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花と氷  作者: わたあめ
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ピクニック

「これお土産。」

瞳子が外国の言葉が書かれた紙袋を花菜に渡す。

「ありがとう!フィンランド行ってたんだっけ?」

「えぇ」

瞳子はきれいに微笑んだ。

開けてみると、チョコレートと、ポップな色合いのかわいいストラップだった。

「すごくかわいい!うれしい、ありがとう。」

「よかった、花菜が好きそうな気がしたの。」

瞳子が選んでくれるものはいつも花菜の好みに驚くほどに合っていた。

「スマホにつけたいな。でも壊しちゃうかな…」

真剣に悩んでいる花菜を見て瞳子は嬉しくなる。


「最近、深山君とうまく行ってるの?」

「うん、すごく優しい」

「優しい?」

「うん、私に合わせてくれてる気がする。」

「合わせてくれる?」

「たとえばね、深山君って、移動の時すぐタクシー使ってたの付き合い始めのころ。でもね、最近は1駅くらいなら歩いたり、遠いときは電車乗ったりするの。遊びに行くところも、あんまりお金かからないとこだったり。私が深山君に合わせるのは無理だから、深山君が合わせてくれてるんじゃないかなって。」

「そう。よかったわね」

瞳子の心は穏やかだ。


「でも時々、それで深山君は楽しいのかなって不安になるときがあるんだ。」

瞳子は穏やかな表情で聞いている。

「あ、ごめん、つい瞳子にはなんでもしゃべっちゃう」

「花菜はそういう深山君の優しさが嬉しいの?」

「うん、うれしい」

「だったら、深山君は本望だと思うわ。きっと花菜に笑ってほしくてそうしていると思うから」

花菜は一瞬驚いて、へへへと笑う。

「そう言うのは深山君に伝えてあげるのがいいと思う。花菜がどう思っているのか深山君は分からないと思うから、安心すると思うわ」

「深山君って不安になったりするのかな」

「するわよ。だから努力しているのよ、きっと」


そうだったらうれしいな、と花菜は笑った。花菜のスマホには、瞳子からもらったストラップ、首には深山にもらったネックレスがある。大切なものに囲まれて花菜は幸せな気持ちを感じていた。


今日は美咲公園で深山とピクニックをする予定だ。

リュックに敷物と朝早く起きてお母さんにアドバイスをもらって作ったお弁当を入れる。

「深山君喜んでくれるかな…」

花菜が不安そうに言う。

「喜んでくれると思うわよ?深山君優しいし。それに、もし嫌そうだったら、そういうのが知れて良かったって思ったらいいのよ。」

花菜のお母さんの言葉に花菜は安心する。


「深山君!」

待ち合わせ場所に行くと深山がすでについていた。

「おはよう。お昼、どこかで買っていく?」

「あ、あのね。お弁当作ってみたの。もし嫌じゃなかったら、一緒に食べたいなって」

深山は驚いた後に穏やかに笑った。

「ありがとう、楽しみにしてる」

花菜は嬉しそうに笑う。少し日陰になっているところで敷物を敷いて座る。暑いけれど、心地よい風が吹いているので気持ちいい。


「模試、どうだった。」

「結果来たんだけど、怖くてまだ見てなくて。一緒に見てくれる?」

「うん」

郵便で届いた模試の結果を緊張しながら開けてみる。

「み、深山君、先にみて!」

花菜が差し出すと、深山は受け取って結果を開く。

「あ…。」

「どう、だった?」

「見てごらん」

深山は花菜に結果を渡す。判定はⅭ判定だった。

「あれ、もっと悪いと思ってた!」

自信が無かった数学の成績も思ったよりはるかによかった。

「ねぇ、数学!こんなに取れてる!」

花菜が嬉しそうに深山に言う。

「深山君にたくさん教えてもらったからだ!ありがとう」

花菜の笑顔に深山は嬉しそうに笑い、花菜が頑張ったからだよ、と言う。

「間違えた問題、復習する。分からなかったら聞いてもいい?」

「いいよ」

深山は穏やかに笑った。

「ところで…深山君はどうだったの?」

「見る?」

花菜が頷くので結果を渡す。

「第一志望はB判定、あとはオールA判定…」

深山は真剣な顔つきで花菜を見る。

「あれ?第一志望…」

「うん、京大目指そうと思って」

花菜は初めて聞く話に驚く。

「去年、京大の先生の講演聞く機会があって、興味持ってたんだ」

深山は遠くで遊ぶ子供たちの方を見ながら言う。

「ずっと、親の言う通り内部進学で医学部行くと思ってた。でも、花菜と出会って、自分が何をやりたいのかっていうことを考えるようになった。だから京大」


深山は花菜の方を見る。意志の固い目だ、と花菜は思った。


「そっか、自分のやりたいこと、見つかったんだね」


花菜は嬉しそうに笑った。自分が深山に影響を与えていたことには驚いたが、深山の表情が明るいことがうれしかった。


「花菜は、農工大第一志望にしてるけど、それでいいの?」

「うん、私はとりあえず国公立で、自分がいけるとこ目指す。農工大なら家から通えるから、金銭的な負担も少ないし一番いいかなって。私は獣医になれればそれでいいから。」

「そういうの関係なく、一番行きたい大学はどこなの?」


花菜ははっとする。誰にも言っていないことがある。

深山はカバンから本屋の紙袋を取り出して花菜に渡す。

恐る恐る紙袋を開けて驚く。北海道大学の赤本だった。


「どうして、これ…」

「本屋で赤本探してるとき、その本が気になっている気がしたんだ」

花菜は本をじっと見つめる。

「でも、北海道は遠くて、帰省も引っ越しもほかの地方よりお金がかかるし」


「見当違いだったらごめん」

深山が言う。しばらく沈黙が流れる。


「ううん、そうなの。私無理だってわかってるけど、北大に行きたいんだ。私が尊敬してる獣医さん、北大の出身で今北大で研究してるの。テレビで特集されてて、それ見て、行きたいって思ったの。でも遠いし、何よりレベル高いし、帰省にはお金かかるし…だからずっと考えないことにしてた。誰にも言ってなかったのに、なんでも見抜かれてしまう、深山君に」


「行けるかどうかは分からないけど、とりあえず、目指してみない?合格射程圏内に入ったらどうするか考えたらいい。目標にしてみたらどうかな。それが勉強のモチベーションにもなるし」


深山の声も表情も優しい。

どうして深山はいつも自分のことをこんなに理解して寄り添ってくれるのだろうか。と花菜は思う。

いつも、心に押し込めようとした気持ちを、深山は見つけて大事にしてくれる。


「どうして、こんなに優しくしてくれるの?」

赤本をギュッと抱きしめて深山に聞く。

「花菜に後悔してほしくないと思ったから」

深山は微笑んで横目で花菜を見る。

花菜はその瞬間に深山に抱きつく。


「深山君、ありがとう。私がんばってみる」


深山はふっと笑って花菜の頭をなでる。

そこから自然とキスをする。

暖かくて穏やかな空気を花菜は感じていた。


花菜がつくったお弁当を深山はおいしそうに食べてくれた。

「料理、うまいんだ。勝手に苦手だと思ってた」

と深山は本当に驚いた顔をしている。

へへへ、と花菜は笑う。

「よかった。うちは両親共働きだから、料理はよくするんだ。お母さんには全然かなわないけど。」

「花菜のお母さん料理すごくうまいよな」

「そうなの。お母さんレシピとかなくても作れるの。だから今日はね、たくさんアドバイスもらっていつもより頑張って作ったんだ」

「ありがとう。ごちそうさま。本当においしかったよ」

深山は嬉しそうに笑った。


「高校卒業したら、きっと遠くなるね」

花菜は深山にもたれかかって少し寂しそうに言う。

「北海道も京都も観光地だから、お互いが第一志望に行けたら楽しみが増えるな」

花菜の顔がパッと明るくなる。


「でも深山君モテるからなぁ。大学はきれいなお姉さんたくさんいそうだし」

「それは心配ないよ。俺しゃべらないからあんまり人寄ってこないし」

と深山は笑った。

いや、今でも佐伯さんはじめいろんなかわいい女の子がガンガン寄ってきてるのに、と花菜は思った。

それでも、自分を心配させないようにしてくれたのかな、と思うと花菜は

うれしい気持ちになった。


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