歓迎③
深山がリビングに入ると幼稚園くらいの男の子が深山を不思議そうに見ている。
「このお兄ちゃんだれ?」
「草太、このお兄ちゃんはお姉ちゃんのお友達よ」
花菜の母が説明する。
「あ、深山君、弟の草太。プールから帰ってきてたんだ」
「こんにちは、草太君。」
深山君子供苦手だったりしないだろうかと花菜は少し心配になる。
「こんにちは!」
草太は元気よく挨拶する。深山がソファに座ると草太は深山の膝の上に座る。
「あ、こら、草太!ごめんね、深山君」
花菜は慌てて草太を移動しようとする。
「構わないよ」
そういって深山は草太を抱っこして落ちないように自分のほうに寄せる。
「あら、深山君、ごめんなさいね。なんかなついちゃったみたい」
「いえ、子供になつかれたの初めてで、新鮮です」
深山は照れているが嬉しそうにも見える。
「ねぇ、今日の夕飯なぁに?」
草太が元気よく母に聞く。
「今日は唐揚げよ」
「かららげ!ねぇ、お兄ちゃんも一緒に食べる?」
深山はどう答えたらいいか考えている。
「深山君さえよかったらどう?あ、でもご家族が準備していらっしゃるかしら」
花菜の母が言う。
「あ、いえ、夕飯は基本いつも一人なので」
知らなかった、と花菜は驚く。
「いつも?」
と花菜の母が心配そうに聞く。
「父は仕事が忙しくてめったに家でご飯を食べませんし、年の離れた兄は結婚して家を出ていて。母も交友関係の広い人なのでいつも外食しています」
「じゃあ、夕飯はどうしているの?」
「出前とったり、お弁当買ったりすることが多いです。でも慣れているので」
と深山は笑う。
「深山君!」
花菜の父が目をウルウルさせて深山の肩に手を置く。
深山は驚いている。
「今日はここで食べていきなさい。帰りは送るから。ね、皐月」
「そうね、深山君がよければだけど、どうかしら」
深山は穏やかに微笑む。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
夕飯は和やかな雰囲気だった。
「今日の夕飯は楽しいな」
と父が言うと花菜が、フラグたったね、という。深山は意味が分からない。
その瞬間に花菜の父親の携帯が鳴る。花菜の父はいつも携帯を離さず、常に画面を上に向けて見えるようにしている。画面には●●警察署と表示されている。花菜の父はさっきまでとは別人のようにきりっとした顔つきと声になる。
「了解、すぐ向かいます。」
電話中に花菜は車のカギとカバンを取りに行って父に渡し、花菜の母は上着を渡してドアを開ける。
「深山君、絶対また遊びに来てね!」
と親しい友達に言うように言い残して父は去っていった。
「警察官…なんですね」
「そうなの、招集は絶対なんですって」
と花菜の母は笑って言った。
「僕も大きくなったらけいたつかんになるんだ!」
草太が嬉しそうに深山に言う。
「そうか、草太君かっこいいね」
「うん!」
草太は満足げだった。




