ジャンヌ・ダルク
イメージはリュック・ベッソンの映画です。
あのミラ・ジョボビッチとダスティン・ホフマンとの良心との葛藤シーンに惚れてしまいつい書いてしまった物です。
私には聞こえる。
慈悲深き神の嘆きが。
そして主は仰せられた。
“汝こそが我が希望”と。
終わり無き戦いを私の手で終わらせよう。
その為なら戦によって家族を奪われた過去の悲しみも糧にして。
今までは美しく咲く野の花を手にしていたけど、
光ある安息の世を目指してこれからは華を捨て銀の剣に持ち替える。
私のこの汚れなき魂と肉体を銀の甲冑に包んで。
戦場はおぞましいまでに惨たらしく、
その光景は私の全感覚に入り込む。
焼ける血の臭いと焦げる肉の臭い。
鈍い音をたててぶつかり合う金属音。
まるで私に与えられし聖なる力を拒むかの様に燃え広がる炎の草原を馬に乗って駆け抜ける。
栄光ある勝利を信じて。
立ち塞がる高き壁をも私の怒号を轟かせて突破してみせる。
だって私は敬愛なる神に選ばれし者だから。
全能の主なる神に約束された者だから。
恵み深き神に祝福された者だから。
希望に於いて。
平和に於いて。
救世に於いて。
愛に於いて。
光に於いて。
――――――『正義に於いて』――――――
長き戦いを終わらせてこの世に再び神の祝福を。
そして今こそ勝利を告げる旗を天高く掲げよう。
天使達からの賛美に於いて。
私の完全なる清純に於いて―――――。
…しかしやがて信じていた者から裏切られ、
我が意志も祈りも何者にも届く事がなくなり…、
悲愴と絶望に打ちひしがれし時。
…最早答えを求め天を仰ぐ力もない…。
やがて私の閉じたる眼が朱と紅に染まりし時は、
私が信じ求め続けてきた主の眩いまでの輝きも、
永遠に失われるだろう…。
陽光である神がこの純真なまでの私を無情にも見捨てる事により、
その背を向けた事で地に落とした影の中で私は儚くもひっそりと、
惨めに朽ち果ててゆくのだから。
いや、
神が見捨てると言うよりも寧ろ、
その存在を信じて疑わなかったのに、
本当はそんなものは初めから…いはしなかった事に気付いてしまった時から…。
それは生粋なまでに信じていた者に於いて。
薄情なまでの情けなさに於いて。
確実たる厳格なうえでの現実に於いて。
信仰心を裏切られ冷淡なる虚無感での孤独な死に於いて。
『残酷なまでに朧さを増す卓越者のもとに』
――――――― 我が心に於いて ―――――――
この歴史的人物に対する思考は人それぞれだと思いますが、これが私個人印象強い彼女へのイメージですのでどうぞ御了承下さい。