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花と氷  作者: わたあめ
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恐怖

次の日から花菜は深山を好きだったのであろう数人からすれ違うたびにブスとかキモイと言われてクスクス笑われるようになった。


ブス、キモイといった言葉は言っている本人が想像している以上に相手にダメージを与える。ただの言葉だと言い聞かせても花菜は結構なダメージを受けていた。


それでも勉強は頑張ろうといつものように図書室に行くと、花菜がいつも使っている場所をあの5人が陣取っている。


うぅ、そう来たかぁ。


花菜は仕方なく教室で勉強することにした。

心が折れそうだったので深山にLINEする。


“深山君の写真送って”

“持ってない”

花菜は犬が泣いているスタンプを送る。

“これでいい?”

そういって深山は体育祭の時のクラス集合写真を送ってきた。

深山は小さく映っている。

“ちっちゃい・・・”

“これしかない”

“ちっちゃいけどみえるからいい。ありがとう”

“今度写真撮ったら送る。多分撮ることないけど”

撮ることないんかい、と心の中で突っ込みを入れながら、

待ってると文字の入った猫のスタンプを送る。

深山との何気ないやり取りに花菜の心は穏やかさを取り戻す。


暖かい気持ちで勉強を始めると、桜井がやって来る。

「あれ?どうしたの?」

わざとらしい。


「図書室混んでたからこっちでやることにしたの」


花菜は桜井のほうを見ずにカバンから参考書を取り出す。

落ち着いてと自分に言い聞かす。

桜井は明らかにイラついている。


「深山に泣きつかないの?」


やっぱり桜井君だったか、と思う。

それが狙いかなと思って、と言いかけて、たきつけることはやめようと思いなおす。


「いうほどでもないかなって」


花菜は震えそうな手に精いっぱいの力を入れて平静を保つ。

桜井は花菜の机の上の参考書と文房具を床に払い落とした。


「お前みたいなゴミがあの深山と仲良くするのが許せないんだよ」


怖くて震えが止まらない。


誰かこの教室に来てくれ、と心の中で叫びながら花菜は参考書と散らばった文房具を拾う。

参考書に手をかけたとき、桜井君はその参考書を蹴り飛ばした。

やめてと言おうとしたが恐怖で声が出ない。

逃げ出したいが体がこわばって思うように動かない。


「お前マジでいなくなれよ、ブス」


人からこんなにあからさまな悪意を向けられたのは初めてだ。怖い。


遠くから足音がする。桜井はいつもの笑顔に戻っている。


「花菜?そんなところにうずくまってどうしたの?」

瞳子だった。

「それに、桜井君?どうしてここに?」

「すごい音がしたから来てみたら、早田さんが参考書と文房具をぶちまけてて」

「そう、物音がしたから私も来たんだけど、花菜、大丈夫?」

花菜は精いっぱい平静を保って大丈夫、驚かせてごめんね、といった。

「本当に大丈夫なの?」

「うん、ちょっと転んだだけ、大丈夫大丈夫」

桜井は笑顔を浮かべている。


「早田さん、今後は気を付けてね。」


花菜は恐怖で動けない。


「瞳子、部活は?」

平静を装って何とか声を絞り出す。

「今日は家庭の用事があって早退したの。」

「じゃあ、私も帰ろうかな」

瞳子は何か言いたげにこちらを見ている。


「ほんとにただ転んだだけだから」

「そんなわけない。花菜、震えてる。桜井君に何かされたんじゃないの?」

瞳子が花菜の参考書を拾って言った。


「転んだだけでこんなにぼろぼろになるわけない。靴の跡もついてる。ここには花菜と桜井君しかいなかった。これは花菜の大切な参考書なのに」


瞳子の細くて白い指が真っ赤になるくらいに手をぎゅっと握っている。

花菜の心は張り裂けそうだった。

大切な友達を悲しませてしまっている。


「深山君に話すべきだと思う」

瞳子が真剣な表情で花菜を見つめて言う。

「それは、あまりしたくない・・・」

「私が深山君なら、話してほしいと思う。花菜が話さないなら、私が話すわ。」

「…分かった」

深山に似ている瞳子の言葉は説得力があった。


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