オモワク
昨日は坂本と名乗る女が帰った後
俺はさっさとレポートを終わらせ、
ひと眠りするつもりが目覚めた頃には
夜の22時を回ってしまっていた。
そこへバイトを終わらせた香織が
予定通り俺の部屋に帰宅しそのまま泊まっていった。
翌日、珍しく香織が先に目覚めており
片付けなどをしてくれていたようだが
棚を拭こうと思った時、それが目に入った。
棚を陣取るように置いてある真っ黒な箱。
何だろうと思いながら恐る恐る箱を開けた香織は
小さな悲鳴をあげながら勢いよく箱を跳ね除けた。
そうして箱は勿論、
中身もろとも全てが床に散らばり
その音で俺は飛び起きた。
「どうした?」
香織に駆け寄る俺の目に飛び込んできたのは
四角い箱と個包装されたお菓子だったが
それが異様であることは一目瞭然だった。
全てが真っ黒く変色していたのだ。
これを貰ったのは昨日。
24時間も経っていない。
例えお菓子が腐ったって
こんな炭のようにはならないだろう。
隣人から貰ったものだと伝えると
より不気味に感じたのだろう。
香織の顔色は増して青ざめていく。
今日はあまり長居せず帰った方がいいんじゃないかと話したが、家に帰る方が一人の時間が長くて怖いと言うので結局予定通り夜に帰宅させた。
隣人に対して恐怖なのか怒りなのか
とにかく不信感が募っていくばかりだが
せっかく一人暮らしを始めたわけだ。
隣人トラブルなんて御免だと思い
この時は菓子折りを捨てるだけにして
忘れようと努めた。