2話
「し、失礼しました。ちょっと似ていたのでてっきりおばけかと」
「似ていた?」
「こちらの話です! 申し訳ない」
「いえ、慣れているので」
不本意ではありますが。
「なるほど魔力板ですか、どおりで浮いていたわけだ」
門番さんは納得したように頷いてわたしの白い魔力板を見つめて言いました。
その熱い視線が少し気になったので尋ねてみます。
「魔力板が珍しいのですか?」
実際、魔力板は珍しい部類には入りますが、かといって全く見ないわけではありません。
少々操作が難しいのと、わたしのように旅の脚にしている人が多いので、街中で目撃することが少ないからだとわたしは思っています。本当のところは知りません。
「仕事柄目にする機会は多いのですが、ここまで乗りこなしている方を見たのは初めてなもので」
「そうでしょうそうでしょう。わたしほどの乗り手は世界広しと言えどもわたしだけです」
言い切ってやりました。どや。
門番さんは「それに」と続けます。
「最近息子が興味を示していまして、それまではただの乗り物としか思っていなかったのですが、改めて見てみると不思議なものだなぁと」
魔力を感じられない一般人からしたら浮いて見えるのは不思議に思えるでしょうね。
「ところで門番さん。首に変な跡がついていますが、どうされたのですか?」
首をぐるりと一周するように線が走っています。普通はそんな跡はつきませんよね。
ちょっと気になったので聞いてみちゃいました。
門番さんは首をさすりながら苦笑いで教えてくれました。さする手首にも同じような痕が残っています。
「ああ、これは訓練のときについたものです。試作品の防具が首に負担がかかるものでして……」
「それは難儀ですね」
「関節はどうしても防御が薄くなってしまいますから、その問題を解決しようという試みのようです。っと、無駄話が過ぎましたね、申し訳ない」
門番さんは軽く頭を下げてから「ンンッ」と咳払いをして仕事モードへと切り替わりました。
「ここへ来た目的は?」
「仕事を探しに」
「『葬儀屋』と言っていましたね。仕事を探しに、とはつまり……そういうことですか」
「そういうことです」
良い反応はされませんが、この仕事に誇りを持っているので嘘はつきません。
ですが、返ってきた反応はわたしの予想外のものでした。良くも悪くも。
「ならばいいタイミングだったかもしれません」
「いいタイミング、とは」
この話の流れで『いいタイミング』だと、死人が大量発生しているように聞こえてしまいますが。
「最近おかしな事件が発生しているんです」
「それはどのような」
門番さんは声を潜め、間を開けてから言いました。
「全身の皮が剥がされた人間の死体が見つかったんです。昨日で五人目」
「────」
……それはそれは。
穏やかではありませんね。




