0-1 【東條タケル】
俺はその日、いつも通り6:45に起きて、7:38発の電車に乗った。家の最寄り駅から5駅の所に俺の通う高校がある。俺はいつも通り、眠そうなサラリーマンや、熱心に化粧をしている女子大生、茶色く高そうなランドセルを背負った小学生を眺め、それぞれの日常を考えていた。人間観察は俺の日課となっているのかもしれない。乗り始めて2駅目。電車が止まると、いつも通りの2人が乗り込んでくる。
「おはよー!タケル!」
-木村カズト-
クラスの中心人物であり、男女分け隔てないその接し方、優しさ、俺みたいなスクールカーストの中の下くらいの相手にも変わらぬこの爽やかな対応、端正な顔立ち、高身長から人気がある。俺との関わりは基本的にこの通学電車だけである。
そう言ってカズトは、爽やかスマイルで片手を上げハイタッチをしようと俺の方に歩み寄ってきた。
パチっ
「痛っ!お前、また静電気かよw」
まだ11月にもなっていないのに俺は静電気に悩まされている。静電気グッズを試してみても効果はない。髪の毛もいつも浮いてしまうし最悪である。
「心が乾燥してんのかな」
俺が適当に返事をするとカズトの横から
「ふっ。意外とうまいこと言うな。」
と素っ気ない声が聞こえた。
-氷宮 ソラ-
クラスの中心人物であるがカズトとは違い明るくも爽やかでもない。俺から見れば単なる塩対応というやつだが、一分の女子からはそのクールさがいいのだそうだ。また、こいつもカズトと同様、整った顔に高身長だからであろう。無論、俺とソラの関係も基本的にこの通学電車だけである。
カズトはいつもどおりくっきりとついた寝癖を揺らし楽しそうに話す。一方のソラは顔色一つ変えず「あぁそうだな。」の一言ですべて返答するいつも通りの塩対応。いつも通りとは言っても俺がクラスの中心人物と話す機会はこの朝だけである。この3人で過ごす残り3駅間は、あっという間に過ぎ去る。
俺の一日はここまではまだいつも通りだった。
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高校の最寄り駅を降り、徒歩5分。高校につく。階段で3階まで上り、右に曲がって3つ目の教室2-7。後ろのドアから入るといつも通り、女子4人組が教室の後ろで駄弁っていた。
-滝沢 カオル-
クラスの女王。別に頭も運動もできる訳では無い。性格も偉そうで威張っている。家が少し金持ちという噂は耳にしているので、周りの女子はそれで集っているのだろう。無論こいつと話したことはない。そしてあまり好きではない。
-涼風 リン-
カオルと仲が良くクラスの中心にいる。こいつはあちらこちらの男子(クラスの中心人物のイケメン達だけで俺のような平凡又はそれ以下のやつには見向きもしない。)に媚を売りまくっている女だ。一部女子からは裏で「ビッチ」と呼ばれているくらいだ。そして昼休みには毎日自分で作ってきたお菓子を配り回っている。
-真野 イチゴ-
髪は栗色、ツインテール。きゃるんとしていて誰にでも優しい。男子受けはとてもいいが、女子から見たら単なるぶりっ子にしか見えないそうだ。俺も自分自身の分析からすると少し計算が入っているのではないかと踏んでいる。俺にもたまに話しかけてくるので全く関わりが無くはない。
-月崎 ミカ-
黒髪ロングヘアの美女だ。男子と話す時は、お淑しとやかであるが、女子と会話する時はとても明るい。いつも好んでトマトジュースを飲んでいて、あまりこいつの情報は、入ってこないし、関わることもなく、ミステリアスな女子だ。
以上の4人が俺の分析による、俺のクラス2-7の女子四天王である。いや、女だから「四天王女」だ。
「やっほー!おっはよー。」
そう言って教室に入ってきた俺たち3人に(いや、これを除く2人だろう)に、明るく金髪の髪を揺らしてきた小柄な男子、上条ハル
-上条ハル-
男である俺が見ても時々ドキッとしてしまうほど可愛い男子。口調も優しく、小柄で女の子みたいだ。俺の分析だと、こいつはイチゴとは違い計算はしていない天然の可愛さの持ち主だと思う。
さっきのカズト、ソラ、ハルの三人がこのクラスの男子の中心人物。俺は「三銃士」と読んでいる。
ハルが軽やかなステップでこっちに来ると同時に俺は持ち前の影の薄さで軽やかにそこから抜け出し自分の席に向かう。一日一回のクラスの中心人物と関わる輝かしいキラキラ☆ハイスクールライフタイムはこれにて終了である。自分の席につくと隣の席の福野ハナが三条スズに絆創膏を貼ってもらっていた。
-福野ハナ-
クラスの栽培委員。毎朝花に水やりをしっかりとしている。真面目な印象もあるが、一番印象的なのはその見た目だ。童顔にツインテール。にこにこ笑顔。可愛らしくて、まるで近所の年下の小さな女の子を見ているような気持ちになる。
-三条スズ-
クラスの保健委員。三つ編みに眼鏡で頭がいい。しかし、性格は固くなく心優しい女子。いつも若干俯き気味なのでよく顔を見たことは無い。控えめな性格。成績は学年で1桁を取ったという噂も聞くが本人が何も言わないので分からない。
俺が席に座ると、前の席にいる俺の親友が話しかけてきた。
-近衛サトル-
俺なんかと仲良くしているが正真正銘のお坊っちゃん。たぶん、滝沢なんかよりも全然金持ちだ。学校に自分が金持ちなことが知られたくないらしくいつも学校の裏門にリムジンで送ってもらいひっそりと登校している。
「よぉ!タケル!」
「おはよう、サトル。」
そしていつも通り他の何人かもサトルの親しみやすい空気に加わる。
-古泉シュウゴ-
写真部、メガネ、真面目。の三つのワードで片付くような男。細くて高身長でモヤシみたい。あまり目立つことがないから知らないやつも多いが、実は写真の腕は本物で、何度もコンクールで賞を受賞している。
-時川レン-
こんがり色黒のサッカー男子。うちの学校は、サッカーの強豪校だが、そのなかでもエース級である。俺と直接はすごく仲が良いわけではないが、この集団で話すときに関わる。
-浅井リク-
色白の水泳男子。時川レンとは幼馴染らしく、よく一緒にいる。高身長でひょろひょろに見えるが結構引き締まった体である。無論、俺との関係はレンと同じ感じである。
-柏木ショウ-
放送部の爽やか男子。俺が女なら絶対コイツに惚れている。頭は結構いいし、運動もそこそこだし、放送部だけに声はイケボだし、性格も爽やか、顔も結構いいほうだと思う。
-田島タケシ-
柔道部主将の熱血男子。太い眉毛にがっちりした体格。男気ある性格。親分のような頼りになる男。いや、男の中の漢
いつも通りスクールカースト中盤の男子で集まる朝。何一つ文句なく楽しく暮らしている。
俺の一日はここまでも、まだいつも通りだった。
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