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6. 終わりを告げる音

壁が壊れたようなそんな音が聞こえたあと、外からは大きな叫び声と何かを撃ち合うような音が微かに聞こえて来ます。

何だろうと思ってカランを見ますが、カランは不安げに曲げて回りをキョロキョロと見てみます。


「カラン先をどの音は何ですか?」

「姫様、少し外を確認します。壁側に寄っていてください。エルムは姫様とルティフローラ様の周りを…!」


そう言ってカランは直ぐ側の窓から外を覗き込んでいます。

カランの顔がさっと青くなりました。


「姫様、上に行きます。エルム、外からです」


カランは強い口調でそう言って、私の手を取ります。

なにが、起きたのでしょう…。

張りつめた空気が恐くて仕方ありません。

お姉さまを見るとお姉さまもとても不安そうなお顔をしています。


「大丈夫よ、ルメリア」


ですが、私の視線に気付いたお姉さまは私に笑いかけました。

後ろでドアが ドンッ と勢いよく開く音がしました。


「2人とも無事だったのね良かった」

「2人とも大丈夫か?」


びっくりしすぎて、心臓飛び出るかと思いました。

お父様とお母様で良かったです。


「ファリナ、2人を任せたよ。2人ともお母様の言うことを良く聞くんだよ。行ってくる」


お父様は私達の姿を確認すると直ぐまた、廊下を駆けていきました。

見上げたお父様の顔は鋭い怖い顔でした。


「じゃあ、2人とも屋根裏に行くわよ。カラン、エルム、2人の護衛をお願い」

「「承知いたしました」」


どうやら隠し部屋に向かうようです。

お母様が廊下の角の壁を強く押すと、壁の下が上に上がり、這えばやっと通れそうなスペースが出来ました。


「2人とも早く」


お姉さま、次に私が通り、次にお母様、カラン、エルムと小さな隙間から入っていきます。

中は、とても暗くすぐ近くに階段があることが微かに分かるほどです。

お母様が壁にある何かをとると、壁が落ち小さな隙間が閉じました。お母様が手元の何かを触っていると明るくなりました。

どうやらお母様が持っているのはランタンのようです。


「階段を登ります」


お母様を先頭にし、カランとエルムが私達の後について階段を上ります。お母様の足は速くて足を上げるたびにどんどんと痛くなります。

でも、お母様のお顔は真剣で休みたいなんていえる雰囲気ではありません。


「姫様、お運び致します」

「あ、ありがとうございます」


私の足が鈍って来たのに気付いたカランが、私を抱えて連れて行ってくれます。

やっと隠し部屋の前つきました。


「この中に入って」


お母様はドアノブの付いた厚い扉を横にスライドして開けます。中はやはり暗く、一つしかない窓から差し込む月明かりとランタンのみが部屋を照らします。

最後に入ったエルムが扉を閉める音が小さな部屋に響きました。


「外を見ていますね」


お母様はそう小さな硬い声でそう言って、小さな窓の横から顔が見えないよう外を窺い見ています。

その顔はどんどんと険しくなっていきます。

私もこんな状況初めてで本当に怖いです。

心の怖気が体全体に広がって体が震え、息をするたびに声が震えます。

私は蹲って、震える体を抑えるように両方の腕を組んで体を掴みます。

カランはそんな私を見て、私の横に座りました。

体の後ろにカランの腕が通り、私の体を優しく包みます。そして、トントンと包み込んだ手で優しく叩きます。

それは、大丈夫と言っているようです。

少し安心しました。


少しだけ余裕が出てお母様の方を見たと同時に、お母様は何か決意を決めたお顔をしました。


「2人ともこちらにおいで」

「「はい」」


やはりお母様の声は小さいのですが、その声は凛としていました。

お姉さまと顔を見合わせ、お母様の近くに寄ります。


「2人とも、落ち着いてきいてね。たぶん、ここに居ても助からないでしょう。特に、子どもの2人はね。だから、2人を遠くに送ります。…魔法で」

「魔法? 魔法ってあの物語とかのですか」

「はい、ルリィには明日話すはずだったのだけれど…」


魔法って本当に存在するものなのですか?

頭が追いつきません。

お姉さまは落ち着いているので知っているのでしょうか。


「でも、今魔法について説明する時間はないわ。それでね、今からあなた達2人を他の場所に飛ばします。付く場所を決めることは出来ないの、ごめんなさい。でも、大丈夫よ、安全なところに付くはずだから。ついたら、そこの大人に助けて貰いなさい。必ず優しい人はいるわ」


意味が分かりません。

私とお姉さまはどこにいくのですか、何でいくのですか。

私が呆然としていると、お姉さまが顔を歪めて願うように言います。


「お母様とエルムは、それにカランも、何で一緒ではないのですか!」


お姉さまは叫ぶようにそう言います。

声は涙交じりです。


「ごめんなさい、私にはそれほどの力はないのよ。一緒に行けたら良かったのだけれど…。いえ、2人とも早く準備をして」


お母様も顔を歪ませましたが、すぐ真剣なお顔に戻りました。

でも、それがお母様の心からの言葉だと私でも分かりました。


「はい、分かりました」


お姉さまもなんとか飲み込んだように、涙声で答えます。

私も何とか頷きました。


「そうだ、2人とも。これを−−−」


そう言ってお母様は首飾りと指輪を取り、お姉さまに指輪をはめ、私に首飾りを掛けました。


「これを売って少しのお金になさい、じゃあ、いくわよ」


そう言って私達を抱きしめた後、お母様は凛とした顔で立ち上がります。

そして、耳飾り取り、手で握ります。


「そうだルリィ、貴方は目を閉じて。危ないから。

−−−2人を安全な場所に届けてください、どうか、遠くへ。安心出来る場所に。瞬間移動(テレポーテーション)−−−」


私は慌てて目を閉じます。

風が頬を撫でます。

階段を誰かが上がる音が聞こてきます。

扉が壁と打ち合うようにガタガタ鳴っているのが微かに聞こえてきます。

ただ、どんどんとお母様の声が遠くなっているように思えます。


「どうか、幸せにね−−−」


最後、何とか聞こえたのはそんな言葉です。


目を開くと、目の前には葉を落とした木が無数にありました。

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