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喪失の再演  作者: はる
1/7

ハジマリ

初めての連載作品になります。

前回は私自身が見た夢をベースに書きましたが

今回は全て私の思いつきで書いた完全オリジナルです。

一応ホラーですが怖さよりも

他要素に力が入ってしまった気がします。

ゆったりお読み頂けると幸いです。




眠れない。


もう何日目だ。



睡魔は夜の闇を引き連れ

確実に俺を飲み込もうとしている。

それなのに、だ。

こんなにも眠いのに寝かせてくれない。



ドン………ドン………



うるさい。うるさいうるさいうるさい。



大変な暑さを記録した夏が過ぎ

9月も中盤に差し掛かった。

段々涼しくなってくる頃だろうに。



だがそんなことは関係ない。


午前2時34分、

何も無い部屋、

やつれきった頬に一筋の涙が伝う。



俺は今日も眠れないでいる。



━━━



「達也ー!来たよ!」



俺は4月の大学入学と同時に

念願だった一人暮らしを始めた。

平凡なアパートの角部屋、208号室。

ここに来て丁度一ヶ月が経過したわけだが

今日は高校の頃から付き合っている香織が

初めて俺の部屋にやってくる日だった。


遠足気分なのか

少々はしゃぎ気味な彼女の荷物を預かると

その重さからして普段のデートより

持ち物が多いのだろうと容易に想像出来た。

それもそのはずで、

今日彼女はこの部屋に泊まることになっている。


「へ~、意外と綺麗にしてるじゃん。」

香織は目を細めニヤニヤしながら

部屋のあらゆる所を見回している。

小姑かよとツッコミたくなった。


そんな香織を他所に

俺は夕飯で頼もうと思っていた

出前カタログに集中する。

何を食べるか訊ねたところで

ようやく香織が俺の視界に飛び込んでくる。

「えーっと、

マヨコーンピザは絶対でしょう?スイーツはぁ…」



数時間後━━━━━



すっかり満足した様子の香織は

壁にもたれかかってスマホを触っている。

一人暮らし用の小さな机の上は

ピザの箱やら飲み物で埋め尽くされていた。


いい加減片付けようかと立ち上がろうとした

その時だった。



ドン……ドン……ドン……ドン……



俺は香織とアイコンタクトを取ろうとしたのだが

当の香織はというとそれどころじゃない様子で

飛び跳ねるように壁から身体を離した。


「何、今の。」


普段の香織からは想像出来ないような

怪訝な顔とセットでその低い声は発せられた。

俺は一瞬 隣りの部屋だよな くらいに思ったが

その考えは脆くも打ち砕かれた。

今現在、隣りは空き部屋だからだ。


壁にもたれかかっていた香織曰く

先程の音は確実に壁すぐ傍から聴こえたようで

彼女には隣りが空き家であることも伝えていた為

酷く怯えている様子だった。


無論俺も、この現象がこれっきりであるよう

頭の片隅で祈った。


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