二十三話 天の加護
同日夜。洋平家にて。
(ユウカさん。今って話せます?)
(大丈夫ですよ、和泉洋平。あと、最近連絡ができていなくてごめんなさい。他の務めが立て込んでいまして……)ユウカは申し訳なさそうに声を出す。
(いえいえ、それは大丈夫っすよ! 逆に裁奈さんと繋げてくれたり、ありがとうございました。それで、声かけた理由なんですけど、俺の魔法ってもっと強くできないですかね? 自分の弱さを昨日身をもって感じてて……)
(少し、あなたの記憶を見させてもらいます…………。なるほど、上道院王誠という男と戦闘したのですね……。上道院……いつの時代も厄介な敵というのはいますね)
(……ユウカさん、上道院を知ってるんですか?)単純に驚いた声が出る。
(……知っています。上道院家の長男、至王という男の方をですが。……あなたには色々と協力してもらう間柄です。少し脇道に逸れてしまいますが、お伝えしてもいいかもしれないですね……)ユウカはゆっくりと言葉にする。
(ユウカさんの過去の話ですか……? 俺が聞いていいなら知っておきたいです)
(では、少しお時間もらいますね。私が執行者としての務めをしだしたのは今から約十年前です。その頃、バロンスを決めるための〝星の代理戦争〟という争いがありました。星の代理戦争では〝人間〟が〝天使族と悪魔族〟の代わりに戦います。ちなみに、地球のマナバランスの管理をしているのは天使族と悪魔族の二種族です)
(えェ……。何か話がぶっ飛び過ぎてついていけてないかもです……。その星の代理戦争にユウカさんも参加してて、そこで上道院至王と戦ったってことですか……?)
(そうです。私も元々は人間でした。代理戦争を生き抜いて現在のように、人間の一次元上の存在である執行者となりました。代理戦争の際に上道院至王はとても強力でした。頭も切れて、容赦のない判断をできる者でした。その弟となると、強いのは容易に想像がつきます)
(ユウカさん、元々人間だったんすか⁉ 何かもう驚きだらけです……)途方もない話を急に聞き、目の前がチカチカするような感覚になる。
(急にこんな話をされても驚きですよね。私から話しておいて言うことではありませんが、あまり気にしないでください。背景情報も伝えておきたかっただけですので。今重要なのは、あなたの魔法を強化できるかどうかですものね)ユウカは本題に話を戻す。
(そう……ですね。でも、教えてくれてありがとうございました。ユウカさんのことを少しでも知ることができて俺は嬉しいです。親近感、っていうと変かもですけど、ちょっとだけ身近に感じました)
(そう言ってもらえると良かったです。……では、固有魔法《体質同調魔法》についてですが、一定〝コントロールが可能〟と思われます。昨日の記憶を見た限り、自動で発動してしまう体質同調に振り回されて、うまく戦えていなかった印象でした。ココに関しては、マナ知覚力を上げて〝魔法を使う意識を変える〟ことで、自動発動から任意発動に変えることができる可能性が高いです)
(ユウカさんの言ったことをすれば、任意の属性のままでいたり、逆に敵の攻撃に合わせて属性を同調させたりできるってことですか?)自分の理解の確認をする。
(そうです。体質同調の自動発動はメリットも大きいですが、敵にその能力を利用されるとこちらの攻撃が組み立てづらくなってしまうので。あと、〝合成魔法〟への対応ですが、そちらも更に知覚力を鍛え続ければ合成魔法にも同調することができる可能性があります)
(そうなんすね。自分の感覚では、合成魔法は複数のマナの塊が複雑すぎて理解できず、同調できない感じでした。それがマナ知覚力を上げることで、同調可能になるってことですね。やっぱり、魔法ってマナ知覚力が超重要なんすね)
(そうです。マナ知覚力は魔法の能力全てに深く関わるものです。なので、鍛えていきましょう。あと、もう一つだけ。これは天啓者だからこそ与えられるものです。〝天の加護〟にて〝メモリーオブマナ〟の力を授けることがバロンスより許可されました)
(え? なんすか? メモリーオブマナ……?)
(メモリーオブマナとは、〝記憶している〟魔法を引き出す能力です。あなたの場合、記憶している魔法の体質同調ができるようになります。和泉洋平。あなたの魔法は稀有なものであり、〝最強にもなり得る〟魔法です。それ故に天の加護まで授けるかは議論がなされていました。それが、最近になり承認されました。これまでのあなたの人生での行動、正義の心、直近での他者を助ける行動が評価されたのです)
(ちょいちょいちょい、そんな話になってたんすか⁉ 何か嬉しいような、プライバシー大丈夫かな、とか思うような変な感じです……。あ、最近ユウカさんが忙しかったのもその影響ですか?)
(それもあります。あなたの情報をまとめたり、評価したりもしてました。その他にも務めが立て込んでいましたがね……)
(お忙しいところありがとうございます。そっか、じゃあ強くなる道はあるのか……。少し安心しました。メモリーオブマナはもう使えるんですか?)
(実は報告しようと思ってた時に、あなたにちょうど呼びかけられたのです。つい先程、承認されてるので、使えるようになってるはずです。過去の記憶を……魔法の記憶を思い出してください。そこに体質同調魔法を組み合わせるイメージです)
(分かりました。《体質同調魔法、メモリーオブマナ――雷魔法》……)すると、洋平の身体は少しずつ雷を帯びていき、だんだんと雷魔法そのものに変わっていく。
「すごい! こんなことできるんすね! あっ! 家の中だから解除しないと電化製品ヤバそう……」思わず口に出しながら、急いで体質同調を解除する。
(良かった。あなたは修行次第でより強くなれると思います。天啓者だからという側面もあり天の加護を授けましたが、私はあなたを気に入っていますし、信じています。これからもよろしくお願いしますね)ユウカは微笑むように声をかける。
(はい! こちらこそよろしくお願いします! ユウカさん!)
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