表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

会話

目が覚めたら見慣れた天井で、自分の部屋だとゆっくりと認識した。

何か、妙な夢を見た気がする。全裸のイケメンだ。私は欲求不満なのだろうか…。おかしい。そんな筈は…。いや、でも、夢は自身の真相心理だ。え、私、欲求不満…?

「脈拍も体温も良好。目覚めてよかった」 「…………」

あかん。私はまだ夢を見ている。背後イケメンが私を覗き込んでいる。何て欲求不満なんだ!愚か者めが!

「大丈夫…?」

ぐるぐる思考を巡らせて難しい顔をしていたのか、彼は心配そうだ。いや、そんな事を言っている場合じゃない。目覚めろ自分!起きたら、ハッピーでフリーダムなウィークが始まるじゃないか!!

ばちん!

「本当に大丈夫…?」

夢じゃない。頬が痛いし、何より彼の視線も痛い。

「……現実です?」

「まあ、そうだね。現実」

にっこりと微笑む彼の何と麗しい事だろう。いや!そんな場合じゃない!惑わされるな!

「倒れてましたよね…?」

「うん。バッテリー切れ」

「…うん?」

「君に会いに来たんだけど、途中でバッテリーが切れたんだ」

「うん?」

 バッテリー切れとな。あ、比喩か。お腹へったとかその辺りの比喩だな!お腹が減って力が出ない!歩けない、倒れよう!よし、それだ!

「アンドロイドなんだ」

「ぱーどぅん?」

「pardon?うんと、俺はアンドロイドなんだ。政府が秘密裏に開発してて、大昔は人間だった気もするんだけど、そのへんは曖昧」

イケメンの告白についていけない。ぱーどぅん?なんて、よく殴られなかったと思うのにご丁寧に説明までしてくれた。ぱーどぅん?なんて同僚に言ったら間違いなく、ジト目で見られる。そして殴られる。いや、待て。今はあいつのことを考えている場合じゃない。どっかいけ!

「琥珀?」

「な、なぜ私の名前を…」

「会いに来たって言ったじゃないか」

あははと軽やかに笑うイケメンが眩しい。あれ、イケメンに誤魔化されているだけで、もしかして、ストーカー?ヤバイ人?

「20年前からずっと会いに来たかったんだ」

やばい、ほんまもんだ。20年前なんて7歳なんですけど。照れ笑いもイケメンだけど、この人ヤバイ人だ!そしてこのイケメンの年齢不詳ときたら!

「因みに今後の予定は…?」

「予定?そうだなぁ、琥珀にも会えて充電できたし――」

「いや、お前帰るところないだろ」

「あ、空。追いかけてきたの?」

「だれ!?」

いつの間にか背後イケメンの背後にまた別なイケメンが!なんだか、背後背後面倒だな!とにかく、我が家に知らないイケメンが!

「琥珀に俺達が政府のアンドロイドで、大昔は人間ってさっき言っただろ?」

「うん」

あれ、当たり前のように話が進んでる。というか、その話のときにはもう家に居たのこの人。ヤバイ人の知り合いはヤバイ人なの?

「殺されるぞ?」

「はあ!?なんで!」

「俺達は国家機密。しかも、こいつは第一号。GPS引きちぎって、脱走してる」

「あれはさすがに痛かったよ。でも、琥珀に会うためだもんね」

話についていけない。国家機密とかアンドロイドとか、殺されるとか。分からないことばっかりなのに、なんで殺されないといけないの。

「あ、貴方がいるのはバレてるです…?」

「俺?俺はGPSついてないから。そういう仕様」

「あ、そうですか…」

どんな仕様だ。というかGPSって、人間につけるものじゃなくない?あ、アンドロイドだからそういうものなのか?えー、人権は?あ、アンドロイド権?

「こーはーくー」

「はっ!ご、ごめんなさい…」

「ごめんね?混乱させているよね?」

「え、あー、まぁ…正直」

考えが飛びまくってたところを、現実に引き戻された。さすか、イケメンは効果がでかい。でも、可愛く小首を傾げられて、照れと戸惑いが半端ない。

「でも、ごめんついでで悪いけど、ここに住まわせてくれる?」

「俺も」

「えー、空は別にいいだろ?帰りなよ」

「お前が居ないのに帰ってどうする」

「そういうところだぞ」

はぁと、みたいな語尾の上がり方に、目眩がした。イケメンなのだ、二人とも。イケメンなのだ!大事なことなので二回言った。

「か、家族が旅行の間だけなら…」

もう思考がショート寸前で、声が震えてしまう。きょとんとした顔でこちらを見たイケメン達に、また目眩を感じた。

「琥珀!」

「ひっ!?」

「悪いな」

悪いと思うなら帰ってほしいと声に出なかったのは奇跡だ。背後イケメンに抱きつかれて、言葉が出なかったこともあるけれど。

「でもさ…」

「はい?」

急に声が低くなった背後イケメンが、何故か真上に居た。視界いっぱいに。

「見知らぬ男を安易に家に住まわせるのは感心しない」

「え、え…?」

「俺、琥珀に会いに来たって言ったよな?危機感もてよ」

耳元で囁かれる言葉の威力。人懐っこい先程とは違う、しっかりとした男の声。イケメン死しそう。

「あ、あの…!」

心臓の音がばくばく煩くて、臓器が口から出るんじゃないかってくらい苦しくて、イケメンの胸を押すけど、びくともしなくて。少し顔をあげたイケメンは、唇をぺろりと舐めて、蕩けた目で私を見ている。

「そんな力じゃ、俺は退かない。それに、その顔凄く唆られる」

「や、ぁ…」

首筋を舐められただけなのに、自分でも信じられない甘い声が出て、顔が熱い。

「かわいいなあ、琥珀は」

満足げな声は、耳元でまた囁く。思考がショートするどころか、融けてしまいそう。

「いい加減にしろ」

「いったいなぁ!」

がつん、と固い音と同時に背後イケメンが上から退いた。正確には、退かされた。もう一人のイケメンによって。存在忘れてた。恥ずかしい、死にたい。お嫁に行けない。

「盛るな、零一」

「盛るよ!20年待ったんだよ!?」

「落ち着け、琥珀を見ろ」

「可愛いよ!」

「もう、勘弁してください…」

それから暫くの間、背後イケメンが落ち着くまで、もう一人のイケメンとの意味のわからない問答が続いた。可愛いとか、好きだとかなんとかかんとか…恥ずかしくて死にそうでした。

後に背後イケメンは、零一。もう一人のイケメンは、空と自己紹介されたが、顔面偏差値高すぎて、目眩しかしませんでした。一緒に住むとか、正直死刑宣告じゃないかと思いましたまる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ