゃんは攻撃力はそこそこあると思う。でも、防御力が足りない。まあ、当たらないように反射的に念力で攻撃を逸らせたらいいんだけどね……。しばらくは、回避の練習する?」舞里は食獣魔花の動きを止めながら尋ねる。


「舞里ちゃんの言う通りだと思う。回避の練習お願いしたい。あと、防御力も一瞬なら上げれるんだ。ちょっと見ててくれる? 《超能力――念甲冑》」念力で身体中を覆う。そして自分に向かって念動力で石を散弾銃のように放つ。念甲冑で石は全て弾き返される。


「はぁはぁ……。どうかな? 舞里ちゃん」晴夏は息切れしながら尋ねる。


「……なるほど。たしかに、身体中をカバーできてるね。でも、消費する集中力とマナが多すぎる。それに、防御力もすごく高い訳じゃない気がする。……あと、同時に念力を複数使うと消費マナが跳ね上がってるね」舞里は冷静に状況分析を伝える。


「……ふふふ。舞里ちゃんは客観的に見てくれるね。その通りだと思う。防御に関しては、余程の時に使う程度に留めるよ。回避するための練習をしばらくしたいな」


「いいよ……。じゃあ、食獣魔花に命令してスピードと威力を調整しながら、《花粉砲撃》を撃つよ。傷が酷くなったらすぐ止めて、私が回復する」舞里は淡々と伝える。


「うん! お願い。僕は自力の反射神経と《念身体強化》での回避をするね」


 一時間程、休憩も挟みながら回避練習を続けた――。


 ◇◇◇


 晴夏と舞里が洋平達のもとへ戻ると、洋平が呻き声を上げながら腹を抑え、地面を転がっている姿が目に映った。


「ちょ、空乃ちゃんヤリ過ぎじゃない? ヨウ君、転がり回ってるけど……」晴夏は焦りつつ尋ねる。


「あ、晴夏! 舞里ちゃん! ヨウのこと? 大丈夫だよ。この状況、十五回目くらいだし。慣れたよね、ヨウ?」空乃は明るい笑顔で問いかける。


「…………バカ……ヤロ。こんなクソ痛ェのに慣れてたまるか……。空乃お前ェ、手心って言葉知ってるか? 俺、一カ月前くらいから戦うようになったところなんだぞ……? こんな激しい稽古つけられたらそのうち、苦痛死するわ」洋平が何とか声を捻り出す。


「えぇ~? 私十分、手心加えてるよ? 死んでないでしょ? 手心加えなかったらヨウ死んでるよ?」空乃は真顔で答える。


「ちょいちょいちょい、真顔でそんなこと言わないでくれる、空乃さん? めっちゃ怖いんですけど……。……何で俺の師匠は超絶スパルタじんばっかなんだ……。助けてくれよォ……晴夏ァ……」洋平は情けない声を漏らす。


「……ヨウ君、可哀想だけど頑張って! 僕もヨウ君が悲惨な目に遭ってるのは悲しいよ……。でももし、ココで稽古を緩めて、結果死んじゃったりしたら悲しいから……」晴夏は心の底から悲しみを感じる表情をする。


「晴夏お前ェ……。天女みてェな顔して、鬼みたいなこと言うなァ……。でも、分かったよ。稽古緩めて死んで誰も守れなかった……なんてことは嫌だからな……」


「いいね! その覚悟。私も頑張るよ!」空乃が瞳をキラキラと輝かせる。


「あ、いや、コレ以上空乃は頑張らなくていい……。今の状況超えてくると、俺多分悶絶しながらいつの間にか死んでるから。……冗談抜きで」


「またまた~。大袈裟だなぁ~。死なない程度には私だって手加減するよ? 任せて!」空乃は左胸を軽く叩く。


「ハハ……。いやァ、師匠に恵まれて嬉しいなァ。ハッハッハ……」洋平は半泣きで笑う……。


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