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6話

 ──全身の皮が剥がされた人間の死体が見つかったんです。昨日で五人目。


 門番さんは小声でそう教えてくださいました。


「……やはり放ってはおけませんね」

「え?」

「──いえ、なんでも。ところでそろそろ雨が降りそうですよ。洗濯物取り込んでおいたほうがいいと思います」


 雨との付き合いは長いですから、わたしほどになれば降るか降らないか予想するくらいは容易いです。

 これでも結構当たるんですよ? どや。


「うーんと……確かに雲行き怪しいね。わかった、取り込んでおく。コレありがとう! また見せてもらってもいい?」

「構いませんよ」

「ありがとう! それじゃまたあとでねおねーさん!」


 魔力板マギボードを返してもらうと、弟さんは駆け足で洗濯物を取り込みに行きました。


「さて」


 早速行動に移すとしましょう。

 なにをどうする、ですか?

 もちろん、この街で発生している怪事件を追って、あわよくば解決するのです。

 命を落とした人を正しく弔い、あの世へ旅立てるようにする存在。それが葬儀屋。

 そして、その旅路の邪魔をする者を排除するのも、葬儀屋わたしの使命と考えます。

 不可解な死は誰も望んでなどいません。人は天寿を全うすべきなのです。

 そのために、まずわたしはこの街の葬儀屋に顔を出すことにしました。死んだ人間はここに集まってくるからですね。

 死体から得られる犯人の情報は意外と多いです。五人目の犠牲者が昨日なら、まだ弔ってはいないはず。急ぎましょう。

 一階へ降りると、お兄さんが猫柄のエプロンをつけて鍋を一定のリズムでかき回していました。ひと回しするごとに香ばしいスパイスの香りが辺り一面に広がって、思わず頬が緩んでしまいます。


「エプロン似合ってますね。可愛いですよ。わたしの次くらいに」

「チッ……ほっとけ。これしかないんだ、客がいなかったらつけねぇよ」


 相変わらずお兄さんの態度はツンツンしています。宿屋の態度としては褒められたものではありませんが、最初に言った通り雨風が凌げて食べられる物が出てくれば文句はありません。なにより安いし。


「少し出てきます。夕飯までには戻ります」

「今からか? 雨降りそうだぞ?」

「大丈夫です。慣れてます」

「慣れてるって……」

「知っていますか? 雨も滴るいい女とは、わたしから生まれた言葉なんですよ?」


 どや。

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