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Lightning in the blue sky

Lightning in the blue sky{7・8}

作者: はらけつ


なんにせよ、


青い空に、稲妻は、よく似合う。



稲妻が、走る。

稲妻が、落ちる。


青天から、落ちる。

青天に、走る。


空から地へ。

いや、正確には、宙から地へ。


気象衛星は、観測する。

大気の動き等を観測し、地上に、伝える。

地上では、それを元にして、気象予測を、する。


気象衛星は、落とす。

人工的な稲妻を、地上に、落とす。

地上では、気象予測した結果を元に、気象制御の為の稲妻を、落とす。


未だ、人工的には、微々たる稲妻しか、起こせない。

そんな稲妻では、気象制御に、使えない。


稲妻の威力を、増幅する必要が、ある。

気象制御に使える稲妻にする必要が、ある。


それには、増幅装置が、必要。

増幅装置と云うか、そう云うものが、必需。


色々、試した。

無機物から、有機物まで。

鉱石・薬品から、昆虫・動物まで。


結果、一つのものに、落ち着く。

人間に、落ち着く。

それも、濃い記憶を所有している人間、に。


濃い記憶を持っている人間ほど、役に立つ。

気象制御の為の、稲妻増幅に、役に立つ。

記憶が濃い程、稲妻は、増幅される。


が、身体に、電気(稲妻)が走る訳なので、無事には、済まない。

人間の神経や脳には、電気信号が走っている訳なので、無事には、済まない。


代償として、増幅装置になった人間からは、失われる。

増幅装置として、使われる度、記憶は、失われる。

新しい記憶から、最近の記憶から。


法律が、制定される。

その法律の為、気象制御を名目に、人が、強制的に招集される。

体のいい、祭の人身御供、戦時の赤紙招集。


招集する人間は、その資格から、高齢者が、多くなる。

が、『濃い記憶を持っている』資格さえあれば、若年者も、招集される。


表立っては、苦情を、言えない。

災害を防ぐこと、多くの人の利便に関わること。


そうやって、善意の犠牲者を出し、日々は、続いてゆく。


{case 7}


アラフィが、気象衛星に乗るのは、これで、四度目だ。

通常、気象衛星へ搭乗するのは、ほとんどの人が、一回のみ。

記憶が失われてしまうので、記憶が劣化してしまうので、普通の人は、一度くらいしか、気象衛星に、乗ることができない。


アラフィは、四度目、だ。

過去三度乗ったが、記憶自体は、失われていない。

おそらく、特異体質、だ。


得難い人材、だ。

今後も、支障が無い限り、搭乗は続けられるだろう。

類稀な、リピートの利く人材、だ。


が、計三度の搭乗を通して、分かったことが、ある。

確かに、記憶の喪失は、無い。

その代わりが、有った。

記憶の変容が、有った。


記憶の変容は、大きなものでは、ない。

日付けが数日ズレる、また、些細な内容に変更がある、くらいだ。


例えば、


あるイベントに参加した日にちの記憶が、数日、ズレる。

数週間、数ヶ月ズレることは、無い。


昨日の昼飯のメニューは、焼き魚だったのに、煮魚に変えて、覚えている。

魚が肉になるとか、メニューそのものが変わってしまうことは、無い。


それだけ、だ。

それだけ、だが。


人と記憶が、共有できない。

人と同じ思い出が、持てない。


周りの話と、微妙に、ズレる。

大きなところでは合っているのに、細かいところで、微妙にズレるから、もどかしい、なにか気持ち悪い。


その思いに、こちらも、相手も、囚われる。

そして、いつしか、話をしなくなる。

そして、いつしか、疎遠になる。


アラフィは、一度目の搭乗後・帰還後、周りとの些細なズレを、感じる。

それは、『ん?』と感じるくらいのもので、大げさに考えて、いなかった。

二度目の搭乗後・帰還後、その『ん?』は、頻繁になる。

三度目以降、いつしか、周りと話が嚙み合わなくなり、話をしなくなる。

話をしなくなるにつれ、付き合う人間は、減る。

自然、周りと、疎遠になる。


そして、四度目の搭乗を、迎える。


気象センター側は、アラフィの事情を、まともに受け合わない。

おだてまくるのみで、アラフィの問題を、解決しようとしない。

『問題解決に取り組んでいる』フリはするが、フリだけなのは、アラフィにも分かる。


貴重な人材を、手放したくない。

その為、聞いてるフリをして、実はスルー。


そんな気象センター側のスタンスは、見え見え。

見え見えだが、アラフィは、拒むことができない。



金、だ。

金が、いる。

気象衛星に搭乗することで得られる金は、馬鹿にならないどころか、かなりまとまった額、だ。


何に、使うのか。

記憶の保持、だ。

記憶変容の治療、だ。


気象衛星に乗ることで、記憶は変容するが、金は得られる。


つまり、


変容治療を受けることで、記憶の変容はある程度治るが、金は無くなる。

 ←

気象衛星に乗ることで、記憶は変容するが、金は得られる。

 ←

変容治療を受けることで、記憶の変容はある程度治るが、金は無くなる。

 ←

気象衛星に乗ることで ・・

 ←

変容治療を受けることで ・・


堂々巡り、だ。

イタチごっこ、だ。

閉じられたループを、繰り返している。


が、既に、ループに囚われてしまったので、当面、ループを繰り返すしかない。

アラフィが、ループから解放される時は、死を迎えた時、だろう。


アラフィは、記憶の変容が決定的に判明した時から、克明に、データを取っている。

動画、写真、音声、文章、その他諸々。

それらを、変容治療に、役立ててもらっている。

いや、正確には、それらが変容治療のキー、となっている。



ローザ1号が、帰還する。

アラフィも、帰還する。


今回のランデブーでは、特別なことは、何も無かった。

通常通りの、気象制御。

通常通りの、稲妻落とし。


稲妻落としの回数も、特筆に値することは、無い。

月にして、一回か二回。

いつもと、なんら、変わらない。


アラフィの記憶変容は、すぐには、分からない。

記憶喪失ならば、その性格上、割り合い時間が掛からず、判明する。

が、記憶変容は、それよりもっと、時間が掛かる。


日常生活を、いくらか、過ごす。

細々としたことまで、再度確認して、過ごす。

他人と、いくらか、付き合う。

細々とした記憶まで、再度擦り合わして、付き合う。


その上で、やっと、記憶変容が、判明する。

どこか、どのように変容しているか、判明する。



「で?」

「はい?」

「今回、どこか、どのように、変容していましたか?」


コルトニーは、尋ねる。

コルトニーは、アラフィのかかりつけ医、だ。

日常的な疾患治療から、記憶変容に関することまで、医療行為を、アラフィに行なっている。


「それが」


アラフィが、答える。


「それが?」

「変わっていないみたい、なんです」

「変わっていない?」


コルトニーは、解せない。


変わっていない?

『記憶変容が、無い』と云うのか?


「最近のことも、昔のことも、記憶通りなんですか?」

「はい」


ますます、解せない。

記憶は、最近のものから、失われてゆく。

だから、記憶変容も、最近のものから、変わってゆく。


よって、昔の事柄だったら、記憶変容から免れることも、あり得る。

でも、今回の記憶変容の影響有無は、記憶の古い・新しいには、関係無さそうだ。


「いつも、記憶変容を元に戻すのに使っている、データとかは、

 どうなんですか?」

「はい?」

「いや、動画、写真、音声、文章、その他諸々」

「ああ」


アラフィは、ここで、苦笑する。

苦笑して、続ける。


「あんなもん、役に立ちません」


ん?


コルトニーは、引っ掛かる。


「だって、偽の記載ばかり、ですから」


んん?


コルトニーは、再度、重く引っ掛かる。


「じゃあ」

「はい」

「今持っている記憶が、ホンマの記憶で」

「はい」

「動画、写真、音声、文章、その他諸々は、偽のデータで」

「はい」

「記憶変容は無い、と」

「はい」


アラフィは、高らかに、断言する。



「そうなんですよ」


アラフィの友達、ピノは、頷きながら、言う。


コルトニーは、聞いている。

ピノの答えを、聞いている。


コルトニーは、アラフィの友達のピノと、会っている。

喫茶店の片隅で、向かい合っている。

『アラフィの言うことが、本当かどうか?』を確かめに、ピノと会っている


患者の現状を把握する為に、患者と親しい人間と面会することは、よくあることだ。

が、今回は、特殊だ。

今まで、コルトニーも扱ったことが無い事例、だ。

藁にも縋る思いで、ピノと会っているのに、近い。


「やはり ・・ 」


コルトニーは、思わず、漏らす。


「今までは、些細なところで、記憶違いがあるから ・・ 」


ピノの言葉に、コルトニーは、頷く。


「その些細なところを、訂正するというか微調整すれば ・・ 」


コルトニーは、再度、頷く。


「アラフィと記憶が共有できて、一緒に懐かしがったりできたんです」


コルトニーは、再々度、頷く。


「それが」

「それが」

「前回、帰って来た時から」

「四度目の気象衛星搭乗から、帰って来た時から」

「そこらへん、微調整できなくなって ・・ 」

「 ・・ なって?」

「一緒に懐かしがったり、できなくなったんです」


やはり


コルトニーは、確信する。


アラフィの記憶変容は、次の段階に、進んでいる。

変容した記憶が、本記憶になり、元々の本記憶が、偽記憶になっている。


金を掛けて、最先端の人材を使い、最新機器等を駆使する。

それをしても、記憶変容は、稲妻落としのダメージは、その上を行った様だ。

まるで、ウィルスや細菌が、耐性を持つ様に。

自分を変え、新しい戦略を、突き進める様に。


このままでは、金が有ろうと無かろうと、最先端・最新鋭のサポートが有ろうと無かろうと、早晩、アラフィは、孤立する。

誰とも、記憶が、共有できない。

誰とも、思い出が、共有できない。


周りの人々は、アラフィと、距離を取る、離れて行く。

周りの人々は、アラフィと、疎遠になる、没交渉になる。

そして、アラフィは、孤立する、ぼっちになる。


この世の中で、一人ぼっち、となる。

『偽記憶にまみれて、生きてゆく』こととなる。


ある意味、記憶を失うより、過酷な運命。

それが、貴重な人材の、行く末。

何度も気象衛星に乗り、人々の安寧な生活に貢献した人の、行く末。


やりきれん


コルトニーは、ピノとの会話から、一瞬の内に、悟る。


それでも、コルトニーがこの事実を指摘しても、気象センターは、要請するだろう。

アラフィに、五度目の搭乗を、要請するだろう。


今の段階では、事態は、コルトニーの想定に過ぎない。

かてて加えて、アラフィは、貴重な人材。


また、アラフィは、五度目の搭乗要請を、受けるだろう。

それが、金を稼ぐ手段なのだから。

生活を続ける、生きてゆく手段なのだから。



「所長」

「何だ?」

「気象衛星搭乗者付きの医者から、その者の搭乗差し止め要望書が、

 上がっております」

「要望書?」

「このまま、この者を搭乗させていたら」

「 ・・ いたら?」

「この者の精神衛生上・記憶上、多大なダメージがあると」

「その者は、誰だ?」

「アラフィ、です」

「却下」

「却下、ですか?」

「その要望書は、却下だ。

 どうせ、『このまま搭乗させると、アラフィの身体に、悪影響がある』

 とか、そう云ったものだろう」

「その通り、です」

「アラフィは、貴重な人材だ。

 少なくとも、最低あと二回は、人々の為に、乗ってもらいたい」

「はい」


『使えるだけ使え』の、『使い捨て』ですか


部下は思うも、その思いを、おくびにも出さない。



改善は、されていない。

見向きもされていない、様だ。


アラフィの状況は、何も、変わらない。

そして、アラフィは今日、五度目の搭乗に、旅立った。

アンキ2号で、旅立った。


アラフィが帰って来る頃には、記憶変容が、一層進んでいること、だろう。

多分、もう、微調整では、すまない。

『マイナー・チェンジどころか、メジャー・チェンジが必要となる』こと、だろう。


つまり、偽記憶が、本記憶に、すり替わる。

偽記憶が、本記憶を、上書きする。

そして、上書きされた本記憶は、戻らない。


どっちがいい、のだろう。

どっちの方がまだマシ、なのだろう。


記憶を、失う。

云わば、記憶の白紙化。

偽記憶が、本記憶に、すり替わる。

云わば、記憶の上書き。


記憶の白紙化、記憶の喪失は、ダメージがある。

本人及び周りの人間に、ダメージがある。

記憶を、思い出等を、共有できない。


記憶のすり替わり、記憶の上書きも、ダメージは、ある。

周りの人々には、ダメージは、ある。


本人は?


本人には、ダメージは、無い。

記憶が、細かなところで、すり替わるだけ、だ。

しかも、その記憶を、自分の元からの記憶と、思い込んでいる。


が、その為に、周りとは、共有できない。

記憶、思い出等が、共有できない。

孤立、一直線。


稲妻が落ちる度、人々が気象制御を求める度、アラフィの身体には、走る。

電気が、走る。

電気が走って、増幅される。


増幅されて、稲妻は、落ちる。

何度も、落ちる。

半年の内に、複数回、落ちる。


それは、つまり、六ヶ月の内に何回も、アラフィの身体に、電気が走る、と云うことだ。

何回も、記憶が上書きされる、と云うことだ。

アラフィの孤立を進める、と云うことだ。


孤立したアラフィに、居場所は存在しない、だろう。

人々の輪の中に入れない、だろう。

入ろうとしても排除される、だろう。


五度目の搭乗帰還が、待ち遠しい様な、恐ろしい様な ・・


コルトニーの思いは、千々に、乱れる。


医療に携わるものとしては、帰還後のアラフィを、診断したい。

早く、詳細に、診断したい。

その状況を確認して分析して、原稿にまとめ発表したい。

医療の進歩に、貢献したい。


ただ、個人的には、


アラフィの現状に触れることが、恐ろしい。

正直言うと、関わりたくない、避けたい。


コルトニーの中で、リアルとエモーショナルが、闘う、せめぎ合う。



リアルは、いつ何時も、優先する。


コルトニーは、気象センターへ、アラフィを迎えに、行く。

ピノも一緒、だ。


もはや、進んでアラフィを迎えるのは、コルトニーとピノだけに、なった。

アラフィの友人・先輩・後輩、知人のほとんどが、アラフィと、距離を置いている。

それは、アラフィの親族も同様、だ。

家族でさえも、距離を、置いている。


現に、今日、親も来ていない。

妻も子も、来ていない。

兄弟、甥姪も、来ていない。

コルトニーとピノだけ、だ。


コルトニーは、ピノと共に、アラフィを、待ち受ける。

待合室の外が、ザワついて来る。

アラフィが、来た様だ。


ガチャ


ドアが、開く。

アラフィが、入って来る。


アラフィは、二人を見て、微笑む。


「ああ先輩、二人揃って、来てくれはったんですか?」



アラフィは、その後、廃人化するまで、搭乗を続ける。


{case 7 終}


{case 8}


二**一年三月二日 晴れ 暖


脳内の記憶に関する電気信号を、突き止める。


小地震、有り。

欧州で、戦争勃発。



二**二年三月二日 曇り 暖


脳内の記憶伝達の仕組み、突き止める。


中地震有り、被害小。

北米で、テロ有り。



二**三年三月二日 雨 寒


脳内の記憶伝達に関する電気信号に、細工を施す。

実験動物の記憶書き換えに、成功。


大地震有り、被害大。

南米で、独立紛争勃発。



二**四年三月二日 晴れ 寒


実験動物の記憶書き換え、データ揃う。

人体実験に、移行。


大雨有り、被害小。

アフリカ、民族紛争勃発。



「なあ」

「うん」

「最近、ポガ博士、見いへんけど」

「なんや、実験が、人間適用レベルまで、来たんやて」

「マジで?」

「マジ。

 そんで最近は、実験に参加してくれる人間を集めるのに、忙しいらしい」

「ポガ博士の実験って ・・ 」

「記憶の書き換え」

「それ、ええのんか?

 ある意味、人の記憶をコントロールすることに、なるんやろ?」

「今のところ、ええみたい。

 国も役所も、むっちゃ乗り気らしいから」

「ああ、それはそうやろな」

「気象衛星搭乗者に使用できる様に、期待されてもいるらしいし」



二**五年三月二日 曇り 暖


臨床実験、データ揃う。

国に、申請する。

上手く行けば、年明け早々にも、使用許可が下りる。


洪水有り、被害中。

アジアで、クーデター勃発。



二**六年三月二日 雨 暖


申請、却下される。

データ不十分、とのこと。


津波有り、被害大。

世界中で、パンデミック。



二**七年三月二日 晴れ 寒


自分を被検体にして、臨床実験データ、揃える。

再度、国に、申請する。


穏やか。

世界も、穏やか。



二**八年三月二日 くもり あたたかい


申せい、いまだ、下りず。

何か、不びが、あったのか。

不び内よう、分からない。


おだやか。

世界も、おだやか。



二**九年三月二日 雨 あたたかい


申せい、ふたたび、きゃっ下。

分からない。

どこが、ダメなのか?


おだやか。

世界も、おだやか。



「ポガ博士の研究」

「うん」

「正式に、ストップが掛かってんて」

「うわ。

 ポガ博士、落ち込んでるやろ?」

「それが」

「それが?」

「痴呆症状と云うか、記憶喪失症状と云うか、そんなん起こし始めてて、

 幸か不幸か、そこらへんに、気ぃ行かへんねんと」

「うわ、『人間やめますか』状態やん。

 そら、研究、ストップ掛かるわな」



二*一〇ねん三がつ二にち はれ さむい


きしょうセンターから、しょうしゅうれいじょうが、くる。

きしょうえいせいに、とうじょうが、もとめられている。


おだやか。

せかいも、おだやか。



「ポガ博士」

「うん」

「今日、搭乗やて」

「気象衛星か?」

「そう、アンキ2号。

 ここんとこ、世界中で災害あったり、キナ臭かったりするから、

 せめて、お天気くらいは、安定してもらわんとな」

「今のポガ博士でも、貢献できるやん。

 廃人同様になってるんやから、せいぜい貢献してもらおう」

「そやな。

 で ・・ 」

「で?」

「自分の研究成果を、自分で試してもらって、

 記憶を上書き ↓ 白紙にして、何回か、乗ってもらおう」

「うん、それがええ。

 そうしてもらおう」



ポガ博士は、それから何回も、気象衛星に、搭乗する。

記憶上書き ↓ 白紙を、繰り返しながら。


ズタズタ、だ。

頭の中が、ズタズタ、だ。

最早、何の記憶も思い出も、無い。


身体には、何回も、電気が走っている。

身体も、ズタズタ、だ。

最早、身体機能は、生物本能のみ。


もう食うだけ、出すだけ、寝るだけ。

もう日記は付けられない、付ける気も無い。


それでも、


それでも、呟く。

呟いている。


「おだやか。

 せかいも、おだやか」


{case 8 終}


{了}

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