7話
宿屋を出ると、予想通り早速雨が降ってきました。さすがわたし。
二階のベランダで弟さんがせっせと洗濯物を取り込んでいる様子を確認してから、この街の葬儀屋を目指して歩を進めます。
後で気づいたことですが、ここは街中だし傘くらい借りればよかったですね。旅路では雨具なんか使わないからすっかり頭から抜け落ちていました。慣れって怖い。
魔力板は使いません。街中を移動するときは他の人が邪魔で危険だからです。
もともと人が少なかったし、今は雨が降ってきてさらに人通りも減っていますが、全くいないわけではありませんからね。安全第一。
大通りを進み、中央広場へ。大体の街ではどこになにがあるか記された看板が立っています。経験則です。
ここも例外ではありませんでした。
「──。やはり隅っこですね。骨が折れそうです」
ボヤいても距離が短くなるわけではありませんから、場所を確認したわたしは移動を再開。
この街をぐるりと囲む壁際までやってきました。祈るように手を組んだ看板が葬儀屋の証です。
「ここですね」
看板はすぐに見つかりました。
近くの外壁には小さいですが外へ通じる門があり、恐らくその先に墓地があるのでしょう。
お墓参りをする人は大変そう。移動が。
外に墓地があるということは、この街の外壁は良い意味で機能していないようですね。
わたしは静かに葬儀屋の扉を開きます。
すぐ目の前に疲れた表情を浮かべた受付の女性がいて、目が合いました。どうも。
またおばけだと勘違いされてしまうのでしょうか。
「白い髪、白い肌、白い旅装束……まさかあなたは……!」
わたしの容姿を確認した受付の女性は驚いたような表情を浮かべます。
最初にも言いましたが、旅する葬儀屋であるわたしはその界隈では結構有名です。やっぱり同業者なだけあって、わたしのことをおばけと勘違いするようなことはありませんでした。一安心。
「そのまさかです。世界一の美少女でもある、超優秀なホワイトさんですよ」
どや。
「チッ」
受付の女性は驚いたような表情から一変。わたしに向かって隠そうともせずに顔を顰めて堂々と舌打ちを放ちました。
では、そろそろ白状しましょう。ホワイトだけに。
確かにわたしはその界隈では有名です。
──ただし、悪い意味で。




