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花と氷  作者: わたあめ
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夏休み

花菜たちは終業式を迎えた。去年の夏休みは前半は追試に追われた花菜は、追試のない今年の夏が楽しみだった。


「深山君は去年の夏はどこか行った?」

「あー、ニース行った。」

「ニース、フランス…」

レベルが違った、と思った。時々深山が違う世界の住人だということを忘れてしまう。


「花菜は?」

「去年は、瞳子とディズニーランドに行った!」

「西園寺が、ディズニーランド…?」

深山が意外そうな顔をする。


「瞳子のお母さんがペアチケットをもらったらしくて、それで。すごく楽しかったよ」

「アトラクションに並んでる姿が想像できない」

「並んでる間はずっとしゃべっててあっという間だった」

楽しかったことを思い出すと笑顔になる。


「今年の夏休みは深山君に会えるかな?」

「模試と予備校の時会えるな」

そういうことじゃないのに、と花菜は少し拗ねた顔をする。

「どっか行く?」

「行く」

拗ねた顔のままで花菜は言う。深山はふふっと笑う。

「美咲公園行く?」

深山が提案してくれたのがうれしくて拗ねていたことを忘れてしまう。

「行く!ピクニックしたい!」

「ピクニックか、いいな」

深山は微笑んだ。


「あ、来週家に私一人なんだけど、良かったら遊びに来る?」

花菜は平然と言うので、何も考えてないんだろうな、と深山は思う。

「うん、行く」

やった、と花菜は嬉しそうに深山を見上げる。


深山が家に来る日がやってきた。

「深山君!いらっしゃい」

「おじゃまします」

「暑かったでしょ」

と花菜は冷たい麦茶を出す。

「あ…麦茶とか飲まないのかな…」

つい庶民の感覚で出してしまった、と思う。

「いや、普通に麦茶飲むから」

そう言って深山は一口飲む。

「勉強どう?」

「赤本の2次試験の問題難しくて。やっぱ予備校必要だなって思ってる」

花菜は赤本を深山に手渡す。

「そうだな、たしかに。」

パラパラと問題をみて深山が言う。

「たくさんクラスあるから、どのレベルを選択すればいいかも迷ってて。全教科とるとお金結構かかっちゃうし。」

「今見た感じだと、数学は多分、俺教えられると思う。共通テストは教科書レベルだから自力で何とかなると思うし、そうしたら3個くらいの講座で何とかなるんじゃないか」

「でも、深山君大変じゃない?私に数学教えるの」

「教えるのは自分の復習にもなるから」

「本当?」

「うん。」

「ありがとう。」

私の勉強にこれだけ付き合ってくれて成績むしろ上がっている深山君はすごいな、と花菜は感心する。

深山は自分の成績が下がれば花菜が気にするのではと危惧して、今までよりも勉強するようになっていた。


「ご家族今どこか行ってるの?」

「うん、お父さん京都に出張で、お母さんと草太も京都旅行行くって」

「警察って出張あるんだ」

「うん、あるよ。ほら、京都で国際会議あるでしょ?あれの応援で呼ばれたみたい。で、お母さんも京都行きたいって言いだして」

「花菜は行かなかったの?」

「昨日も明日も部活あるから」

剣道バカだな、と深山は思う。


「部活、やっててよかったなって思う。勉強だけだともう、発狂しそうになる…。」

「穂高も同じこと言ってた」

「剣道またできるようになったのは深山君が勉強の仕方教えてくれたおかげなんだけどね」

深山は優しく微笑む。


「あ、この問題何回やっても同じとこで躓く」

「どれ?」

と言って深山が覗き込む。ふわっと深山の香りがして花菜はドキッとする。

「花菜、これはこの公式を…」

深山が言いかけて花菜の方を見る。思ったより顔が近く、深山はそのまま顔を近づけてキスをする。

ふっと笑って勉強に戻ろうとすると

「もう1回したい」

花菜が深山の服の袖をギュッとつかむ。深山は花菜の顔を覗き込んでもう一度キスをする。

「私すごくドキドキしてる」

深山はそっと花菜を抱きしめる。

「ほんとだ。すごくドキドキしてる」

深山が笑う。


「もう少しだけこうしておこうか」

と深山が言い、花菜はドキドキしながら無言でうなずいた。

抱きしめてくれる深山の腕から大事に思ってくれていることが伝わってくる気がした。


そのあと平然と数学の勉強を再開する深山を見て、

ドキドキしているのはもしかして自分だけなんだろうか、と花菜は思った。

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