表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マナの天啓者  作者: 一 弓爾
守護
22/102

二十二話 秘密開示

 洋平がスマホを見ると、グループメッセージが入っていた。

「稽古に来てないけど大丈夫か?」というものだ。


 個人のメッセージでは晴夏から四十五通のメッセージが入っていた。基本「何かあったの?」という内容だった。


 急いで、どちらにも「何でもないです。急用ができただけです。連絡できず、すみません」といった内容を返信した。


 空乃のことは明日晴夏も交えて相談したいと思う――。


 ◇◇◇


 翌日の土曜日。


 洋平、晴夏、空乃は、洋平の家に集まっていた。

 また、裁奈達には今日の稽古は休みたいと伝えておいた。


「二人に話があるんだ」洋平は真面目な口調で話し始める。


「どうしたの改まって。というか、空乃ちゃんもヨウ君の家に来るの久々だよね」晴夏は嬉しげに話す。


「だね~。テニスサークルあったから、あんまり遊びに来れてなかったからさ」空乃もにこやかに返答する。


「たしかに三人で俺の家来るの久々だな。んで話だけど、結構重要な話だ。既に空乃とは昨日に話してはいるんだけどな……。今戦ってる魔導士の連中と空乃にも一緒に戦ってほしいと思ってる」


「え? 空乃ちゃんにも……? それは……」晴夏は物憂げな表情をする。


「……晴夏ってテレパシー使えるんだよね? もしかして、私の裏の顔とか知ってる感じ?」空乃はいつもと違い真剣な口調で質問する。


「……空乃ちゃんが隠したい気持ちなのも知ってたから、誰にも言ったことないよ? でも知ってるよ。ヨウ君に一定以上近づく人はテレパシーで心を読んでたからさ……」


「そうだったんだ……。じゃあ、高校の入学式の日からだね……。あえて私の口から言う必要ないかもしれないけど、私は暗殺一族なんだ。だから、一般人よりずっと強い。魔法を使う人にも昨日勝ったし」


「そっか……。そうだ、昨日は大丈夫だったの? ヨウ君家に来てすぐテレパシーで、ヨウ君の心読んだから、戦闘があったことは何となく分かってるんだけど……」


「晴夏、もう俺の心読んでたんだな。昨日に典両大学三大美男の三年。上道院、絡瀬と戦った。正確には両方空乃が倒してくれたんだけどな」


「え⁉ 上道院先輩と絡瀬先輩も魔法使ってたってこと? 二人共、空乃ちゃんが倒したんだ……。それも驚きだよ……」


「私は暗殺一族の中でも天才って言われてるくらいだからね~」空乃は少し誇らしげに話す。


「空乃ちゃんがそんなに強いとは思ってなかった。でも、いいの? 今まで暗殺一族だってことは秘密にしたいって思ってたんだけど……」晴夏は心配そうに空乃を見る。


「あぁ~。まあね……。本当は『一般人として大学生活を送るなら暗殺術を使うことを禁ずる』って誓約だったからNGなんだけどね。大事な友達の命が懸かってるし、ことが済んだら一旦家に戻って事情を説明するよ」


「空乃、暗殺術を使うことで何か処罰があったりするのか……?」洋平は気になっていたことを尋ねる。


「う~ん、処罰か……。あるかもしれないし、ないかもしれない。家の方針が『家族』をすごく大事にしてるから、友達の命が懸かっていることを伝えたら許されるかもね……」空乃は少し暗い表情をする。


「それなら、俺も行くよ! 俺が原因で巻き込んだようなもんだ。ちゃんと説明すればいい」


「そうだよ! 僕も行く! 空乃ちゃんだけ処罰受けるなんておかしいよ。……あと、この提案はズルだけど、黙っとくのはダメかな……?」


「二人共ありがとね。黙っとくのはできないかな。監視されてる訳じゃないけど、『暗殺者にとって誓約』はこの上なく重要なことだからさ。誓約……誓いのない殺しは利己的な殺しに繋がりかねない……。だから、誓約は守らないといけないし、私自身守りたい。だから、黙ってることは矜持きょうじとしてできない」


「そっか……。ごめんね。あまり何も考えずに提案しちゃって……」晴夏は申し訳なさそうに肩をすぼめる。


「いいよいいよ。私だって晴夏の立場なら同じこと提案すると思うし。『私の意志』でヨウと晴夏に協力したいって思ったんだ。どうなっても後悔はないよ!」空乃は明るく答える。


「空乃ちゃん……。改めてありがとう!」晴夏は素直に感謝を口にする。


「俺からもありがとな、空乃。……あと、思ったんだが、いくら何でも大学関係者で魔法を使う奴が多過ぎる。何か関係あるのか……?」洋平は顎に手を添える。


「言われてみればそうだよね。外部で襲われたのはヨウ君が言ってた火の玉女だけだ。僕らの周りに限った話だから、大学関係が多い可能性もあるけど」


「そうなんだ……。上道院コーポレーション。エネルギー、製薬、製造なんかの本当に色んな事業をしている日本トップクラスの大企業。そして上道院先輩はその会社の御曹司。魔法を使って何か事業を考えてるならもしかしたら……?」空乃は真面目な口調で推測を話す。


「そうだな……。その推測なら魔導士を集めてるのにも納得がいく。大学の中で魔法を使える奴が多いのは、単純に上道院の目に留まる魔導士が多いのと、そもそも上道院の仲間が多いのかもな」


「それじゃあ、大学は危険な場所ってこと……?」晴夏は悲しげに声を上げる。


「……現状、起きてる事実だけをもとに考えるとそうなるな……」


「そっか……。僕らが願ってる『平穏』には程遠い状況だね……。でもだからこそ、止めなきゃだよね……!」晴夏は覚悟を決めたように声量を上げる。


「そうだな、晴夏。俺達は『みんなの平穏』のためにあいつらを倒さなきゃいけねェ!」


「あはは、すっかりヒーローじゃん。でもそうだね。私達で倒そう。晴夏の他にも仲間がいるんだよね? 私も戦うことを先に晴夏と相談したいってことで、今こうして話してるけど、どこかのタイミングで私も会えるのかな?」空乃が疑問点を問う。


「基本毎日、稽古つけてもらってるんだけど、今日は休みたいって連絡してるんだ。明日は予定通り稽古つけてもらう予定だ。その時に空乃のことを紹介したい。いいか?」


「いいよ! その時に今後の動きとかも相談したいね」空乃が明るく答える。


「そうだな。だんだん、糸口が掴めてきた気がするな……」洋平は平穏のために覚悟を再度決める。


 ◇◇◇


 洋平の家を出て、空乃と晴夏は歩きながら話していた。


「さっきは聞かなかったんだけど、高校の時晴夏は何で私が近くにいるのを許してたの? 暗殺一族なんて、危険度高過ぎじゃない?」空乃は純粋な疑問を問う。


「まあ、最初は『え? 何この人こわっ……!』って思ったよ。でも空乃ちゃんの心を読んでも敵意は全く感じなかった。それに『自分の居場所がほしい』って切なく叫んでたから……。その気持ちは僕にも痛い程よく分かる。僕がテレパシーの苦しみを誰も分かってくれなかった時に、ヨウ君が理解してくれたように『力になりたい』って思ったからさ」晴夏が真面目に答える。


「……晴夏のテレパシーって随分心の奥まで読めるんだね。それか、私の心が自分で思ってた以上に叫んでたのかな……。どっちにしても、ありがとう。私はヨウと晴夏に出会えて救われてるよ」空乃はアメジストのように輝く瞳をくしゃっと小さくして笑う。


「ふふふ。僕も空乃ちゃんと出会えて良かったよ。こんなに楽しい時間を過ごせるとは思ってなかったもん。高校時代もすごく楽しかった」晴夏も子どものように無邪気に笑顔を返す。


「よかった、お互い様だね! そういえば、ヨウに一定近づく人をテレパシーで確認してたのって何かあったの? 単純な警戒?」


「あぁ~。ヨウ君には言わないでね? 中学時代だけで、合計六回女子のパシリにされそうになってたんだよね……。ヨウ君って何か気が抜けた顔してるじゃん? だからなのか、女子に声かけられてパシられかけてた。だから、僕が予防線になってたんだ」


「えぇ……。謎だけど、何となく理解できちゃう自分がいる……。その時は晴夏がヨウに知らせてあげるの?」


「ううん。ヨウ君ショックで静かにマジ泣きしそうだから、僕が対処してたよ。優しい笑顔でガン詰めしたら大抵の子は身を引いてたよ」晴夏は〝目の笑ってない〟笑顔を空乃に向ける。


「いや、こわっ! こんな笑顔でガン詰めされたらそりゃ引くよ……。晴夏ってヨウのことになるとたまに過激派になるよね……」


「そう? 大事な友達を守るのも重要なことだよ」晴夏は正義を執行したと言わんばかりのマジトーンで返すのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ