オタクが生き生きしてる世界
「おっと、兄ちゃん大丈夫か?この辺りはオタク臭強めだから気をつけな」
「あっちのバスにはまだ乗るなよ。兄ちゃんのオタク度数だと急性オタク中毒でぶっ倒れちまう」
「おい、お前どこの所属…なっこいつキモオタだ!逃げろ!こいつだけはやばい!」
みたいなこと言う世界観の作品あったら面白そうだと思って書きました
現実は面倒くさいなと常々思う。漫画やアニメ、小説の世界の方が面白い。現実で頑張るよりもゲームやインターネットの世界にゆっくりと浸かるのが心地よい。ブヒブヒ言いながら可愛い女の子を愛でるのはなんとも楽しいし癒しでもある。最高だぜ。「めっちゃ可愛い!?え!?やば!?」とか思ったらいろんなサイトでその女の子の絵が見られたりするんだぜ。なんならその女の子のえっちなイラストとかもな。最高じゃねえか。絵を探してたら自分好みの神絵師を見つけたりもしてな。それだけでその日1日満足だったなとしみじみ思える。これの繰り返しだからやめられねえのかもな。がっはっは。とは言いつつも、現実を見なければならない時期が人間にはある。定期試験、受験、就職活動、資格の勉強などだ。これもまた面倒くさい。とくに将来やりたいこともないのにその瞬間には現実に引き戻される。いっそのこと漫画やアニメのキャラクターの名前を試験に書かせたり、論文には作品の魅力やキャラクターの魅力について書いても丸がもらえる世界にならないものだろうか。そんなオタクこそが無双できる世界があれば行ってみたいなと思う。オタク同士で戦いあっても面白そうだな。まあ、こんな叶わないだろう休日引きこもりオタクの妄想をいくら続けてもしょうがないから寝るとしますかね。と、俺はゆっくりと目を閉じる。明日も会社だ。おやすみ世界。こうして俺は眠りについた。おしまい。と思いきや、俺は次に目を開いたときには、天井に2次元美少女のえっちなポスターや好きな漫画のポスターが貼ってある部屋では無かった。アニメや漫画でしか見たことがないような世界が広がっていた。
なんてことは無く。現実は非情である。神様なんていやしない。いや神様にも癒しはある。ロリ神様とか女神様とか。異世界転生とかを期待してワクワクしながら目を瞑り、5秒ほどで目を開いてみたら何も変わっていない。知ってた。知ってたよ。天井に貼ってある女の子は変わらず今日も可愛いなぁと思いながらもう1度目を瞑った。正直眠い。
意識が朦朧とする中、体全体に倦怠感を感じた。悪夢にも似たような寝苦しさ。うへえこの後起きて会社なのやだよ。
毎朝俺は会社に出社するために6時にスマホのアラームをセットしていた。いやー、最近のアラームはすごいね。好きなキャラが起こしてくれるアラームなんかもあって俺はそれを使っている。好きなキャラかつ好きな声優の声で起こされたときvsふつうのスマホのアラームだと前者が勝ちまくりだね。朝から癒しだよ。そんなオタクしか使ってなさそうなアラームの音が全く聞こえなかった。いやそれよりも工事現場の音みたいなのがすごい。不快感MAXだ。しかもなんか臭い。まさかとは思うけど、もしかしてこれ原因全部俺の体臭?最近の体臭は工事現場みたいな音もするの?そりゃ公共の場でオタクは生きづらいよ。あとなんかおっさんの声が聞こえてくる。倦怠感がものすごいため、目を開くのに時間がかかってしまったが、なんとか開いて今自分がどういう状況なのか確かめようとした。1番初めに目に入ったのは髪がボサボサで眼鏡をかけたおっさんの顔だった。
「おい、大丈夫かお前。顔色がよくないぞ。この顔色の悪さ的にオタク臭にでも耐えられなかったのか?」
寝起きからこの顔見せられるのはキツすぎた。先ほど不快感MAXと表現したが訂正する。今この状況が不快感MAXだ。この状況をすぐにでも変えたかった俺は、「はい、大丈夫です。お気遣いありがとうございます。」と伝え逃げることにした。
「ぁ、ダドバす…ぁ、オビジュアルアジャアス…」
胡麻をすってるときの音だった。寝起きだったため喉が乾きに乾ききっていた。なおかつ、人見知りであるため声を発することも苦手としており発しても音量があまりにも小さかった。その2つが見事に合わさってしまった。すぐにもう1度言おうとしたら予想外のことが起きた。
「ん、大丈夫そうならよかったよ。ならここら辺は危ないからさっさと立ち上がりな。撮り鉄が朝の電車撮りたさに集まってきてる。君がここで倒れてると彼らの迷惑になるからね。」
なんと彼には俺の胡麻すりボイスが聞こえていたのだ。言われるがまま立ち上がるとそこには見たことがない世界が広がっていた。
スーツを着ている人や制服を着ている人はもちろんいたが、アニメやゲームなんかのキャラクターのコスプレをしている人、ヒーローのベルトを付け、そのコスチュームを着て歩いている人、ケモ耳をつけている人などなど様々な人がいた。中でも、チェックの模様の服にジーパンを履いて眼鏡をかけた髪がボサボサでリュックを背負った人を数多く見かけた。これだけを見れば秋葉原を見たことがない世界だと勘違いしているちょっとイタいやつだが、これだけではなかったのだ。†漆黒の翼†という名の見るからに怪しい店やオタク度数50以下飲食無料、キモオタ以外お断り!、あなたの臭さ私たちに恵みませんか?の広告の文字、バスにプリントされた2次元美少女のえっちなイラストなど明らかに現実にはない店が多く立ち並んでいた。
「な、なんだここは…」
「おーん?兄ちゃんほんとに大丈夫か?別の土地からやってきたのか?」
「あの、ここはいったい…」
驚愕が人見知りを勝っていたため声の調子は戻っていた。
「え?ここがどこかって、そりゃここは世界屈指のオタクの密集地でありオタク度数最高級の国、'オタコク'だぜ?兄ちゃんもしかして記憶喪失ってやつかい?ありゃ可愛い女の子がなって俺にいろいろ教わるうちに惚れるもんだと思ってたがまさかなぁ。」
秋葉原ではなかった。それよか日本でもなかった。それを聞いて俺は理解した。俺は、オタクが世界そのもの、人々の概念レベルにまで絡む世界へと来てしまっているのだということを。
世界観だけ考えるのは楽しいですね。なんだこれwとか思ってもらえれば御の字です。普段こういうの読まないのと初めて書いたので、読んでいただけただけでも嬉しいです。