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警視庁交通課ガードレール係  作者: 津辻真咲
8/9

バイク便


ガシャンっとバイク便のバイクが倒れた。しかし、大型トラックは気付かないのか左折をし、そのまま立ち去っていった。


――暇だぁ!

藍花は心の中で叫ぶ。羽紀はそれを見て、呆れた。

ピピピッと電子音がした。槻真冬からの抽出メールだ。

『昨夜のバイク便事故について』

――Nooo!!

藍花は変顔で嫌がる。しかし、羽紀は容赦ない。

「諦めろ」

藍花はぴしゃりとそう言われた。

「そうだね」

藍花はそれだけしか、言えなかった。そして、二人は抽出捜査に出かけるのであった。



ゴォォォッとタイヤが回る。ここは走る警察車両内。運転は藍花だ。

「槻」

藍花がそう言うと、槻真冬は姿を現した。

「お待ちしておりました。早速ですが、バイク便のバイクに搭載されていたドライブレコーダーの映像データを探してほしいのです」

「え!? まさか、紛失したの!?」

 藍花は驚き、尋ね返す。

「はい」

「ということは内部犯?」

「そうなります」

「なるほどー」



二人は所轄へ着いた。

「バイク便のドライブレコーダーは誰が管理していましたか?」

 藍花は、担当刑事の弥表やおもてに尋ねた。

那棗ななつめです」

「そうですか」

「紛失の件ですか?」

 弥表はそう聞いて来た。

「え?」

「確か本部の人工知能さんが抽出捜査をしているのですよね?」

「えぇ」

「実はというと、本部の鑑識さんが昨日来て、ドライブレコーダーの映像を見せてほしいと……」

「え!? そうなんですか!?」

「はい」

「誰だったんですか!?」

「えーっとそれが、本庁の人だったので、名前まで聞かずに案内してしまって……」

「え!?」

「そして、そのまま紛失ということに……」

――そんな!

二人は何も収穫もなく、そのまま帰った。



「こんにちは」

槻真冬は立体映像で姿を現す。

「こちらで他の刑事にも映像の捜索をさせたのですが、犯人の特定には至りませんでした」

「そうですか」

「ちなみに、昨夜のバイク便事故のひき逃げ犯、捜査一課が連行して来たようですよ」

「え!?」

「バイクに残っていた擦れた塗料が証拠だそうです」

「へぇー」



ガードレール係、自席。二人はそこにいる。

「事件解決かな?」

「だといいな」

「うん」



夕方。外はきれいな夕日が見えていた。

「暇だぁ。今日は一度も出動なし」

 藍花は伸びをする。

「平和な証拠だろ?」

「まぁね」

 藍花は笑顔で照れるように答えた。

「帰ろう」

「うん」



廊下。

「あ! 園馬さん」

「お。珍しいな、庁内で会うなんて」

「そうですね」

「実はバイク便事故の被疑者にアリバイがあってな」

「え。そうなんですか?」

「あぁ。事故を起こしたとされる現場から一時間かかる場所のN-システムに犯行時刻、その被疑者の大型トラックが映っていてな。それで任意の取り調べも終了だ」

「そっかぁ。アリバイが……。ん?」

「どうした?」

「そのN-システムの映像って編集された形跡ってあった?」

「え?」

「バイク便のドライブレコーダーが紛失したのは知ってるでしょ?」

「あぁ」

「調べたら内部犯の可能性があるの」

「何!?」

「それで、そのN-システムの件も内部に共犯者がいれば、出来ることでしょう?」

「なるほど、確かに。すぐに調べる! ありがとう」

園馬進は小走りで去って行った。


次の日。

「おはようございます」

「はい、おはよう」

課長の真狩砂雪が挨拶をする。すると、槻真冬が姿を現した。

「ガードレール係、緊急出動をお願いします」

「え?」

「バイク便事故の被疑者が逃走しました」

「はい!」

藍花と羽紀の二人は現場へ向かった。


ゴォォォ。大型トラックが暴走する。

――止めれるのか!?

捜査一課の刑事たちが不安になっていた。しかし、ガードレール係はひるまない。

藍花は運転席のボタンを押す。強制停止用の鎖が飛び出し、逃走車両の後方のタイヤに絡まった。そして、車両はそのまま停止した。


『左折の時に、大型トラックの死角にいたバイク便に気付かず、巻き込んでしまった』

犯人はそう供述している。しかし、槻真冬はその報告に納得していなかった。事故直前に映っていたN-システムの映像には、大型トラックのライトはついていなかった。

「無灯火!?」

藍花は驚く。

「どういうことだ?」

 羽紀も尋ねる。

「事故現場から手前に五キロメートルの所にある自動販売機を映している防犯カメラにバイク便の運転手と容疑者の二人が揉めている映像が映っていた。これは、所轄の刑事に調べてもらいました」

「何!?」

「これは殺人事件です」

槻真冬ははっきりと言った。

「分かった、その線で取り調べる」

園馬進は取調室に戻っていった。

「ちなみに共犯者は分かったのですか?」

「えぇ、本庁の鑑識課の人物でした。容疑者に多額の借金があったようです」

「そっか」

槻真冬は消えていった。


今回の事故は殺人事件だった。容疑者の男性は、被害者の男性と自動販売機のところで揉め、その後、ライトを消してバイク便を追いかけて来たのだった。

左折時の巻き込み事故に見せかけて、わざと接触し、ひいて行ったのだった。


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