001 プロローグ(7月4日アーレス)
ネルフィア王国の最東端に位置するテレステの町は、いつも以上に賑わっていた。
北東にオルム山脈を臨み、ザルク帝国へと続く交易都市でもあるこの街は、普段から旅人で賑わっていたが、今日は特別である。
ネルフィア王国第二王女のエレナ姫の、『お披露目の儀』が行われるのである。
街の中心の広場に特設された会場には、一目、お姫様を見ようかと、すでに多くの人が集まっていた。
「すごい人出だな」
アーレスは、特設された台から50メートルくらい離れたところで見ていた。
老若男女が、まだかまだかと、エレナ姫の登壇を待っている。
なにぶん、お披露目の儀は長らく開かれていない珍しい儀式なのである。
お披露目の儀は15歳になった未婚の姫が、諸侯や民、そして諸外国にお披露目する儀式である。
王家の姫など、もともとそう多くなく、15歳まで未婚なのは珍しいのである。また、結婚してなくても、婚約している場合には、お披露目の儀は行われない場合もある。その為、50年ぶりくらいのお披露目の儀と言われている。
「どんなにブスでも、相手は王家の姫様だ。何としても手に入れてみせるぞ」
アーレスは、数日前、酒場で酔ってそんな事を言っていた学園時代の旧友を思い出す。
そう一部の人の間では、エレナ姫の容姿がすぐれないため結婚相手が見つからないという不敬な噂が流れている。アーレスも、そんな姫様の顔を拝みに来た不敬な人間の一人であるが。
いよいよ、始まるのか、台の上に金属製の鎧を装備した男たちが上がった。その後、街の有力者達も台に上がる。その中には、先日不敬な事を言った、アーレスの顔見知りの伯爵の息子もいる。
「静粛に!」
広場に配置され、警備している兵士達が、そう叫んでざわつく観衆たちを静かにさせようとする。
そこへ台の後方から白いドレスを着たかわいらしいストロベリーブロンドの少女が登壇する。アーレスの位置からあまり顔ははっきり見えないが、普通に、かわいいように見えた。
「おー」
観衆が、エレナ姫の姿を見て、ざわつき始めた。
!!!
その瞬間、突然空気が震えた。
多くの者が、一瞬何が起こったのか、分からなかった。
そんな中、台上の騎士や領主達が、驚いて立ちすくんでいる姫をかばうように動く。
その時、再び爆発が起きたのだった。




