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2. 先生は恥ずかしがり屋

お姉さまお話していると、コンコンと扉を叩く音が聞こえました。


「入ってよろしくてよ」

「失礼します」


お姉さまの側仕えのエルムと、私の側仕えのカランが扉から姿を覗かせました。

青い色の目で赤色の髪を1つに結んでいるのがエルムで、青色の目で焦げ茶色の髪を後ろで結い上げているのがカランです。

もう、お迎えが来てしまったようですね。

もう少しお姉さまとお話したかったですが仕方ありません。

名残惜し気持ちでカランの元に向かいます。


「ルメリア様、レッスンお疲れ様でした。今日のレッスンはどうでしたか?」

「昨日は上手く出来なかった立つ姿勢が出来るようになりました」

「まぁ、良く頑張りましたね。よく出来ました」


お姉さまにも褒められた "出来たこと" をいち早く、カランに伝えたくて、自慢するみたいに伝えてしまいました。

我ながら子供っぽいことをしてしまって恥ずかしいです。

だからか、カランは微笑ましいとでも言いたげな目で私を見つめながら、いつものように褒めてくれました。


「にしても、ルメリア様なんだか良いことありましたか?」

「どうしてですか?」

「何だかいつもよりご機嫌がいいように見えまして」


やっぱりカランには何でもお見通しなのかも知れません。

先ほどから褒められたのが嬉しくてずっと心がふわふわしていたのが見透かされるとは。


「実は今日お姉さまに褒めていただいて…。その、私はなんにも出来ていないと思っていたので嬉しかったのです…。だから、その何だかとても嬉しくて」


何だか恥ずかしくてゴニョゴニョと言い訳がまくしくかえしてしまいます。


「なるほど。ルティフローラ様が。昨日は終わった後とても落ち込んでらしたので、今日は大丈夫だったかと心配していましたが杞憂でしたね」

「はい、私が先生に叱られてばかりだと落ち込んでいたら、お姉さまが私は成長していると」

「なるほど。エリス様はなかなか人を正面から褒めるという真似はなさりませんからね。一人前になってやっと『まぁ良いのではありませんか』とおっしゃるそうですよ。ですが姫様、先生はお年のわりに良く学んだことを吸収していらして、覚えも早いとお部屋から去るときに(わたくし)におっしゃいましたよ」

「えっ、そうなのですか!?てっきり先生は私のことを出来ない子と思っているのかと」


意外でしかありません。

あんなにも、私を未熟といっていた先生が私のことを覚えが早いと言ってくださっているなんて。

でも、それでしたら私に直接言ってくださればいいのに。

少し不満な気持ちが湧いてきて、ついむくれた顔をしてしまいました。

するとカランが笑って教えてくれました。


「エリス様は少し恥ずかしがり屋なのか、昔から面と向かって人のことを褒められないのです。もういい年なのにもかかわらず。ですが、覚えの早いお二人をよほど気に入っているのかお部屋から出てくるとお二人のことを絶賛しておりましたよ」

「あの怖い先生が恥ずかしがり屋なんて信じられません。本当にそうなのですか」

「えぇ、今日も『ルメリア様は教えたことをすぐこなしていて本当に凄い子です』とおっしゃっていましたよ」


安心したような嬉しい気持ちと唖然とした気持ちがごちゃ混ぜになったような気分です。

でも、先生に嫌われていないのは良かったです。

そういえばお姉さまはこのことを知っていらっしゃるのでしょうか?


「カラン、お姉さまは先生が私達を本当は褒めていらっしゃることを知っているのですか?」


お姉さまを見ると、エルムと話しながら、先ほどのレッスンの復習をしていらっしゃいます。

カランもお姉さまの方を見ながら少しの間、首を傾げていました。


「もしかしすると知らないかも知れません、エルムは頭が固いですしね」

「私、お姉さまに先生のこと伝えたいです。先ほどのお姉さまは少し思い詰めているようにも見えましたもの」

「私もルティフローラ様は焦っているようにも見えます。しかし、ファリナ様がそのようにルティフローラ様を育てるつもりかも知れませんからなんとも」

「お母様が?」

「はい、ファリナ様は忙しい方ですから姫様達とふれあい、育てる時間はほとんどありません。そのぶん私達、側仕えにざっくりとどのように育てて欲しいのかをファリナ様から伺って、それに沿って姫様達を導くのです」

「な、なるほど。ということはお姉さまには先生のお言葉は伝えられないということですか」

「分かりません。一度エルムに聞いていますね」


カランはそう言ってエルムの元に向かっていきます。お姉さまにも伝えることが出来たら良いのですけれど。

カランはエルムを呼んで部屋の隅で何か耳打ちしています。

あれ、カランが肩を震わせています。

どうしたのでしょう?

いえ、あれは笑っているのでしょうか?

カランが私にこっちに来てと言うように手招きしました。


「カラン、そのように笑ってどうしたのですか?」


そう言って、カランとエルムを見上げるとカランは今にも笑い転げそうとばかりに笑いをこらえていて、エルムは困ったような顔をしています。


「い、いえ、姫様…。そのエルムはルティフローラ様に先生のお言葉を伝えていなかったそうです。理由は伝えたのがエリス様に伝わったら怒ってしまうかもしれないからですって」


カランが笑いながらそう言いました。


「だってなカラン、あの方はかなり気難しいではないか。レッスンの終わった後のあの報告は正しい情報を得られる唯一の時間だ。気を損ねてはそれが聞けなくなってしまうし…。」

「だからってエルム、あの方を珍獣みたいに言うんですも」

「そのようなことは…」


何だかつい納得してしまうような理由でした。でも、お姉さまに言ってはいけないという規則はないようです。


「お姉さまに先生には言わないようにと言って、伝えて見てはいかがでしょう」

「ですが、ルメリア様。先生が言わないのに言ってしまっても良いのか…」

「ですが、お姉さま出来ないことにかなり気落ちしているように見えました」

「姫様の言うとおりですよ。あなた、いつもルティフローラ様を見ていて思うことはないの?このままではルティフローラ様が思い詰めていしまいますよ」

「あぁ。確かにな。姫様はいつも『まだまだです』と言ってご自分を認めていらっしゃらないところがある。このままでは、潰れてしまうかもしれないし、これからにも…」


エルムは少し考え込んだ後、納得したように顔を上げました。

ほっとしてお姉さまの方を見ると、お姉さまもこちらを見ていらしたようで、私と目が合うとこちらにやって来ました。


「3人ともどうかしたのですか?」


エルムとカランに顔を向けると代表するようにカランが言いました。


「少し相談をしていたのです。ほらエルム」

「その、エリス様がおっしゃっていたのですが、姫様はもう王家の方々を前にしても問題がないほど上達しているそうです。良く頑張りましたね、姫様」


お姉さまは目を見開いて固まっていました。それはそうでしょう。王家の方々を前にしても問題がないとはつまり礼儀が完璧という訳ですから。

私もそこまでの絶賛されているとは思わず驚きました。

ですが、お姉さまのあの完璧な作法ならば納得です。


「そ、そうなのですか?先生が私を認めて…。ん?本当ですか?しかし…」


お姉さまの目がぐるぐるしてきていますわ。

本当に混乱されているようです。

エルムも何故か一緒に混乱していて先ほどから「本当ですよ」しか言っておりません。

見かねたのかカランがしゃがんてお姉さまに語りかけました。


「エリス様は本当にルティフローラ様をいつも褒めていらっしゃっいましたよ。私はたまに小耳に挟む程度でしっかり聞いたのは昨日が始めてでしたが、レッスン終りにエルムに向かってルティフローラ様がいかに凄いか語ってらっしゃる声はよく聞こえてきました。ここまで早くルティフローラ様が成長したのは並外れな努力だと申していましたよ」


カランの言葉を聞いたお姉さまはしばし呆然としていましたが、実感が湧いたのか顔を少し赤くしながら恥ずかしそうにカランから目を反らしました。


「ですが、まだ先生の合格は貰っていません。私もっと上達出来るよう頑張ります」


お姉さまは、前を向いてそう言いました。

照れ隠しもあるでしょうが、褒められても浮かれず決意を固めるお姉さまはとても格好いいです!


「私もお姉さまに早く追い付けるよう頑張ります!」


私もお姉さまに続いてそう宣言しました。

お姉さまのように頑張りたいと言う思いが自然と湧き上がってきたのです。

何だか、部屋の中にはただならぬ決意に溢れた雰囲気が漂ってします。


「あ、エリス様の言葉を言ってしまったことはくれぐれも秘密にしてください。怒られてしまいます」


エルムのせいか、お陰かその雰囲気はすぐ無惨しましたが。

その何だか間の抜けた雰囲気が面白くて、つい淑女らしくなく声を漏らして笑ってしまいました。

お姉さまも私につられてふふって笑っていたのはとても可愛らしかったです。



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