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花と氷  作者: わたあめ
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10年後

「深山先生、確認お願いします」

看護師が書類をもって深山に渡す。

「ありがとう」

深山が笑いかけると看護師は顔を赤くして笑う。


今日もひっきりなしに患者がやって来る。

忙しくなりそうだ、と深山は思う。


深山は博士号を取得するために大学の研究室で研究をしながら大学病院で医師として診察をしている。

働きながらの学位取得は大変で、ほぼ休みもないが、自分のやりたいことをできることに充実感を感じている。


このまま臨床にもかかわりながら安定して研究を続けられるようにここでしっかり成果を出したいところだと思う。研究医としていつか自分の研究室も持ちたいし、やりたい研究もたくさんある。


ふと深山が携帯を確認するとLINEが届いている。


“今日帰ってくる?”

花菜からだった。


花菜とは2年前に結婚した。

2年間、東京に定期的に通いながら深山の両親の説得を続けたが、深山の父親は最後まで結婚を認めなかった。

深山の母は父の手前、表立っては賛成しなかったが、花菜の両親との顔合わせには深山の父に反対されながらも来てくれた。


とりわけ怜は協力的で、いろいろと手を尽くしてくれた。

お礼を言った際には

「後継者争いしなくて済むから助かるよ」

と怜は笑った。

それが怜の優しさであることを深山はよく理解している。


結婚式はせず、いつか、深山の父が認めてくれる日が来たらしようと二人で決めた。


深山の母は3か月に1度ほどいろいろと理由をつけて京都に遊びに来ては深山と花菜と食事をしたり観光したりしている。

お店選びや交通手段など花菜と深山の母でかみ合わず変な空気になることも多いが、お互いに歩み寄る努力を続けている。

花菜はともかく、母親がこちらに歩み寄ることはないと思っていたので母親の変化に深山はうれしく思っていた。


“20時くらいに帰れると思う”

深山が送るとすぐに花菜から返信がある。

“私今日夜勤だから夜いないけど、夕飯作ったから温めて食べてね”


花菜と深山がここまで来るには大変なこともたくさんあった。

大学は北海道と京都の遠距離だったし、卒業後も深山が研修医の時期は花菜も京都の動物病院で研修医をしていたが、お互い多忙すぎて、その時期はほぼ会うことはなく、1週間に1度電話で5分程度話すくらいだった。

研修医時代は二人とも過労死するのではないかというほどの激務で、その電話の目的は生存確認だった。

しかしその5分の電話がお互い支えになったことは確かだった。


逆に忙しすぎたことで、お互いに余計なことを考える暇がなかったのが良かったのかもしれない、と深山は思う。


花菜は今、京都市内で24時間救急対応している動物病院に獣医師として勤めている。

犬・猫だけではなくいわゆるエキゾチックアニマルにも対応できるようになりたいと日々奮闘している。

夜勤や急な呼び出しもあるため、一緒に過ごす時間はそんなに多くないが、これまで会えない時期が多かったので、二人とも会える回数は格段に増えたという認識だった。


“ありがとう。夜勤頑張って”

と深山が送ると、がんばるぞと文字の入った犬のスタンプが送られてくる。


医局で休憩していると、ニュース番組で北海道の様子が流れる。

あぁ、この動物園いったな、と深山は思い出す。

北海道の有名と言われる観光地は花菜が大学にいる間に大体回った。

何時間も車の運転して北海道ってほんと広いな、と思ったことを深山は懐かしく思った。


穂高と瞳子と4人で北海道旅行したこともあった。

なかなか時間が合わず、1度しか実現できなかったが4人にとって楽しい思い出となった。

その時4人で撮った写真はリビングに飾ってある。


穂高と瞳子も東京で医師をしていて、今も付き合っている。

しかし瞳子の父は結婚をなかなか認めず穂高は苦戦している。

もう家を出たいという瞳子と、婿養子でもいいから認めてもらいたい穂高で喧嘩になることもあるようだが、それはお互いを大事に思ってのことだということは分かりあっている。

とりあえず、出世して認めてもらえるようにまだまだ頑張ると穂高は深山に話していた。

瞳子は穂高が頑固だけど諦めずにいてくれるのがうれしいと花菜に話していた。


花菜は瞳子に幸せになってほしいと口癖のように言う。

いまだに週に1度くらいのペースで二人はビデオ通話で話をしているようで、二人の楽しそうな話声が聞こえるたびに深山は高校時代を思い出す。

3年生で花菜と瞳子はクラスが別になったが、二人は毎日一緒にお昼を食べていた。

おそらく深山といるよりも、瞳子と過ごす時間の方が長かったのではないかと深山は思う。


すべての病院の業務を終え、研究室で最低限の実験をこなしてから家に帰る。


電気をつけると暖かい光が部屋を照らす。

高校の卒業式で撮った写真や、4人で北海道に行った時の写真が大切に飾られている。


冷蔵庫を開けると花菜が用意した夕飯が入っている。

レンジで温めて食べる。

高校生のころ、実家で一人で食べるご飯はお腹を満たすためでしかなかったが、

この部屋で花菜の作ったご飯を食べると深山は一人で食べていても心が満たされていた。


次の日の朝、深山が身支度をしていると玄関が開く音がする。

深山がリビングを出ると「ただいま!」と花菜が笑顔で深山に抱きつく。


「おかえり。」


深山は幸せな気持ちで花菜を抱きしめた。

初めて書いた作品です。

拙い文章で恥ずかしい気持ちですが、

読んでいただき本当にありがとうございました。

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