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マナの天啓者  作者: 一 弓爾
守護
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十話 オムファタール

 その後、裁奈と舞里と合流する。


「良かった良かった。お仲間も無事みたいだな。大学の騒ぎは治まってる。怪我人は救急車も呼んでるし、大丈夫だろう。話したいこともあるし、アタシの事務所まで来ねぇか?」


 裁奈は洋平達三人に問いかける。


「俺も聞きたいことがあるので大丈夫っす。晴夏と……ミドイケ先輩はどうっすか?」


「僕も話したいことあるから行くよ」


 晴夏がすぐに答える。


「僕は……そもそも、今の状況がまだよく分かっていない。その辺りのことも分かるのかな?」


 瓜生は不安そうに言葉にする。


「ミドイケ先輩、その辺も分かると思います」


 洋平がすぐに答える。


「ちゃぱつんが言うなら、僕も同行させてもらうよ」


「……そうか。何か変わった奴らだな。アンタら」


 裁奈はいぶかしげに洋平達を見る――。


 ◇◇◇


 ――裁奈探偵事務所にて。

 洋平達三人はソファに座っている。


「事務所って言ってたから、どこで話すのかと思ってたっすけど、裁奈さんって探偵してるんですか?」


 洋平は素直に疑問を口にする。


「そうだぜ。依頼があったら相談にも乗れるぞ。料金は高ぇけどな」


 裁奈は軽く笑っている。


「なるほど……。何かあったら、相談します。あと、話っていうのは?」


「そうだなぁ。何から話すっかな。とりあえず、ミドイケ。アンタはいつから魔法使えるようになったんだ?」


 裁奈は瓜生に目線を向ける。


「僕は魔法とか正直分かってないです。昔から魔性の魅力がある。蠱惑的な男(オムファタール)だとは呼ばれてましたが……。今日急に『黒い塊のようなものに憑依』されるような感覚になったんです。その時に多分、魔法みたいなのが使えるようになったのかな……と」


 瓜生自身よく分からないながらも回答しているようだ。


「ほーん。まあ、アンタ、イケメンだもんな。魔性の魅力ね……。アタシに魔法を使おうとしてもらえるか?」


「え……? 何となくイメージは湧きますけど……。いや、しかし、学校内のようなことになったら……」


 瓜生は焦って答える。


「ああ~、まあ大丈夫だ。舞里、悪ぃんだけど、アタシが操られておかしな動きしてたら、《罪花魔法》で止めてくれないか?」


 男がいるからか、舞里は十メートル程離れた位置にいるが「分かった」と答える。


「んじゃ、まあやってみてくれ」


 裁奈が瓜生の目を見据える。


「ええ……。やってみます」


 瓜生は裁奈の目を見て魔法を発動するために〝目にマナを集中〟しているようだ。


 瓜生の瞳孔周辺にハート型の模様が浮き上がる。

 そして、裁奈の目にも少しずつ瞳孔周辺にハート型の模様が浮かんでくる。


「あぁ、なるほどね。大体分かった。《荊罰けいばつ魔法――荊醒けいせい》」


 裁奈の右手からいばらが創出され、その荊が裁奈の右頬を軽く打つ。

 すると、裁奈の瞳は元に戻った。


「ミドイケ、舞里もういいぜ。アンタの魔法はおそらく《魅了魔法》だ。大学の状況と、和泉から聞いた話だと女学生だけが暴れてたみてぇだしな。魅了魔法の素質を見抜かれて、利用されたってとこだろうな」


 裁奈は淡々と推理を話す。


「ということは、僕の魅了魔法で女の子達を惑わし、暴れ回るようにしたということですか……。僕の美しさが人を狂わせてしまったなんて、やはり僕は罪な男だ……」


 瓜生は悲しげに呟く。


「結果だけ見るとそうかもしれねぇが、アンタが自分を責める必要はないよ。アンタも被害者みたいなもんだろう……」


 裁奈は少しばかり優しい口調で話す。


「それでも、僕は人を傷つけてしまった……。僕は……」


 瓜生は黙り込んでしまう。


「あのっ、僕テレパシーが使えるので、瓜生先輩の心を読んで、『過去の状況』も知れると思います。相手が何者なのか知っておく必要があると思うので」


 晴夏が提案する。


「あぁ、そのことも見当つけとかねぇとな。アンタらは思いあたる節はないのか? つか瓜生って誰だ?」


「僕らは分からないです。敵が何者なのか探ってる段階だったので。あと、ミドイケじゃなくて瓜生君が本名です。言うタイミング逃してましたけど……」


 晴夏が答える。


「僕も分かりません。魔法の存在を知ったところなので……。ミドイケは、ちゃぱつん……和泉君が付けてくれたニックネームです」


 瓜生も付け加えて説明する。


 洋平は、もはやニックネームややこしくないか……? と思いつつあった……。


「そうか……。テレパシーが使えるんなら、一回瓜生の過去の状況を読み取ってもらえないか?」


 裁奈が晴夏と瓜生の両者を見る。


「分かりました」


 二人が同様の返答をする。


 晴夏が過去の記憶を読み取ろうと瓜生の脳、魂に集中していく。


「うぅ……」


 晴夏が青い顔をしてテレパシーを解除する。


「大丈夫か、晴夏?」


「うん、大丈夫……。読み取れたのは『恐怖を感じるような黒い塊』だけだったよ……。ごめん、ちょっと、ヨウ君の心読んでていい?」


「全然大丈夫だ。しばらく休んでてくれ。話は俺が進めとくし」


「ありがとう」


 晴夏はそう言い、何故か洋平の膝の上に頭を乗せ膝枕にしだす。


「やっぱ、テレパシーは負荷がデカイのか?」


 裁奈が心配そうに尋ねる。


「そうなんす。心を読むと感情の波が一気に襲ってくるみたいで。俺の心読んでたら落ち着くみたいなんですけど」


「へぇぇ。和泉の心読んだら落ち着くってのも不思議な話だな。……付き合ってんのか?」


「いやいやいや。付き合ってないっすよ。俺の心が凪みたいで落ち着くみたいで……」


「ふ~ん? まあ、いいや。実はアタシ達も最近起きてる、魔法関連の事件は調査してるんだ。でも手掛かりがなくてな……。良かったら一緒に調査しないか?」


「あ! それは俺達も助かります。ただ、ちょっと待ってくださいね。ミドイケ先輩は今後どうするつもりなんですか? 流れで一緒に来てもらったっすけど、ここから先は戦闘があるような危険な世界です。流れで入るようなものでもないので……」


 瓜生の目を見て伝える。


「それは……。僕は正直話についていけてない……。それに、魔法はあまり使いたくない……。僕のせいで傷ついた人が大勢いるから……」


 瓜生は後悔を背負うようにうつむく。


「……ミドイケ先輩は戦わないで大丈夫です。魔法のコントロールの練習は必要かもですけど、魔法を使える人が全員戦う必要なんてないですから……」


 洋平はできるだけ優しく伝える。


「ちゃぱつん……。君は良い人だね……」


 瓜生は潤んで宝石のように輝く瞳を向ける。


「いえいえ、普通のことですよ。あと、しばらくは学校も行かない方がいいかもっすね。学校に俺を襲ってきた女がいるんです。深山リカなんすけど」


「え? 深山さんが……? 典両大学三大美女の一人だよね。話したことはないけど、そんなことになってたなんて……」


 瓜生は明らかにショックを受けた表情をする。


「そうなんす。俺もショックでした……」

 色んな意味でだけど……。


「……僕はモデルの仕事もしてるんだ。しばらくは休学して仕事に集中するよ。あと裁奈さん、僕が魔法を問題なくコントロールできるまで、稽古つけてもらえませんか?」


 瓜生は覚悟を滲ませる。


「あ、それは俺も思ってました。俺も晴夏もまだまだ弱くて……。お手間かと思いますけど、稽古つけてもらえると助かります!」


 洋平も同じ意見を伝える。


「はぁ……手間かかる男共だね。本当は金取りたいくらいだけど、状況的にそんなこと言ってる場合でもないね。アタシ一人で三人は無理だ。舞里、アンタも稽古つけてやれるか?」


「嫌です」

 舞里は一秒で即答する。


「まあ、そうだよな……。……こん中で、まだマシな奴とかいねぇか?」


「……普通に全員嫌ですけど。……強いて言えば、ブロンドの子……」


「晴夏~良かったな。まだマシってさ。あれ……晴夏? 寝てるやん。お~い起きろ~!」


「う~ん……シュークリームとプリンどっちかだけを選ぶなんてこと無理だよ~」


 小さい声で寝言が聞こえる。


「おいおいおい、俺の膝の上で寝るな。あとで、シュークリームもプリンも買って帰ろう」


「……う~ん、ほんと?」


 晴夏は目を覚ます。


「ほんとほんと。疲れてるだろうけど、もうちょい頑張れ」


「あの~渡辺さん。うちの晴夏なら稽古いけます?」


 洋平はもはや、何故こんな質問をしないといけないのかは考えるのをやめていた……。


「……ギリギリ」


「僕ギリギリなんだ……。あの~プリン付けてもギリギリ?」


 晴夏は仔犬のような顔で尋ねる。


「プリンは関係ない……。男が嫌いなの……」


「……そっか。……渡辺さんに無理はしてほしくない。でもお稽古は必要なんだ……。できる限り僕も努力するね……」


 晴夏は儚げな表情で呟く。


 ――もしかしたら、舞里の心を晴夏は読んだのかもしれない。


「……よろしく……」


 舞里は一瞬だけだが、晴夏の目を見据える。


「じゃあ、まあ決まりだな! 当面は稽古だ。稽古と並行して調査と仕事の手伝いもしてもらいたいんだがいいか?」


 裁奈が全員を見て声を出す。


 それに対し、全員が同意する――。


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