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Butterfly Weave  作者: 空鳥
3/3

第三章:Face

どうも!空鳥です。

第三話が完成しました!

今回は、フェイスがメインのお話です。

フェイスとルーカスの関係だったり、今後の関係を見せていく場面です。

よろしければ、読んでいただけると幸いです!


――俺たちは、似た者同士だってことを忘れていた。


 浜辺についた頃には、途中で食材を買うために寄り道したせいで、 夕陽もすっかり水平線に浸かってしまい、空が藍色に移り変わっていく。

 潮風に吹かれながら、浜辺を歩くと、砂にまみれ、小さな切り傷が無数に入った木の切り株を見つけた。すぐさま買ってきた食材の入った袋を放り投げるように置く。一息つく間もなく、俺は切り株の表面を買ってきた布巾で軽く拭きはじめる。その間に、フェイスとベンが水汲みへバケツを持っていった。

 切り株の表面を拭き終わってテーブルクロスをかけた。手に持っていた布巾を片方のバケツで洗うが、海水浴で体を拭ったバスタオルみたいに砂がまみれて取れない。

―ドシャ

 笑い声とともに鈍い音が聞こえて振り向くと、ベンとフェイスが水を零しながらバケツを砂浜に降ろしていた。

「ルーカスは真面目だなぁ。テーブルクロスまで敷いちゃってさ」

 ベンがテーブルクロスをかけた切り株を見るなり、テーブルクロスをさする。

「お前とは違って、水零したりしないからな」

 ベンは乾いた笑いで誤魔化す。

「よし、ベン、バーベキューセット借りてきてくれ」

 ルーカスはバケツを切り株の近くによせてから、袋に入った食材を切り株の上に並べる。

「おいおい。ルーカス、お前が行けよ」

「いいだろ。じゃあ食材を綺麗に切って準備できるなら……だけどな?」

 手に持った人参でベンを指すと、ベンはため息をつく。

「っく……。分かったよ。行ってくるさ」

 ルーカスは笑いながら、袋からまな板と包丁を取り出し、食材を水で洗い始めた。フェイスがルーカスそばの砂浜に腰掛け、遠く日が沈む水平線を見つめる。

「ルーカスってばいじわるね」

「ははっ。いつも振り回されるからな。これくらいの駄賃はあってもいいだろ」

 フェイスは瞼を閉じてふっと息を吐き出す。

「あの頃と何も変わらないわね」

「そうかな?」

 玉ねぎ、にんじん、とうもろこしの皮を処理して、輪切りにしていく。

「ええ。あの時だって、私を助けた後……」

「そんなこともあったかな。覚えてないよ」

 しばらく沈黙が広がり、野菜をただ黙々と輪切りにしていく音と押し寄せる波の音だけが響く。たまに視線をフェイスに移しては、目が合って頬を紅潮させる。胸の鼓動が次第に大きくなり、腕が震えていく。

「…っ」

「ル、ルーカス!」

「ああ、大丈夫だ。こ、これくらい」

「ちょっと見せて」

 動揺してしまい、指を切ってしまったのだ。俺のゴツゴツとした手をとても念入りにフェイスがみている。それだけでも、血が流れ出るのが早くなるのではないかと思うくらいに。

「ちょっと我慢してね」

 フェイスが切った俺の指を口元に近づけて、舌を出す。それから、フェイスは切った俺の指を咥えた。吸い上げる音が妙に際立って聞こえる。

「動かないで」

「す、すまない」

 血を流す指をフェイスが長い流麗な髪を耳にかけて綺麗に舐め取る。

「うぉい。借りてきた……ぞ……」

 ベンが帰ってくると、間の悪いことに、フェイスが俺の指を咥えているとこを見て、声を震わせた。

「あ、あの……だな」

「ど、どういうことだ!」

 ベンがバーベキューセットを砂に押し付けるように、下も見ずに置く。すると、ベンが眉間にしわを寄せる。

「落ち着いて、ルーカスが指を切って、処置を施しているだけよ」

「そ、そっか」

 ベンは目を丸くした後、気まずそうにそっぽ向く。

「もう。ルーカスは絆創膏を。ベン、見せて?」

 俺はフェイスに渡された絆創膏を巻く。すぐにフェイスはベンの足の具合を見て、処置を始める。その間に俺は野菜の下準備と肉の下ごしらえを済ませた。

「ほんっと、二人とも軍人なのかしら?」

 フェイスが笑いながら食材を焼く俺らを指差す。

「返す言葉もないな……」

「ああ、全くだ……」

 俺が串を回すと、火の勢いが増して、食材を飲み込みながら、燃え上がる。そして、食材には狐色に変化していき、音も次第に大きくなっていく。

「さっき、何話してたんだ?」

「ああ、それはね」

「フェイス……」

 フェイスは口元に人差し指を当てながら軽く笑う。ベンは俺の後ろに回って、口を押さえる。「この海兵隊で一番几帳面で石頭のルーカスが凡ミスするとは思えないね! 何かに動揺したんだな!」

「お前と一緒にすんな!」

「あなたたち二人って、結構似ているのね」

 フェイスがからかうように笑うと、俺たちもそれ以上何も言えなかった。それからは、ただひたすらに、食事の準備をしたのだった。


――俺たちは、似た者同士だってことを忘れていた。


 ある程度、食材を焼き終わる頃には、夕陽の影もなく、小さなオレンジ色のビーズのように、水平線の先が朱色に見えるくらいで、星たちが耀きを増していた。

「そういえば、二人はどうやって出会ったの?」

 串を片手で持ち、少し黒く焦げた肉にかぶりつきながら、お互い持っていたキャメルと葉巻で指しあう。

「ベンが迷惑かけてきてさ」

「ルーカスが堅すぎてさ」

 フェイスは肩を少しあげて、口元を緩ませた顔をゆっくりあきれたように横に振る。俺とベンは黙って、再び肉に食らいつく。お互いに目で威圧をかけながら。俺が手に付いた肉汁を布巾でふき取る。

「まぁ、こんなやつだが、海兵隊に入隊したその日から一緒にいるよ」

「へぇ。それで息がピッタリなのね」

 ベンは食らい付いていた肉が気管支に入ったのか、胸を数回、拳を作って叩いて、お酒を喉に流し込んだ。

「おいおい。フェイス……。悪い冗談はよしてくれ」

「あら、でも、二人ともなんだかんだ息が合っているように見えるけど?」

 俺とベンはお互いに横を向いて、目が合うと、首を振ってはまた肉にかぶりついた。三人して、肉や野菜にかぶりつき、お酒を流しこんで、目尻が垂れはじめたころ、ベンが俺の肩に腕を回した。

「なぁ、そういえば、ルーカスとフェイスはどうやって知り合ったんだ?」

 改めて聞かれると少し恥ずかしくなって相槌を打って誤魔化す。フェイスもそれは同じらしく、少し頬を赤く染めて無言で食べていた。それでもベンは興味津々に目を輝かせて聞いてくる。俺とフェイスは顔を合わせて頷く。

「そうだな……確か小学生の席で隣になったのが最初だったよな?」

 フェイスは目を丸くして首を顔に振った。

「ち、違うわよ。私がいじめられている時、助けてくれたじゃない」

 ベンがニヤつきながら俺とフェイスを交互に見ると、フェイスは俺が適当にあしらおうとしたことに気付いて、茹蛸のように耳まで真っ赤にしてしまう。その話題から逸らすようにフェイスのバイトの話などをしてはぐらかす。それから三人で浜辺で少し遊んでから、夕陽が落ちる前に浜辺で手を繋いで写真を撮った。


 フェイスを送った後、俺の実家に泊まることになったのだが、ベンから避けるようにシャワーを済ませて、部屋のベッドに飛び込んだ。目の前で起きた現実から目を逸らそうと、枕に顔を埋めた。

 そこに俺の後にシャワーを浴びたベンが戻ってきた。普段なら歌を口ずさんで戻ってくるのだが、今日は違った。なんて声をかければいいか分からず、流し目にベンを見て戸惑っていたら、俺のベッドに腰掛ける。

「ルーカス。フェイスの事……好きだろ?」

 突然ベンがニヤけながら指差してきた。俺は上半身を上げ、開いた口が塞がらなかった。そんな俺の肩をベンは軽く叩く。

「ああ、やっぱりな。趣味が近いとこうなるもんかね。それとも、フェイスの言ってたことは本当かもな。そっくりって」

 鼻で笑いつつ、ベッドから立ち上がって、俺の方を振り向いた。ベンの顔の口角は下がり、すっとした表情で向き合う。

「なら、抜け駆けなしで、この戦争に一区切りついたら、決着をつけよう」

 ゆっくり頷くと、ベンは手を差し出し、俺はそれに応えるようにベンの手を強く握って、誓うように握手を交わした。だけど、一つだけ納得いかなくてベンに問う。

「なんで、ベンは俺がフェイスのこと好きだって分かったんだ?」

「ああ、さっき俺がフェイスに告ったの見てたろ? それで、立ち去る後ろ姿を見たからな」

 ちょうど、バーベキューの後片付けをしていて、ベンとフェイスに残飯の片付けを頼んで、俺が海の家から借りたバーベキューセットを返しに行って帰ってきた時だった。あのベンが顔を真っ赤に染めて告白していたのだ。それに気付いた俺はフェイスの答えを聞く前に海の家に引き返した。それから時間を見計らって、何事もなかったかのように戻ってきたのだ。

 ベンは普段通りを装っているようだが、どこかよそよそしくて、ぎこちなく思える。あの時、聞く勇気がなくて聞けなかったことを恐る恐る、震える声を必死に抑えながら聞いた。

「そ、それで、どうだったんだよ。フェイスは……」

 ベンはため息交じりに顔を横に振った。でも、ベンは少し笑っていた。俺は少し安堵するが、ベンの笑いが不気味に思えて眉間にしわを寄せる。

「私は蝶だから、自由に飛ぶわ。だから、甘い蜜に誘われちゃう生き物なの。捕まえて見せて? だってさ」

 ベンが笑いを堪えながらフェイスの言葉を思い出すように言う。

「つまり、まだ……」

 俺が言いかけたところでベンは深く、ゆっくりと頷く。心の中で諦めていたが、火に油を注いだかのように闘志の炎が燃え上がった。ベンが頬を掻きながら、珍しく照れくさそうに

「先に告ってしまった俺が言うのもなんだけど、抜け駆けなしで正々堂々と戦って、フェイスが決めるまでルーカスと……」

 俺は顔を横に振り、ベンの言葉を遮って拳を出すと、ベンは歯を見せて笑いながら俺の拳に拳を合わせて、約束を交わした。

閲覧していただきありがとうございます!

月一のペースになってますね・・・w

次はもうちょっとお時間がかかりそうです・・・。

なるべく早くできればなと思ってます!


今回は、「前書き」にも書きましたが、

フェイスとの関係性のお話です。

フェイスの言葉には、少し色っぽさを混ぜてるつもりです!()

エロくない、けど色っぽい女性は、すごく魅力的だなと思います←


次回→ 第四章「Reason to Fight」

を予定しています!

見てくださる方がいらっしゃるかどうかは分かりませんが、

頑張っていきます!

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