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花と氷  作者: わたあめ
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夏期講習

「本当に国立医学部目指すの?」

「あぁ」

深山と穂高は予備校の夏期講習を受けている。


「柊の家代々うちの大学だろ?」

「そうだな。」

「反対されないの?」

「びっくりはしてたけど、そのうち考えも変わるだろうって思われてる感じ」

「それは、親の支配から逃れたいからなのか?」

「…。まぁ、将来、自分のことは自分で決められる環境に持っていきたいと思ってる」


やっぱりな、と穂高は思った。


「そのためにはより上の大学目指さないと」

「それは、早田のためなの?」

「きっかけは花菜だけど、花菜のためってわけじゃない。今まで内部進学して医者になるのが当然だと思ってたけど、自分で自分の道を決めるっていう選択肢もあるんだなって思った。初めて自分がどうしたいのかを考えた。」


「結婚のためかと思った」

穂高が言うと深山はふふっと笑う。


「さすがに高校生でそこまでは。この先何があるか分からないし。ただ、目標があると、前とは違うモチベーションで勉強できて、そこは楽しいかな」


「最近早田と会った?」

「この前家行った」

「家族もいたの?」

「いや、いなかった」

「…そういう時ってさ、そういう感じになるの?」


深山は少し驚いた顔で穂高を見る。


「いや、早田ってなんか純真無垢っていうか、想像つかないと思って」

「受験中は手出さないつもりでいる。キスくらいはするけど」

深山はあっさり話すので穂高は自分で聞いておいて恥ずかしくなる。


「付き合ってる子と家に二人きりで、よく理性保てるな」

「蛇の生殺しってこんな感じかなっていつも思ってる。苦行だな」

苦笑いで話す深山に穂高はつい笑ってしまう。

深山が自分にいろいろ話してくれるようになったことが穂高は嬉しい。


「しかし家に誰もいないときに呼ぶって早田も大胆だな」

「多分、何も考えてない。そういう危機管理甘いんだ。勉強する場所くらいにしか思ってない」

たしかに、早田はそういうことには鈍そうだ、と穂高は思った。


「そう言うそっちはどうなの?」

「どうって?」

「え、西園寺。」


穂高は驚く。


「早田、なんか言ってた?」

「花菜?何も。好きなんじゃないの?西園寺のこと」

「え、いつから気づいてた?」

「剣道の試合あたりから、なんとなく」

「そうか…」

「西園寺、良い印象だと思う、穂高」

「そうか?」

「うん、俺に対する態度と全然違うし」

「柊と西園寺さんってどういう感じなの」

「どうって、お互い苦手」

「なんで?」

「同族嫌悪」

「あ…なんとなくわかった」


深山と穂高は幼稚園から一緒だが、以前は会話が全く続かなかった。

穂高が一方的に話しかけ、それに深山が短く答える、といった会話だった。

最近は深山から話題を振ってくることもあるし、むしろ話す時間が足りないと思うくらいだ。

4人のこと、進路のこと、家のこと。

まさかこんな会話ができる日が来るとは、以前の穂高は思っていなかった。

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