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警視庁交通課ガードレール係  作者: 津辻真咲
7/9

道警


「来たぁ! 北海道!」

藍花は、わーいとジャンプをする。

――おいおい。

「俺たちは研修に来たんだぞ?」

羽紀は隣で呆れた。

二人は、北海道で導入されているペースカー制度の見学にきたのだった。

「こんにちはー!」

二人は北海道警察の本部に到着した。

「お待ちしておりました。担当の横山香奈よこやま かなです。よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

藍花と羽紀は資料をもらった。


ペースカー制度とはペースカーを一定の速度で街中を走らせ、速度超過になるのを防ぐ制度である。ペースカーがあるかわりに、信号がなくペースカーが停止したら、後続車は停止しなければならない。ペースカーは完全なる無人車両で人工知能が管理をしている。


ピー。すると、電子音が鳴った。

「道警から各局。ひき逃げ事故が発生。臨場せよ」

被害者は70代の女性。ペースカー制度があるのにも関わらず、ひき逃げ事故が起こってしまった。

「私たちは臨場しますが、一緒に来ますか?」

「はい!」

藍花は目を輝かせる。

「行こう」

「あぁ」



「ここが現場です」

鑑識の彼女、横山香奈は現場へ案内してくれた。

「私は現場鑑識へ行ってきます」

「はい」

彼女は鑑識作業へ向かった。

「どうする?」

 藍花は羽紀の方を向いて、尋ねた。

「現場を見て回ろう」

「そうだね」


一通り見て回ったが、ひき逃げだということしか、二人には分からなかった。

「鑑識の情報を待ったほうがいいかも」

交通課ガードレール係の二人には現場は大変なようだ。



道警。臨場も終わり、横山香奈が返って来た。

「どうでした?」

藍花は尋ねる。

「どうやら、事故車はペースカーのようです」

「え!?」

 藍花は驚く。

「現場に落ちていた破片からそう判断しました」

「なんと!?」

「しかし、事故を起こしたはずのペースカーが現場にないんです」

「え? なぜ?」

「分かりません。ペースカーのドライブレコーダーの映像も道警に送られてきていないみたいで。今、原因を確認しているところです」

「分かりました」

二人は彼女と別れ、別行動をとることとなった。それは、抽出捜査だった。

「何でいるの?」

 藍花は不服そうに尋ねる。

「私も見学です。私が来ないとは誰も言っていません」

「大丈夫なの? 警視庁の本部は?」

「大丈夫です。私は超個体状態でも作業ができます」

「はいはい」

藍花は少し呆れた。

「では、私たちはいなくなったペースカーの行方を捜しましょう」

「そうだな」

 羽紀は槻真冬の言葉に頷いた。



二人は鑑識課へ向かった。

「再び、すみません」

藍花は横山香奈へ謝る。

「いいえ、大丈夫ですよ。でも、大変ですね。抽出捜査なんて」

「え?」

「だって、東京の警視庁にはあるのでしょう? 人工知能の補佐官が指揮する包囲網が」

「え、えぇ。まぁ」

「かっこいいなぁ。さすがです」

 横山香奈は目を輝かせた。

「ありがとう」

 藍花も笑顔で答えた。

「あ、そう言えば、N-システムですね? 今、検索します」

横山香奈は鑑識作業を始めた。

ピ。電子音が鳴った。

「これですね」

藍花と羽紀の二人は画面をのぞき込む。

「これが事故を起こす前に取られたN-システムの画像です」

「事故後はありますか?」

ピピ。横山香奈が操作する。

「ないようです」

「ちなみにGPSはどうなってる?」

 今度は羽紀が尋ねる。

「それが電源がOFFなのか、事故の衝撃で破損してしまったかのどちらかで、反応がないんです」

「そうか、N-システムで探すしかないのか」

「あ、でも他のペースカーは正常です」

「ん?」

 藍花は首を傾げた。

「他のペースカーのドライブレコーダーの画像に何か映っていないかどうか確かめてみませんか?」

「そうか、確かに!」

槻真冬が現れる。

「話は聞かせてもらいました」

「え!? この方があの人工知能の!?」

 横山香奈は突然のことに慌てる。

「えぇ、槻真冬と申します」

「えー!?」

横山香奈は目を輝かす。

「データを私に送ってください」

「え?」

「データの確認は私が短時間で処理しますので」

「あぁ、そうですよね。分かりました」

ピ。電子音がした。

「どうでしたか? 該当する映像はありましたか?」

 横山香奈は槻真冬へ尋ねた。

「ないですね」

「そうですか」

 彼女は少し、残念がる。すると、槻真冬は淡々と話す。

「こうなったら、ローラー捜査をするしかないですね」

「ローラー捜査?」

「事故現場から次のN-システムがある各所まで」

「そうですね。それがいいと思います」

「では、早速、担当の刑事たちに伝達を」

「はい」



「ペースカー発見」

――なんと!

無線でその情報が入って来た。そして。

「南へ逃走中。応援を!」

続けて、その応援要請も聞こえて来た。

「どうする!?」

 藍花は羽紀に尋ねる。すると。

「追いかけよう」

 羽紀はそう答えた。

「でも、強制停止用の車両が!」

「大丈夫です。昔、使われてたものがあります」

横山香奈はそう言うと、藍花と羽紀の二人をその車両のある場所へ案内した。

「行こう」



ゴォォォ。エンジンとタイヤがうなる。

――どこだ?

藍花は神経を集中させる。

――あれは!

「見えた! 行くよ!」

「あぁ」

藍花はスピードを上げた。どんどんと逃走車両に近づいて行く。

強制停止圏内へ入った。そして、藍花は運転席のボタンを押した。

強制停止用の鎖が前方の車両のタイヤへ絡みつく。それにより、逃走車両は停止した。


バタンッ、バタンッとドアが開き、その後、閉める音が二回聞こえた。道警の捜査一課の刑事たちだった。

彼らは、逃走車両に近づき、それの運転席側のドアを開けた。中からは、今回の事件の犯人が出て来た。そして、彼はそのまま連行された。


今回の事件の犯人は、四十代の男性だった。どうやら、ペースカーを追い越そうとして衝突し、そのままペースカーを押し出すような形で、被害者をひいてしまったのだった。

ペースカーは少し進んだところで放置して、自身の車両で逃走していたようだ。


「今回はありがとうございました」

藍花は礼を言い、頭を下げた。

「いいえ。こちらこそ、貴重な体験をさせてもらいました。ありがとうございます」

担当の横山香奈も頭を下げた。

「君はとても優秀でしたよ?」

「え?」

横山香奈が顔を上げると、そこには槻真冬の姿があった。立体映像で姿を現したのだった。

「そう言ってもらえると、とても嬉しいです」

横山香奈は笑顔になった。

「それでは」

藍花は新幹線の車両に乗り込むと、横山香奈へ手を振った。彼女も手を振り返す。二人は笑顔だ。

――また、会えるといいな。

藍花はそう思った。


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