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花と氷  作者: わたあめ
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勉強

誰もいない自習スペースで深山は花菜に間違えたテスト問題を1問1問丁寧に教えた。

そしてそれをノートにまとめるように言う。

花菜は深山の説明を大事にしたくて必死にノートにまとめた。

次に深山は問題を最初から今度は自分の力で解くように言い、分からない問題は先ほどまとめたノートを見ながら解くように指示した。


花菜が問題を解いている間、深山は難しそうな本を読んでいる。


問題を解くのを3回ほど繰り返すと、花菜は解説ノートを見なくても全問正解できた。

「全部解けた!」

「じゃあ、今度は教科書の問題やってみて」

「え…問題変わってもできるかな」

こんなに丁寧に教えてもらったのにできなかったら申し訳ないな、と花菜は不安に思いながらも深山に言われたとおりにやってみる。


「あれ?なんで?」


初めてやる問題だが迷うことなくスラスラと全問正解できた。


「数学って苦手な人でも訓練すればある程度はできるようになるんだ。どういう問題にどの公式を使うかを覚えたら、あとはひたすら全部解けるまで繰り返す。家でもとにかくそれを繰り返してみて」

深山は無表情のままでいった。


「ありがとう!深山君って教えるの上手だね」


花菜は目をキラキラさせて深山を見上げる。


深山はドキッとしたものの無表情のまま黙ってしまう。

こんな時どう反応していいか分からない。


「なんで俺に告白しようと思ったの?」

突然の質問に花菜は驚く。

「え・・?」

「いや、なんとなく気になっていたんだ。そんなにしゃべったことも、なかったし。」

「えっと、それは・・・」

花菜は自分勝手さが露呈するが、ここまで付き合ってくれた深山に誠実に対応したいと、素直に話すことに決めた。


「私どうしても獣医になりたくて、大学は国公立に行くからっていう条件で親に頼み込んで私立のこの高校に来たんだけどね、お恥ずかしいながら、深山君のこと好きになってからはそればっかり考えるようになっちゃって。ちょっと勉強に支障が出てたから・・・いっそフラれたらすっきりするかなって。ごめん・・・。そんな自分勝手な理由で・・・」

なんだか申し訳ない気持ちになって花菜は下を向く。


「ふーん。」

深山は頬杖をついて無表情のまま下を向く花菜をまっすぐ見ている。

「最近は勉強できてるの?」

それなら自分と付き合うことで勉強が逆に手につかなくなるんじゃないのか、と深山は心配になった。


「うん、また深山君と話したりできるって思うとね、それが楽しみで。その時のために今のうちに勉強しようって思って前よりも頑張れる」

花菜はうれしい気持ちがあふれ出して思わず笑顔になってしまう。


ふと隣を見ると深山は驚いた顔をしている。

「ごめん、私変なこと言ったかな」

焦る花菜を横目に見ながら、深山はいつもの無表情に戻って

「いや、別に」

と言った。


数日後、花菜から深山に“追試受かったよ!全問正解だった”とテストの答案用紙の画像とともにLINEが届いた。

“おつかれ”

と深山が返信するとありがとうと書かれたゆるい犬のスタンプが送られてきた。


今までに感じたことのないような温かい感情を深山は感じるが、それがどういう感情なのか分からずにいた。

誰かの進路やテストの結果なんて気にしたこともなかったな、と深山は思う。


瞳子に似ている気がする、という花菜が告白の時に言った言葉を深山は何度も繰り返し思い出す。

自分と瞳子は、家庭環境も、周りを取り巻く環境も、周りに距離を置きながら生きてる感じも、似ているな、と深山は思った。



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