0.寒露の川
今日は肌寒い。
鳥肌が立っていて、体がかすかに震えている。震えている理由は別にあるかもしれないが。
橋の上からは、月明かりに照らされた川とせせらぎの音しか聞こえない。車通りもなく、人気もない。
そんな中に、彼女は立っていた。
「何やってるんだよ...莉緒」
彼女のか細く青白い手足は震えていて、この寒さの中半袖でいる。肌には幾つもの傷や痣があり、髪はぼさぼさで、いかにも全てがどうでもいいような感じがする。
「別に、何もしてないけど...?遼こそ何でここにいるの...?」
「俺はただの散歩だよ。そしたらたまたま莉緒を見つけたって訳」
「そっか...私はここで黄昏てるから、どっかいってくれる...?」
「行く訳ない。莉緒のしようとしていることは分かってるから」
「...うるさい。放っておいてよ」
「放っておいたら永遠に会えなくなるかもしれないから、そんなことはしない」
「遼に私の何がわかるの?誰も私の事なんて分かってくれない」
「わからないよ、ただ話しかけただけ。でも、俺に出来ることがあるのならそれを全うしたいよ」
「はぁ...今日はいいや、私帰るから」
そう言ったが、彼女は微動だにしない。
「...帰る場所はあるの?」
「わからない、知らない...」
「そっか、じゃあ俺の家...いや、野宿の用意でも持ってくる?」
「...うん、お願い」
「わかった」
そう言って、俺は全力で家に帰って野宿の用意をした。彼女に何があったのか。どんな問題を抱えているのか。俺には何もわからない。わからないけど、それでも俺の友達が死ぬのは嫌だ。我儘かもしれないけど、俺は彼女を死なせないよう付き添って行こうと思った。




