百一話 今後の道
「そういえば、晴夏は宮宇治家に入るのか?」
洋平がサーモンのカルパッチョを食べながら尋ねる。
「僕は入ろうと思ってるよ。強くなりたいし、街も守りたいからさ。ヨウ君は?」
「そっか。俺も同じ感じだな。結構迷ったんだけど、強くないと守れないものもあるなって思ってさ。空乃は?」
「私は家の事情があるからさ……。一旦家に帰ることになった。父様と母様と直接話してからどうなるかって感じだね」
「あァ。まあ、そうだよな。色々すまんかったな」
「いやいや、そこは気にしないで! 私が選んだことだからさ」
「僕からもごめんね。それとありがとう!」
「もう、晴夏まで……。こちらこそありがとうね。一緒に戦ってくれて」
「おう! マジで助かった!」
洋平は席を移動し、裁奈と舞里の近くに行く。
「裁奈さん、渡辺さんちょっといいっすか?」
「いいぜ。どうしたんだ?」
裁奈が洋平の目を見る。
「宮宇治家に入るかどうかなんですけど、お二人はどうするつもりですか? ちなみに、俺は入るつもりでいます」
「あぁ、そのことな。アタシは入らねぇ。探偵事務所の仕事もあるしな。それに、アタシ自身が決めてる使命がある。それは探偵の仕事をしながらの方が果たしやすいからさ」
「そう……ですか。裁奈さん自身が決めたことなら、良いと思います。曖昧な言い方で申し訳ないですけど」
「いや、それでいい。その言葉でアタシは随分救われたからよ」
「だと良かったです……。渡辺さんは?」
「私も宮宇治家には入らない。裁奈さんのお仕事の手伝いがしたいから……」
「そっか。……渡辺さん。裁奈さんのこと、どうか支えてあげてください。あとお二人共、困ったことがあればいつでも俺に言ってください。できる限り協力しますから」
「うん。分かった。ありがと」
「ハッ。アンタに心配されるとはね……。でもありがとな。アンタも困ったことがあればアタシを頼れ。いつでも力になってやる」
「はい! お互い協力しましょう!」
洋平は美鈴と志之崎にも、宮宇治家に入るのか聞こうと席を移動する。
すると、先に近くに行っていた空乃が、うっとりした眼差しをしているのが見えた。
「どうしたんだ? 空乃?」
洋平が話しかけると、しーっと口の前で指を立てられる。
「ちょっと見てよ、ヨウ。天使がいるよ……」
「あァ? 天使はいるだろうよ……」
目の前の光景に思わず、気絶しそうになる。
「シノさん……。美鈴、利き腕の骨折が治りきってなくて、食べづらいよぉ」
「何を言っている。美鈴は両利きだから食べれるだろう……? それにさっきまで食べれていなかったか……?」
「うぅ……戦闘の傷が響いて痛くなってきたよぉ。すぐ近くに居る人に食べさせてもらわないと餓死しちゃう~」
「それなら、同性である空乃に……」
志之崎が言い切る前に美鈴が声を出す。
「もう! 美鈴はシノさんがいいの! シノさんにあ~んしてほしいの! 唐揚げが食べたいの!」
「……そ、そうか……。じゃあ……」
志之崎はゆっくりと唐揚げを取り、美鈴に食べさせる。
「美味しい……! すごく美味しいです! シノさん! もっと食べさせて!」
「分かった。分かったから、急かすな。唐揚げを落としてしまう……」
おいおいおい。何だこりゃ……。尊過ぎて、昇天しちまいそうだぜ……。
それから、唐揚げを五個食べた辺りで声をかける。
「志之崎さん、エンジェル今少しいいですか?」
「構わないぞ」
「美鈴も大丈夫!」
「一つ聞きたいんですけど、宮宇治家に入るのかって決めてますか?」
「美鈴とも相談したんだが、入ろうと思っている。自分の魔法もまだ分からない部分が多い。それに、街を護るには相応の組織に属する方が何かと都合も良いだろうからな」
「美鈴も同じ意見! 大学に通いながらでも構わないって狐調ちゃんが言ってたから、大学に通いつつ宮宇治家に入ろうと思う」
「なるほど、そうなんですね。あ、俺も宮宇治家に入ろうと思ってるんで、これからもよろしくお願いします!」
「ああ、よろしく頼む。和泉」
「うん! よろしくね! 和泉君!」
その後は、みんなで食べて騒いで、楽しい時間はあっという間に過ぎていった――。