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マナの天啓者  作者: 一 弓爾
守護
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十五話 深まる修行

 晴夏と舞里は稽古をせず、しばらく話をした後、洋平達の元へ戻った。


 すると珍妙な光景を目にする。洋平がひたすらジャンプし続けているのだ。


「ヨウ君どうしたの? 修行?」


 晴夏は思わず、尋ねる。


「おう、晴夏。何かジャンプしたい気分でな。はっはっは……」


「ちゃぱつんは僕の《魅了魔法》でジャンプするように命令させてもらったのさ。まあ、十秒もすれば戻ると思うけどね」


「ヨウ君……。そんな……瓜生先輩のこと……」


 晴夏はわなわなと震え始める。


「バッキャロ。二十秒見つめ合って、やっとこさ命令きくだけだっつの」


「あ、なんだ。安心…………できないよ! 二十秒見つめ合ったって何⁉ ヨウ君、僕にはそんなことしてくれないのに! ずるいよ……!」


 晴夏は両腕を振り怒る。


「晴夏~、コレ稽古だからな? でも、ミドイケ先輩の魔法、強力かもですね。大学でも女学生結構な人数が命令受けてたっぽいし」


 ジャンプするのをやめた洋平が話す。


「そうなんだ……。僕の魔法で前みたいに人を傷つけるのは絶対に嫌だ。魔法を悪用されないように僕自身でもコントロールできるように訓練するよ」


 瓜生は覚悟を滲ませた声色だ。


「まあ、そうならないように、稽古する訳だからな。とりま大学が休みの一週間の間に時間取って稽古するか~」


 裁奈が身体を伸ばしながら間延びした声を出す。


「そういえば、稽古したらマナの量増えたりするんすか? ゲームとかだとレベル上がってMPマジックポイント上がったりしますけど」


 洋平が裁奈に質問する。


「ああ、マナも鍛えたら増えるし、マナの知覚力も上がるぜ。併せて説明しとくと、魔導士や超能力者が既に使用できるマナとまだ使用できないマナがあるんだ。前者のマナを『顕在マナ』と呼ぶ。後者の今後使用できる見込みがあるマナを『潜在マナ』と呼ぶ。言わば潜在能力のようなもんだ。マナの知覚力が上がると、潜在マナを解放できる」


「マナの知覚力っていうのが魔法とかを使う上で重要みたいですね」


 晴夏は顎に手を添える。


「おう、その通りだぜ。マナの知覚力が上がることで、潜在マナを引き出したり、魔法の扱いが巧くなったり、無駄にマナを使わず魔法を発動できるようになる」


 裁奈が答える。


「じゃあ、やっぱり稽古は大事そうっすね。頑張らないと……!」


 洋平が気合を入れる。


「今日のところはアンタらも疲れただろうから解散だ。舞里、悪いけど仕事がまだあるから、二時間くらい働けるか?」


「今日は予定もないし、気分も少しいいから大丈夫」


 舞里は少しだけ嬉しげに返答する。


「そうか……。それはよかった。じゃあ、アンタら三人は帰っていいぞ。明日も朝九時に事務所集合な」――。


 ◇◇◇


「じゃあ、俺らも帰るか~。明日は負けないっすよ、ミドイケ先輩!」


 洋平は瓜生に向かって声を出す。


「オムファタールである僕の魅力からは誰も逃れられないよ……。もちろんその挑戦受けて立とうじゃないか」


 瓜生が不敵な笑みを浮かべ洋平を見据える。


「瓜生先輩、変な命令とかしないでくださいよ……?」


 晴夏が釘を刺す。


「ふふ……。明日は『俺はちゃぱつんだ!』と連続で十回言ってもらおうかなぁ」


「ちょいちょいちょい、ミドイケ先輩……。マジで嫌なんで、ジャンプにしてください。マジで」


 真顔で洋平は伝える。


「そういえば、晴夏君の稽古は大丈夫だったのかい? 渡辺さん、なかなか敵意がすごかったようだけど……」


 瓜生が心配そうに晴夏を見る。


「大丈夫です! 舞里ちゃん、優しい子だし」


 晴夏は微笑む。


「舞里ちゃん……? 晴夏お前ェ、下の名前で呼ぶ仲になったのか? あの冷酷女子と?」


「冷酷女子だなんて言わないで、ヨウ君。舞里ちゃんは優しい。今まで傷ついてきただけだよ」


 晴夏は怒りが滲む表情で洋平を見る。


「悪ィ……。言っていいことと悪いことがあるな……。すまん。今の言葉は訂正する」


「……いいよ。ヨウ君が『心からそう思ってる』のも分かるし。……ごめん今はテレパシー使ったよ?」


「全然いい。今のは俺が悪かった。晴夏の友達に言っていいような言葉じゃなかった……」


「うん……分かってる。……僕も素直に色々話したら、舞里ちゃんも彼女なりに応えてくれたんだ……。色んな苦労してるのも分かった。あ、それと僕、舞里ちゃんから『晴夏ちゃん』って呼ばれることになったんだ。ちょっと違和感あるかもしれないけど、気にしないでね」


「分かった。……むしろ今の格好なら『晴夏ちゃん』の方が合うかもな……」


「え~、ヨウ君まで言うの……?」


 気恥ずかしそうに晴夏は首を左右に振る。


「君達は本当に仲が良いし、良い人達だね。僕がおごるから、この後ディナーに行かないかい? 美味しい中華のお店があるんだ。いっぱい食べていいよ!」


 瓜生はニコニコしている。


「え? いいんすか? ありがとうございます!」


「瓜生先輩、悪いですよ……」


 晴夏は遠慮している。


「いや、いいんだ。むしろ君達ともっと話したい。だから、是非!」


 瓜生はキラキラと無垢に輝く瞳を洋平達に向ける。


「じゃあ、お言葉に甘えて……」


 晴夏も賛成し、お店へと向かった。


 その日は色々と話をしながら、お腹いっぱい中華を食べて帰宅した。充実した時間だ――。


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