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OVERTURE~噺の枕に代えて~







 ――この物語は続きものでございます。

 しかしこのページを開いた皆様の中には、前作をお読みでない方も大勢おられることでしょう。

 ですから、ここでは手短に前作のあらすじを語ろうかと思います。

 もしも貴方が前作を既に読んで下さり、誠に光栄ながら本作も読んでいただけるとあれば、この語りは聞き流してくださって結構でございます。

 では、語るといたしましょう。異界に迷い込んだ、一匹の流れ者の物語を……。













 ――十九世紀後半

 アメリカでは南北戦争が終わり、西部開拓時代の幕が上がります。

 『明白なる天命マニュフェスト・ディスティニー』の名のもとに東から西へ、人々は群れ成して黄金のカリフォルニアを目指し荒野へと繰り出しました。

 そして西部を目指した人々のなかには、少なくない南軍崩れの無法者たちが混じりこんでいたのです。

 故郷を失い、家族を失い、方便たつきを失い、己が生きる道すら見失った男たち……残されたものは、人殺しの業と銃だけ。ジェシー=ジェームズやコール=ヤンガーは、そんな無数の男たちのほんの一部に過ぎなかったのです。数え切れない元南軍兵士たちが荒野へと向かい、そして砂塵の向こうに消えていきました。


 『彼』もまた、そんな男たちの一人でした。


 かつて南軍の狙撃兵として灰色の幽霊とも恐れられた『彼』ですが、今や一握のドルと引き換えに人を殺める日々。

 手にした得物は、戦争で使い方を習い覚えた1853年モデルのエンフールド・ライフルと、左右に吊るした二丁のコルトM1851ネービー・リボルバー。鷹のように鋭い灰色の瞳で狙えば、標的を外すこともなし。気がつけば一流の殺し屋として、西部を巡って暗殺稼業。

 己の生き方の歪さを知りつつも、さりとて他に生き方も知りません。

 今日も今日とて、ニューメキシコで一仕事。袋いっぱいの銀貨を懐に、次なる仕事へとまたひと旅。


 ――そして、転機は唐突に訪れました。 


 眩暈を経て気がつけば、もうその身は異界に在り。

 迷い込んだのは肌の黒い長耳エルフの住まう村。そしてこの村は、恐ろしいオークの盗賊たちの支配下にあったのです。

 迷い込んで早々盗賊一味と一悶着起こした『彼』は、村の用心棒として一味と対決する破目になります。

 というのも彼のような『まれびと』は、呼び出されるに至ったその使命を果たすことなくば、元の世界へは帰らざるとのこと。しぶしぶながら用心棒稼業を引き受けることになりました。

 しかし独りで大勢のオーク盗賊に挑むのは骨が折れます。だから『彼』は助手を求めます。

 応じたのは、エゼルという名の少年。『彼』と同じ、灰色の瞳を持った少年でした。

 父親を殺され、復讐に、そして村を守ろうとする闘志に燃えた少年の姿に、『彼』は己の過去の幻影を見ます。

 俄然、戦う意欲を見せた『彼』は、エゼルと共に谷間に盗賊団を待ち伏せます。

 待ち伏せは見事成功するも、予期せぬ新たな敵に事態は急展開。よりにもよって、こんな時に限って、盗賊団の後ろ盾、三人の悪い魔法使いが出張ってきていたのです。

 摩訶不思議な業を用いる魔法使いたちに、『彼』は翻弄されながらも、ひとり、またひとりと魔法使いを仕留めていきます。

 途中、相棒エゼルを捕らわれる窮地を経ながらも、『彼』は死闘を制し、魔法使いと盗賊団を壊滅させます。

 戦いの途中で、かつて失った想いを、故郷の心を思い出した『彼』は、役割を終えて、西部の荒野へと還ります。

 同じ灰色の眼をした、少年へとライフル銃を託して――。



 











 

 『彼』は西部へと戻りました。

 ですが、彼にはまだ奇怪なる運命が影のように寄り添っていたのです。

 そしてここからが、今回の御噺。

 いかなる天の配剤か。『彼』は再び異界に迷い込みます。

 

 物語は、一人の少女が、何かに追われている所から始まります。

 一体全体、何者に追われているのやら……。

 さぁ、次なる物語の、扉を開くとしましょうか。



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