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第八話

「むっ……、マーティラス家の元メイドだとっ!?」


「マーティラス家をご存じなのですか?」


 護衛隊長のクラウドに経歴を尋ねられ、マーティラス家でメイドをしていたことを話すと、彼は少しだけ驚かれました。


 こちらの国でマーティラス家はあまり知られていないみたいでしたが、彼は巫女の護衛をしているという職業柄だからでしょうか?


「もちろん、知っている。公爵家で代々巫女――いや、あちらでは聖女というのだったな……。代々聖女の家系でかなりの権力を持った貴族であろう?」


「そのとおりです。私はその家の使用人の家系に生まれました。今はこのとおり国家追放を受けた身です。もしかして、そのような罪人は巫女様の護衛にはなれませんか?」


 過去を誤魔化すことは簡単です。しかし私にも意地があり、ここで過去について嘘をつくと今までの人生すべてを否定するように感じられたので、正直に話すことにしました。


 ですから、ここで合格が取り消されても後悔はありません。

 

「ふっ、私を見縊るなよ。これでも人を見る目は確かな方だ。私はあの場で合格よりも優先して受験者の治療を行った君の人格も含めて合格にしたのだ。合格は取り消さん。誰が何を言おうとな」


 クラウドは僅かに微笑みながら、私の肩を叩きました。

 人を見る目、ですか。そんなもので、簡単に人を信じるなんてどうかしてます。

 私は主君に裏切られました。普段の言動はさておき、少しくらい感謝されていると思っていたのですからおめでたい頭です。


 見る目はなかったんでしょうね……。


「それが原因で後悔するかもしれませんよ?」


「なぁに。その時はそのときだ。私が責任を取れば済む話。頼りにしてるぞ、同僚!」


 私が素直じゃない言動をとってもクラウドは私を信じるという態度を崩しません。

 彼にバシンと力強く叩かれた背中が熱いです。


「護衛隊には宿舎が用意されている。案内をさせよう。――イリーナ! こっちに来なさい」


「はいはーい。久しぶりの新人ちゃんねー。クラウドくん」


 クラウドがイリーナという名前を呼ぶと、赤毛のツインテールでスタイルの良い女性が、どこからともなく風のようなスピードで現れました。


 なるほど。身のこなしから察するに、こちらのイリーナという女性……かなりの実力者ですね。


「イリーナは私と同期の古株だ。分からないことがあったら遠慮なく聞くが良い」


「エミリアちゃんだっけ? あたしはイリーナ・ツェフェルン。護衛隊の副隊長にして、頼りになる女、ナンバーワンよ。よろしく」


 イリーナは人懐っこい笑顔を向けながら自己紹介して私に手を差し出しました。

 クラウドと同期ということは似たような年齢なのでしょうか。彼よりも十くらい若く見えますが。


「エミリア・ネルシュタインです。色々とご指導ご鞭撻よろしくお願いします」


「んもー、固い子ねぇ。ウチは貴族の集まりなんかじゃないんだから、もっとフレンドリーで軽い感じでいいのよ」


「いや、君は少々軽すぎるような気がするが……」


「むぅー。そうかしら?」


 ゆるい雰囲気のイリーナと硬派な感じのクラウド……私は普通に接してるつもりですが、固く見えるみたいですね。


「じゃ、さっそく巫女様の護衛隊の宿舎に案内するわね。私に付いてきて〜」


 音もなく、ヒュンと消えるようにイリーナは動きだす。いつの間にか、城壁を飛び越えて行きました。  


 では、付いていきましょう。私は彼女の後を追いかけていきました。


「あら、クラウドくんからは振り切るくらいの気持ちで急げって言われてたのに……」

「これでも体を動かすのは得意なのです。マーティラス家のメイドはあらゆることに迅速に対応しなくてはなりませんから」

「わぉ! メイドってハードワークなのね〜」


 どうやら、最終試験はイリーナについて行くことみたいです。


 こうして、私は無事に宿舎に辿り着きました。

 巫女の護衛。これまでの仕事が役に立てばよいのですが。

 少しだけ不安です。ですが、明日から頑張ります。

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