1-1 【東條タケル】
俺は長いこと授業中にも関わらず寝てしまったようだ。いや、それでも教えて欲しい。先生、俺たちはなぜこんなところにいるのでしょうか?クラスメイト全員か騒然としていた。確かに俺たちは自分の椅子に座り机には自分の勉強道具が置いてある。しかし、辺り一面が.........「木」青々とした木々に囲まれていた森だった。さっきまでいたタイルの床なんてどこにもなくて床は、木々の根でゴツゴツとしていてところどころにコケや草が生えている。
「えっ、はっ?どういうこと!?」
そんなふうに馬鹿でかい声で叫び出した鈴風リンを始めにみんなが今の状況にそろそろ気づき始めた。
「え?ここどこ?」とカズト。
「俺、寝たからわかんねーよ」とソラ。
「あっ!僕も寝てた!」とハル。
「私も...寝てましたぁ...」と真野イチゴ。
「マジで!?私も寝てたわ」と滝沢カオル。
「なになに?どういうこと?」と月崎ミカ。
「嘘でしょ!?全員寝てたのかよ。」と再びカズト。
率先して騒ぎ出す派7人。
三条スズ、池坂ホシネ、神崎コウ、福野ハナ、近衛サトル、俺
黙って辺りを見渡す派6人。
藤谷マキ・藤谷サキ
隣の席どうしで手を取り合う双子派2人
今野カヤト、田島タケシ、時川レン、浅井リク、柏木ショウ
何が起こったのか状況を飲み込めず呆然とする派5人
真嶋ユキ、古泉シュウゴ、杉島タクト
黙って俯いている派3人
次第に黙っていた人も周りの人たちと慌て始め辺りはざわついてきた。
ドンドンドンドン
森の奥から鈍い音が聞こえた……と同時に全員の机の横にかけられたカバンからバイブ音が聞こえた。
「携帯か?」
誰かがそう呟くとみんながスマホを取り出した。液晶画面を見るとあの緑のメッセージアプリにメッセージが届いていた。グループ2-7に来ていたメッセージには
【ようこそ!本格過ぎるRPG《RPG2-7》へ!只今よりチュートリアルを始めるよ♪】
見覚えのないクリーム色の無地のアイコンからは、でる吹き出しにはそんな言葉が書かれている。は?ふざけたメッセージなのか?どういうことだ?そのメッセージにみんな理解出来ないでいたが、そんな呆然としている時間は長くは続かなかった。俺たちはさっきから大きくなっていたあの音を一瞬たりとも忘れてはいけなかったのだ。
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン
ドンドンドンドンドンドン
その鈍い音は、だんだんと速くなっていく。クラスの全員が机の下に隠れたり、その場から立って木々の隙間に隠れたり、その場にとりあえず立ったり、仲の良い友達に駆け寄ったり...その時
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン
ドンドンドンドンドン
俺はその目と合ってしまった。その鈍い音の音源と。
森の奥から除くその目は赤く光っていた。ギラギラとしたその目はどんどんとこちら側に近づいてくる。そしてそれがはっきりとみんなにも見えた。が、誰も声を上げなかった。声が上げれなかったのだ。赤い眼光のその獣は動物園で見たことがなかった。いや、世界中で探してもどこにもいないのだろう。なぜなら顔が2つあるのだ。真っ黒な毛並みに尖った爪、鋭利な歯が見える。その鋭利な歯が見える口からはヨダレが垂れている。その獣は雄叫びを上げながら俺たちの方へと走ってくる。
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン
そいつはまず最初に机にロックオンした。机の下に隠れてしまうと簡単に出ることは出来ない。避難訓練のときに誰もが経験したことがあるだろう。ましてや誰もが驚きと恐怖のあまりに動けない。獣は机の下に隠れたうちのクラスメイト、 真嶋ユキ に噛み付いた。一秒もしないうちに食いちぎった...。クラスメイトは、ただの食い散らかされた肉と化した。土と草しかなかった地面には、あっという間に鮮血の色で染まった。
「キャアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
そう誰かの叫び声に我に返った俺たちはその獣から逃げ出した。ぐしゃぐしゃと気味の悪い声を背中にして、必死に森の奥へ逃げ出す。まだ死にたくない。食われたくない。怖い。恐怖。冷や汗が止まらない。強く握りしめ必死に振っていた手には手汗がビッシャリ。何回もコケて地面に手をついて手は擦りむいて土がついて膝はヒリヒリとしていて…それでも俺は必死で前の友について行く。
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「あそこに洞穴があるぞ!」
そう言ったのはカズト。走り始めてどれくらいたったときだったの...こういうときもみんなを仕切ってくれるのか…なんて普段の俺ならカズトに感動していたかもしれないが、俺の思考回路は、とうの昔停止している。そして俺の横や後ろに続くクラスメイトたちはがむしゃらにカズトのあとに続いた。洞穴にみんなが駆け込んだ。無我夢中だった。
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