表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花と氷  作者: わたあめ
4/46

不穏

深山みやま、今ちょっといい?」


桜井涼太が深山に声をかける。最近よく絡んでくる。


「あぁ」

「3組の高橋知ってる?」

「顔見ればわかるかも」

「深山を呼び出してくれって言われてんだけど。多分告白」


告白されるときは桜井経由で呼び出されることがほとんどだ。

「俺、彼女いるんだ」

桜井は持っていたコーヒー牛乳を落とした。


「誰だよ?」

前のめりで聞いてくる。

「…1組の早田」

「いつも西園寺さんと一緒にいる子?」

「そう」

「……ごめん、意外過ぎて何も言えない。なんかもっとすげぇ美人かお嬢様かと思った。早田はないだろ。なんで?」


深山はムッとして答えない。


「それこそ西園寺さんとか」

「いや、それは絶対ない」

「なんで」

「お互い苦手なんだよ」

「そこから恋が生まれたりとか…」

「100%ない」

桜井は笑いながら、でも早田かぁ、つりあってないよと繰り返す。


「でもさ、早田と付き合ってるって周りにばれたら、早田いじめられるんじゃね?お前のこと好きな女子たちに」


考えたこともなかったが、それは困ると深山は思った。

早田が勉強に手が付かなくなるようなことは避けたい。


「分かったよ、3組の高橋な」

「16時に社会科準備室でよろしく」


深山はその日は花菜とあの場所で会う約束をしていたので15分遅れるとLINEする。

めんどくさいな、と思いながらも社会科準備へ行く。

高橋さんらしき人が待っていた。見覚えがない。

「話って何?」

深山は無表情で聞く。

「私ずっと深山君のこと好きで、付き合ってくれませんか」

「俺、彼女いるから。」

それだけ言ってさっさと部屋から出ようとする。

「彼女って誰?」

涙目の高橋が問う。

深山は一瞬立ち止まったが、

「言うつもりない」

と振り向きもせず、深山は部屋を後にした。


いつもの場所に着くと、花菜は教科書を読みながら待っていた。

「早田」

と深山が声をかけると、花菜はパッと笑顔になって深山を見上げる。

隣に座るとへへへと嬉しそうに笑う。

何がそんなにうれしいのだろうか、と深山は思いながらも照れてしまう。


「深山君の得意科目は何?」

花菜が楽しそうに聞く。

「数学かな。あと物理」

「そっかぁ、私ね数学も物理もイメージがしにくくて難しく感じるんだ。」

花菜は残念そうに言う。


「でもね、生物とか化学を根本から理解しようとするには、物理が必要なんだって中学校の時の先生が言ってたの。まだどういうことか分からないんだけど、いつか理解できるようになりたいなって思ってる」

「物理は難しい言葉も法則も多いからとっつきにくく感じるけど、日常に近い科目だと思う。」

「日常に?」

「そう、例えば物が動いたり熱が発生したり、そういう現象の仕組み。」


花菜は興味深そうに聞いている。


「早田は難しく考えずにシンプルに考えるといいのかも。数学も、物理も」

「シンプルに?」

「そう。苦手っていう気持ちは一旦おいて、教科書に書いてあることをそのままうけ止めるんだ。そういうもんだ、って。」

花菜はほうほう、と真剣に聞いている。

「早田は?得意科目」

「うーん、得意って言えるほどではないけど、生物と化学は興味があるかな!専門的に学びたい分野だから。あとは英語!海外の本とか読めるようになりたい。動物の本がね、海外にはたくさんあるんだ。」


楽しそうに話す花菜が深山にはまぶしく思えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ