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マナの天啓者  作者: 一 弓爾
守護
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十九話 達人

「フハハ、貴様の動きに合わせて爆撃雷火を発動した。本当はそのまま直撃が理想だったが、躱された時に備え、左手に《雷魔法×火炎魔法――雷火弾らいかだん》を放つ準備をしていた。どうだ? 合成魔法なら対応しきれずダメージが通っているようだが?」


「ハッ! こんな程度じゃ俺ァやられねェぜ。お坊ちゃまは思う存分実験できたか?」


「減らず口が……。ダメージ自体は多少軽減できてるようだが、合成魔法となると取り込みきれないのか……。いや、一属性のみしか完全コピーできないといったところか。まあ、大体貴様の攻略方法は分かった。ここからは、俺も出力を上げる。適応できなくて死ぬ……なんてことは止めてくれよ。興がそがれる」王誠は冷酷に言葉を発する。


「安心しろよ……。俺ァしぶといからそう簡単には死なねェよ。さっさとお前ェボコって空乃を解放してもらうぜ」

 《雷纏》の出力を上げる。身体能力の引き上げが更に一段上がる。


 王誠は雷火砲を主に使いながら、洋平がある程度近い距離まで行けば爆撃雷火で吹き飛ばす攻撃を繰り返す。

 爆撃雷火の攻撃範囲が広く、洋平はダメージを負うことが増えていく……。


 また、王誠は合成魔法の〝魔法の比率〟を細かく変えてくるため、洋平の《体質同調魔法》は雷魔法と火炎魔法を行き来しており、攻撃が安定しなかった……。


「クソッ……。体質同調は『一属性』しか同調できなく、かつ『自動』で発動しちまう。めんどくせェ状況だぜ……」

 そして、体質同調を発動する度に〝自分のマナを消費〟する。合成魔法は取り込めるマナ量が単一属性魔法に比べ少ないこともあり、徐々に追い込まれていく……。


「フハハ! 先程の威勢はどうした? 胸に当たった魔法のダメージが大きくて動きが鈍いのか? それとも、完全コピーの魔法が自動で発動して、自分でコントロールできないのが困るのか⁉」王誠は勝利を確信したかのように、高らかに声を張り上げる。


「うるせェよ。とっておき見せてやっからよ」

 既に息が切れて、呼吸すらしんどい……。だが、王誠は少しばかり油断してるようだ。俺にはまだ攻撃手段がある……。


「下民の虚勢は見るに堪えないな。幕引きにしてやる……」


「ヨウ! もういいよ! 私なんて置いて逃げて!」空乃が泣きながら叫ぶ。


「空乃……。巻き込んで悪ィ……。コレは俺の問題だ。すぐ助けるから、もうちょい待っててくれ」空乃の目を一瞬見る。


「別れの挨拶は済んだか? 下民。安心しろ。殺しはしない」王誠は淡々と話す。


「……お前ェらの狙いはよく分からんが、他人を巻き込むな……」洋平は冷ややかに言葉を放つ。


 噴射移動で一気に加速する。王誠はそれを見た瞬間、雷砲を撃ち込んでくる。炎から雷に体質同調魔法の属性が変化する。


 洋平は武器を隠すためにベルトとして巻いていた鞭を取り出す。ちなみに、グリップ部分はズボンのポケットにしまっていた。


「《体質同調魔法――サンダーウィップ》! コイツでも喰らってろ! 坊ちゃん」洋平は高速で鞭を振るう。


「貴様、鞭を使うのか……。だがそんな鞭程度、俺の魔法で消し飛ばしてやる。《雷火砲》!」王誠の右手から放たれた雷火砲が洋平に飛んでくる。


「散々、回避練習はしてきたからな……。身体の使い方もな」


 洋平は〝予測していた〟鞭の攻撃方向から迫る雷火砲を飛び出すように躱す。

 併せて、鞭も引っ張り鞭の軌道を変える。鞭は王誠の足を捕らえ、そのまま転倒させる。


「ぐっ……貴様ァァあああ!」王誠は怒りの咆哮を上げる。


「雷で痺れてんだろ? まあ、どのみちコレで終わりだ」

 素早く王誠に近づき、鞭のグリップで顎を打ち抜こうとする――瞬間、下方から刀が出現し鞭ごと洋平を切り裂く。


「《将剣しょうけん魔法――ソハヤノツルキ》……やってくれたな、下民……。まさか『固有魔法』まで使わされるとはな……」

 ゆらりと王誠は立ち上がり、〝炎を纏っている一振の刀〟を軽く振るう。火花が周囲に蛍のように散る。


「お前ェ……。基礎魔法だけで戦ってたのか……?」


「そうだ。貴様ごときに抜くことになるとはな……。だがこれまでだな。今の一太刀でかなりの深手だろう……? 降伏しろ。そうすれば、あの女は助けてやる。その代わり俺達と来てもらう」王誠はソハヤノツルキを倒れた洋平の首元に添えながら問いかける。


「クソが……。……俺がお前ェらについていけば、空乃は助かるんだな?」


「ああ、俺としては貴様の実力が見ておきたかったからな」


「…………分かった。ついて……」俺が話している途中でバキバキッと何かが弾けるような音が響く。


 なんだ……? 何が起こった? 頭はついていっていないが、目に映るものがあった。それは右から顔面を殴り飛ばされている王誠の姿だった。

 そして、パープルグレーの髪をなびかせ、戦闘態勢を取っている空乃の姿だった……。


「ごめんね。ヨウ……。本当はもっと早く助けてあげれたら良かったんだけど。色々事情があってさ……」空乃はいつもと変わらない口調だが、明らかに雰囲気が変わっていた。

 活発な女学生から、静かな殺意を宿す〝殺しの達人〟のような雰囲気になっている……。


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