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マナの天啓者  作者: 一 弓爾
守護
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二十一話 正体

「とりあえず、今はヨウの回復が優先か……。コレ塗っていい? 傷薬だけど」

 空乃はポケットから手の平サイズの瓶を取り出す。


「空乃……お前ェ……一体? いや、無事で良かった」

 洋平は《体質同調魔法》を解除し、苦しげに微笑む。


「ヨウ……。私のために命張ってくれてありがとね。……とりあえず、服取っていい? 薬塗りにくいから」空乃は俺の服に手を伸ばす。


「あァ、頼む」俺は服を脱ぎやすいように手を上にあげる。次の瞬間、洋平のパーカーは横に引きちぎられる……。


「え……? あれ空乃さん? パーカー引きちぎられたんすけど? 割とお気に入りのパーカー引きちぎられたんすけど……」


「まあ、早く傷薬塗った方がいいからね~」そう言いながら、中に来ていたTシャツも引きちぎられる……。


「ちょいちょいちょい。空乃さん、服ちぎらないで⁉ 空乃的にはコレ普通なの? 俺帰り道、追い剝ぎに遭ったみたいにならない……?」


「あぁ~、まあ最先端のファッションっぽいよ。大丈夫大丈夫」そう言い、傷薬を塗っていく。


「最先端っつか、世紀末みたいになってない?」――。



 傷薬を塗ったことで、血がある程度止まった。


「空乃、聞いていいか?」


「いいよ。あと、ヨウの状況も聞きたいかな」空乃と洋平の視線が宙で交わる。


「俺は今さっきみたいに魔法を使う奴らと戦ってる。連中が何者かはまだ分かってないんだけどな……。一応、仲間もいて、晴夏も一緒に戦ってくれてる」


「え? 晴夏も⁉ 全然知らなかった。……そっか、もしかして深山ちゃんも……?」


「……そうだ。深山も魔法を使って、襲い掛かってきた。だから、テニスサークル休んでくれって言ってたんだ」


「そうだったんだ……。ごめんね……」空乃は目を潤ませる。


「おいおいおい、泣くな空乃。空乃は悪くねェよ。ハニトラ銀髪美少女が悪いんだ。あんな子に言われたら、ほとんどの男はホイホイついてくって!」


「……ヨウは優しいね。所作からも分かるよ。ヨウが本心から思ってくれてること……」


「おう。俺ァ大事なところで嘘つくような男じゃねェよ。……俺からも聞いていいか? 空乃お前ェは何者なんだ……?」


「私は…………暗殺一族なんだ。先祖代々暗殺の仕事をしてる。もちろん私も……」空乃は視線を落とす。


「……暗殺一族だったのか……。だからあんな強かったんだな……! 納得だわ」意識的に少し声量を上げる。


「ヨウは軽蔑しないの? 殺しを仕事にしてること……」


「う~ん、難しいな……。少なくとも『空乃』を軽蔑する理由にはならねェな。空乃は空乃だからよ。こんな身近に暗殺一族がいたのはびっくりだけどな」洋平は軽く笑う。


「そっか。ヨウならそう言ってくれる気はしてたけど、実際に言われるとどこか心が軽くなるような気がする……」空乃はクスクスと嬉しそうに笑う。


「そういや、色々事情があって助けるのが遅くなったって言ってたけど、何かあるのか?」


「うん。暗殺してたのは高校生までなんだ。大学くらいは暗殺から離れて『普通に生きてみたい』って父様と母様に頼んだ。そしたら、『空乃は天才だからコレ以上教えなくても問題ないだろう。大学の四年間は暗殺から離れていい』って言われたんだ。その代わり、『在学中は暗殺術を使わない』っていう条件付きでね……」


「なるほどな……。一般人として生きる代わりに暗殺術は使ったらダメって条件があって、俺を助けるのにためらいが生じた訳か……。つか、空乃暗殺一族の中でも天才なのか?」


「ふふん。そうなんです。私天才なのです! ま、といっても殺しの才能があってもなって感じだけどね。私は『あらゆるモノへの武器適性』があるんだ。さっきの鉄パイプもそうだし、その辺にある石ころでも人を殺せる。それもモノの最大能力を引き出した上で扱える」


「お前ェ……。めちゃくちゃスゲェじゃねェか……! そりゃ、天才って言われる訳だ。それって初めて扱うモノでも最大能力を引き出せるのか?」洋平は単純に疑問を問う。


「そうだよ。なんか感覚で分かるんだよね。そのモノの最適な使い方、どう扱えば最も強度が上がるか、壊れないようにできるかが……」


「だからさっきの鉄パイプもクソ丈夫に見えたのか……。ソハヤノツルキだっけか? あの魔法にも鉄パイプ一本で対等以上に戦ってたもんな」


「まあね~。いなし方も分かってるし、あのくらいの剣戟は防げる」


「空乃……。改めて見直したわ! お前ェ、めっちゃカッケェじゃん! あ、すまんテンション上がってて。でも、空乃は『普通に生きてみたい』んだよな。その……俺がどうこう言えることじゃないけど、暗殺の仕事をしないようにはできないのか?」


「あぁ~。まあ、そうだね。代々続く暗殺一族だからさ。それに、暗殺の仕事を心底嫌っている訳じゃないんだ。私は『平和を愛してる』。平和のためには時に暗殺のような忌避すべきことも必要になる。そんな仕事をするんだっていう覚悟は中学生の時にはしてた……」


「……そっか。悪ィ。部外者がとやかく言う話じゃねェわな。平和を愛する心、俺も分かるよ。覚悟の大きさは全然違うかもしれないけど、俺も『平穏を愛してる』。俺は空乃の覚悟を否定したりは絶対にしない……」


「あはは。ヨウ格好つけちゃって。随分柄にもないこと言うんだね。……ありがと。ヨウも十分覚悟決めて戦ってると思うよ。さっき戦ってた時も命懸けで戦ってくれた。嬉しかったし、ほんのちょっとだけカッコよかったよ」


「あらあら、空乃さん照れてる? 素直にカッコよかったです、和泉君って言ってもいいんですよ?」


「もう……うるさい! ほんのちょっとだって言ってんじゃん!」空乃は洋平の左肩を殴る。


「ぐ……ォォォ。空乃さん、手加減してね? 俺さっきまでボロボロだったから」


「あ、ごめん。戦闘モードに入ってたから、加減が難しくてさ……」――。


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