23話
咄嗟に悪魔の首の向きを変えていなかったらこの世のものとは思えない汚物を被るところでした。あぶないあぶない。
「おぶぇ……ぉえ!」
「なにを見たか知らないけど、言ったろ? 『後悔するぞ』って。ざまぁ」
もがき苦しむ悪魔を冷ややかな目で見つめながら吐き捨ててやりました。どや。
首を戻すと、悪魔は息を荒げて、揺れる瞳には明確な恐怖の色。
「君は……もはや人間じゃない。悪魔より悪魔だ!」
悪魔がそんなことを言って、情けなくならないのでしょうか? ハッ、と鼻で笑い飛ばしてやりました。
「お前も、もはや悪魔じゃない。人間に染まり過ぎたな」
死に怯え、震える姿は人間と重なります。
それでも、悪魔は悪魔。そしてわたしはれっきとした人間です。
人々の脅威になる悪魔は排除する。脅威に晒されて落とした命を供養する。
それが葬儀屋。それがわたし。
「言い残したことはあるか? 最期に一言だけお前の言葉を聞いてやる。感謝しろ」
魔力を高め、悪魔の顔面を鷲掴む右手に集中させます。
悪魔の体が白く変色してきました。
「それはありがたいね。だったr──」
──ボキン。
硬いものが折れるような音を響かせて、悪魔の頭部を首から外しました。
「一言って言っただろ」
血が一切こぼれることはなく、断面には白く霜が降りています。
凍りついた頭部を足元に落として、ぐしゃあ。踏み潰しました。地面に汚い花が咲き誇ったようでした。
立ったままの首から下を蹴り倒して、ぐしゃあ。右肩を踏みつけて外しました。ぐしゃあ。左肩を踏みつけて外しました。ぐしゃあ。左脚を踏みつけて外しました。ぐしゃあ。右脚を踏みつけて外しました。
「アッハハ」
ぐしゃあ。ぐしゃあ。ぐしゃあ。ぐしゃあ。ぐしゃあ。ぐしゃあ。ぐしゃあ。ぐしゃあ。ぐしゃあ。ぐしゃあ。ぐしゃあ。ぐしゃあ。ぐしゃあ。ぐしゃあ。
癇癪を起こした陶芸家が自身の作品を破壊するように、悪魔はバラバラになって無数の肉片と化しました。
わたしは清々しい表情を浮かべます。
「あースッキリした。圧殺とか爆殺とか焼殺とか、殺した気がしないから」
それからわたしは肉片を蹴って吐瀉物のところへ一箇所に集めてから、圧縮して綺麗にお掃除。
これでもう、この街は安全でしょう。以前の活気を取り戻すはずです。
「さてと。では、残りの仕事を片付けましょうか。──葬儀屋の大切な仕事を」
こんな死神を招き入れてくれた、宿屋一家の弔いを。
──終わり。
もちろんあと1話だけ続くんじゃよ。




