0-1 【三条スズ】
私の家は学校から約500mほど離れたところにある。いつも通り7:05に起き、枕元の眼鏡をかける。洗顔や朝食を済ませ、7:40に髪の毛を三つ編みに結ぶ。そして、家のドアを7:50分に開ける。するといつも通りちょうど2人が私の家の前に付いたところだった。
「おはよう。スズちゃん。」
落ち着いた口調で言ってきたのはホシネだ。
-池坂ホシネ-
私の親友の1人。私はこの子が本当の美女だと思う。いつも優しい。成績も凄く優秀だし、同じ部活の合唱部ではソプラノのパートリーダーもやっている。クラスでは特に目立っている訳では無いが、私は一分の男子がこの子を好意的な目で見ているのを知っている。
「おはよう。」
私が返すともう1人も、いつも通りの省エネ挨拶をしてくる。
「おっはぁ。今日も相変わらずの三つ編みだねぇ。」
-神崎コウ-
いつも気だるそうに見えるが、これが普通。私の親友の1人。クラスでも私がいうのもなんだが、目立たないほうだ。省エネで、クラスの中心的女子が言ってきたことに反論することはないが、私達のように親しい仲の人にはズバッと核心のついたことを言ってくる。
私達、3人は小学生からの仲だ。基本的にクラスの隅っこにいるような3人だが、それなりに楽しく学校生活を送っていると思っている。
私の家から徒歩4分。通っている高校につく。
下駄箱には朝練が終わった様子の2人がいた。
『おはよー!』
2人とも声を揃えてこちら側に挨拶をしてきた。
-藤谷 サキ·マキ-
ポニーテールの双子。サキの方は剣道を、マキの方は弓道をやっている。二人とも、それぞれ剣道、弓道の大会で何度も表彰台の上に立っている。両方ハキハキとしていて正義感が強い。中学校が同じなので、人見知りである私も気軽に話せる子たちだ。
「おはよう。サキちゃん、マキちゃん。」
私の一日は、ここまではいつも通りだった。
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こうして、私達5人は三階まで階段を上り右に曲がって3つめの教室2-7。私達は前ドアから入る。これにはしっかりとした理由がある。教室の後ろには私達が恐れる存在がいるのだ。滝沢カオルをはじめとする。4人の女子軍団。
-滝沢カオル-
クラスの中心人物。家がお金持ちらしい。そのせいか少々偉そうな態度で我儘まるでクラスの女王みたいな人。
-鈴風リン-
クラスの中心人物。昼休みによく自分で作ったお菓子を配り回っている。男子にばかり話しかけている。
-真野イチゴ-
金髪ツインテールの可愛い子。きゃるるんとしている(少々ぶりっ子?)ようだがこの子は何か闇がありそう。
-月崎ミカ-
黒髪ロングの女子。この四人の中では一番関わりやすく一年生の時も同じクラスで、その頃は時々話す中ではあった。前に少し男子が苦手なのか女子と話す時は明るくて男子の時は控えめになっちゃうと話していた。
とにかく、この四人は危険人物なのだ。もし何かしでかしたならいじめられるかもしれない。実際にいじめられて(とは言っても、滝沢カオルと鈴風リンの二人によるもの)不登校になった子がいるのだ。
-影山キョウカ-
大人しい子だが、ホシネの次に綺麗だと思う。いじめられた原因は当時滝沢カオルが好きだった氷宮ソラが彼女に好意を寄せていたかららしい。
保健委員である私は出席人数毎日記入しているので毎日この子の不登校を考えてしまう。私が保健委員になったのはいくつかの理由がある。一つは保健委員の仕事内容の一つ。授業中に体調不良者を保健室に引率すること。よく、体調を崩すコウが他の人と保健室までの行く道のりが辛いと頼まれたからだ。二つ目は私が将来学校の保健室の先生になりたいからだ。私は放課後に保健室に行き、部活で怪我をした人の処置や用具の補充を手伝っている。
こうしてそれぞれの席につくと、私の前の席にいるツインテールの女子が話しかけてきた。
-福野ハナ-
小柄で可愛らしい女の子。クラスでは栽培委員を務めている。彼女は「お花が好きだから♪」と言っていたが半分は毎朝水やりをするという仕事の面倒くささからあの四人組に押し付けられたのではないだろうか。
「おはよう、スズちゃん。あのさ、絆創膏持ってない?朝水やりしてたら薔薇の棘で切っちゃって」
そう言って痛々しい左人差し指を見せてきた。彼女は、何事にも真面目にしっかりと取り組むところがいいと思う。近所の小さい子を見ているような気持ちになり心の底から彼女を応援したくなる。私はカバンからポーチを取り出し、絆創膏を出した。そして彼女の人差し指に貼ってあげた。
「はい、これで大丈夫だよ。」
「ありがとー!スズちゃんの女子力の高さは憧れちゃうなぁ」
そう言って彼女はにこにこ笑顔で自分の席に戻った。斜め後ろにはイラストを黙々と描いている女子、
-真崎ユキ-
よく絵を書いている。俗に言う二次オタ?みたいな女の子。授業中も休み時間もなんかのキャラクターのイラストや漫画を描いていて時々見せてくれる。とても上手で、面白くてすごいなと思う。しかし、こんな私が言うのもどうかと思うが、クラスでも空気のような存在。
私の斜め前では東條くんと近衛くんが話していた。
-東條 タケル-
あまり話したことがない男子。頭がいいのは知っている。通学路が同じらしくあの木下くんと氷宮くんと朝歩きているのをよく見かける。クラスの中心でも無く端でもない場所にいる感じの男子だ。
-近衛 サトル-
眼鏡の少しぽっちゃり系男子。東條くんと仲がよく、クラスで目立っている訳では無いが実は明るい性格だ。彼は隠しているみたいだがお坊っちゃんだ。私は彼と小学生の時から同じ塾に通っているので知っている。彼がお金持ちの学校に通わずこんなごく平凡な学校に通っているのは、お金持ちな環境にいるのではなく一般家庭の人達と生活を送って欲しいという親の意向かららしい。彼も結構頭は良い。
朝のチャイムがなった...と同時にクラスの前ドアから一人が入ってきた。賑やかな朝を送っていたクラスは、一瞬静まりかえった。
-今野カヤト-
属に言う不良、ヤンキー。男女関係なく暴力的でクラスの誰も抵抗できない。クラスの中心人物である男子、木下くんや氷宮くん、上条くんでさえ全くもって関わっていない、むしろ避けている。もちろんあの女子4人組も少々恐れている。
そんな彼にも全くもって気にせず相変わらず天体の本を読んでいる隣の席の男子、
-杉島 タクト-
天体好きなメガネ男子。前髪が長く、私は目を見たことがない。私が消しゴムを忘れた時に貸してくれたりする心優しい子。しかし、少々声が小さい気の弱そうな男子。
先生が教室に入ってきて今日も学校生活が始まる。
私の一日はここまでも、まだいつも通りだった。
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