Letter:かけがえのない君へ
こんな手紙を君に渡すのは、たぶん今日が初めてかな?
わたしたちは、昔からよく手紙を交換していたよね。
好きな男の子をこっそり教えあうのも、面白かった漫画やテレビを伝えるのも、全部手紙だったね。
今、思い出すと懐かしいなぁ。
君からもらった手紙、わたしの引き出しの中に全部取っといて時々見返してるよ(笑)
そんなこと言ったら、君は顔を真っ赤にして捨てて!って言うかな?
さてさて、君の黒歴史は置いといて。
ここからは、わたしが言いたいことを勝手に言っていきます!(手紙だもん。許してね♡)
ではまず初めに、君に伝えなければならないことがあります。
余命宣告を受けました。
もうながくはないようです。
......驚いた?
きっと君はすごく驚いたろうし、怒ってると思う。
ごめん。
もっとはやく言えばよかったよね。
でも、君との時間はどうしても余命なんて関係ない、病気であることを忘れた、ただの友達どうしの時間にしたかったんだ。
だから、今まで知らせなかったのはわたしのひどいわがままです。
ごめんなさい。
余命に関しては、随分前から覚悟していました。
幼い頃から入退院を繰り返すわたしは、子供ながらにたぶんながく生きられないだろうと思っていたの。
宣告を聞いたとき、お父さんとお母さんはすごく泣いていた。
わたしはもちろんショックで足の先からすーって冷たくなるような気がした。でもそれと同時に心の片隅で「そうだろうな」と納得する自分もいたんだ。
今は日記を書いてます。
わたしが落ち着く用と、わたしが死んだ後お父さんとお母さんが読んでくすって笑える用。
だから、わたしのことは大丈夫。
でもね。最近、心配してる子がいます。
その子はいつも明るくて、元気で、人を楽しませるのがとっても大好きな子なの。
人から何を言われても、笑って冗談を返せるすごい子。
でも、本当は心の中で傷ついてる繊細な子。
心配なんだ。
学校が新しくなって、ピカピカの制服に身を包んだその子は、休日になるとお見舞いに来て、わたしに面白い話をしてくれる。
授業中居眠りして先生に空手チョップされた話とか、音楽の授業で1人だけリコーダーの音を思いっきり外しちゃった話とか。
病室の窓から登校する子たちを見つめることしかできないわたしにとって、その子の話は楽しみで仕方なかった。
でも、ある日気付いたんだ。
学校の話をするたびに、その子が辛そうに笑うようになったこと。
少しずつ疲れたような顔になっていたこと。
......君は「何もないよー!」と手を振って笑ってた。
だけど、夏の暑い日に長袖を着た君はひどく苦しそうに見えました。
ごめんね。
わたしは君の気持ちを完璧に分かってるわけじゃありません。もしかしたら余計なお節介かもしれないけど言います。
君を傷つける場所は、君のいるべき場所じゃありません。
君は優しい。
それを認めて君を尊重しながら接してくれる人もいれば、優しさに胡座をかいて自分の劣等感を埋めたいがために、君を押しつぶす人もいます。
わざと心無い言葉を言って、君をはけ口に利用する人もいます。
わたしは......徐々に追い詰められて、顔色が悪くなって、寂しそうに笑う君の姿なんて見たくない......
君には、君には心から笑っていてほしいんです。
だから、言います。
お願いだから、ひどい人たちから離れて、優しい人たちの元へ逃げてください。
もし、いないならいっそのこと学校を休んでください。
信頼できる人に話して、とにかく君の心を守ってください。
君一人には、言い表せないほど素晴らしい価値があります!
もっともっともぉっっと!自分をいたわって、優しくしてあげてください。
(そうだ!豆知識を一つ。鏡の前に立って、自分の顔を見ながら「かわいいね!」とか「天才だね!」って褒めると、脳は誰に言われたか認識できないから元気になるらしいよ(°○°)いつもの豆知識でした!)
もう一つ。
以前、君は漫画を描きたいんだ。と言っていましたね。人を勇気づけられる漫画。
照れくさそうに、でも嬉しそうに目を輝かせながら語る君の姿はとても素敵でした。
時々見せてくれる落書き帳の4コマ漫画も、君らしくてとっても面白かった。
でもいつしか君は君の絵を否定するようになってしまった。
「漫画家なんてわたしには無理だよ」
そう言う君はいつもと変わらないように見えた。だけど、何か表現したいものがあって、でもモヤモヤした心の塊を吐き出せずもがいているようにも見えたよ。
......好き勝手なこと言ってるよね、わたし(汗)
うーん、これ以上書くと君が飽きちゃうかもしれないからまとめます!(笑)
君は君の好きなことを突きつめてください。
たぶん他の人のバカにした顔を見たり、ため息を耳にしたりすることが多くあると思います。
ですが!言わせてください。
目はただ風景を映す器官です。
耳はただ振動を伝達するだけの器官です。
君の水晶体に何が映ろうと、君の鼓膜がどんな音を伝えようと、君の内に燃える炎は誰も消せやしません。
君自身が水をかけない限り燃えつづけます。
昔から燃やしつづけてきたその思いは。
目を輝かせた。
聞くまいとおさえた両手を静かに外したその思いは。
消さずにとっといてください。
どれだけ小さな炎でも、糸より細い炎でも燃えてることには変わりありませんから!
......さて!わたしが言いたいことはこれだけです。
ここまで読んでくれてありがとう!
わたしは、君とおばあちゃんになるまで生きることは出来ないけど。
たとえ、幽霊(!?)になっても君をずっとずっとずぅぅぅっと応援しつづけます!
To:大好きなわたしの親友へ
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