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Butterfly Weave  作者: 空鳥
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第一章:Game

はじめまして!

今回が初めての投稿となります。

少し緊張しておりますが、読んでいただけると幸いです。

 夕陽が傾き始め、空が紅葉色に染まっていた。軍人にしては小柄なルーカスが、磯の香り漂う浜辺を歩いていく。浜辺につく足跡には、押し寄せる潮によって消されていく。ルーカスは、司令長官であるハルゼー大将から書類を受け取った帰り道で、自分の隊の兵舎に向かっていた。ルーカスは書類を片手に、光のベールのように輝く波打ち際を見つめながら、ため息をつく。その姿は、肩を落として背を丸めて俯き、とても軍人とは思えない。ふと見上げると、垂れ下がるヤシの葉の先が団扇を扇ぐように揺れている。帽子が飛ばされないように片手で抑えて深く被り、兵舎へと歩を進める。

 黒く滲んだインクで「Camp Butterfly」と書かれた看板を通り過ぎ、褐色色に焼ける鉄板が目に付く、かまぼこ型の兵舎を前に立ち止まり、深く帽子を被りなおして、息を吐き出すと、中へ入っていくのだった。

 「Captain Room」と書かれた表札が掛けられた部屋のドアが半分開いていた。ドアを手の甲で押しのけると茶色の革で作られたソファの肘掛から使い込んだ革靴が蠢いている。ルーカスは歩を止めることなく後ろでにドアを閉めた。部屋にはバーコードのように西日がブラインドごしに隙間から入ってきて、密室の室内は外より熱く感じる。ルーカスの額には結露のように汗が一瞬で張り付いていた。

 電気をつけて、窓際に行きブラインドを閉じ、窓を少し開ける。ソファで寝ている自分より一回り大柄な男性を横目に、「Captain Lucas」と書かれた表札のある机に書類を置き、背もたれのある椅子に体を預けるように、勢いよく腰を下ろした。

「おい、ベン。なんで隊長室なんかで、暢気に寝てやがる! 起きやがれ」

 ソファで寝ているのはルーカス隊の一員であるベンだった。ベンは口元を緩ませて、腕をあげて手のひらを仰ぐと、寝返りをうつ。

「いい加減に……」

「冗談だって、そんなに怒るなよ、ルーカス」

 ベンは髪の毛をかき回しながら、ソファから立ち上がり、あくびをかみ殺しながらながしに向かう。

「ん? そういや、ルーカス、今日は……、なんでいなかったっけ?」

「いつまで寝ぼけている気だ! 今日は軍議があると言ってただろうが! 一応、俺の副官なんだから、それくらい覚えておけ」

「イエッサー」

 ベンは、ながしの壁にかけてある鏡で、ご自慢の茶髪のスパイキーヘアーをセットしなおしながら、生返事をする。

「はぁ、お前のそのだらしない癖は治らんのか?」

「失礼な! こんなにも真面目なのに!」

 ベンは振り返ってルーカスを見ると、白い歯を見せながら敬礼をする。ルーカスは窓から遠くに輝く海辺を見つめて、そっけなく返す。

「ああ、そうだな。お前は真面目だ。それなら全人類生真面目だ」

「ははっ。冗談が酷いな。んで? ハルゼーの旦那は元気だったかい?」

 ベンは、ルーカスの視界を遮るように窓際に立ちふさがり、窓のさんに腰掛ける。

「おい。真面目な奴が、ハルゼー大将を旦那なんて呼ぶやつがあるか! ハルゼー大将と呼べ! 本来なら俺もルーカス少佐なんだからな?」

 ルーカスはベンを睨みつけると、ベンはながしへスキップしながら戻っていく。

「おいおい。堅苦しいこと言うなよ。俺とルーカスの仲じゃないか」

「なんでこんなやつと相棒になったのか、俺の人生で一番の汚点であり、謎だ」

「ははっ。書籍でも書き残すか?」

「はぁ……」

 ベンは鼻で笑いながら、ながしに置いてあるインスタントコーヒーを手に取り、カップを一つ用意し、コーヒーをつくりはじめる。

「おい。誰が飲んでいいと言ったよ?」

 立ち上がる俺を見て、ベンはわざとらしくもう一つカップを食器棚から用意した。

「それで? キャプテンの旦那はなんて?」

「ったく、今度、キャメル奢れよ」

「しゃーないな」

 ベンは苦笑いを浮かべながら、インスタントコーヒーのボトルを開ける。部屋は開いた窓から入る風に乗ってあっという間に、甘酸っぱい匂いが広がる。ベンは鼻にボトルを近づけ頷き、カップにコーヒーを作っていく。

「そんな間抜け面晒してる場合じゃないぞ。ハルゼー大将が来年三月に日本の本土空襲を計画しているぞ」

 ベンは一瞬、カップにお湯を注ぐ手を止めた。白い歯を見せてから、また注いでいく。

「意外と早かったじゃねぇか」

 ベンが踵を鳴らして敬礼しつつ、湯気立つコーヒーカップを渡してきた。カップのお返しのように書類をベンに渡す。ベンは一口コーヒーを口に含みながら書類に目を通す。

「どうやら、この一戦で決着をつける気のようだ」

「ふーん。あ、ルーカス」

「なんだ?」

「シロップとミルクは?」

「お前じゃあるまいし、いらん。少しはブラックで飲め」

「さっき飲んだけど、やっぱ俺には合わないわ」

 ベンはソファに腰掛けると、ポケットからミルクとシロップ、葉巻を取り出す。ミルクとシロップをコーヒーにそそくさ入れると、カップをわしづかんで回す。

「それで、ルーカス。次の作戦は素敵なパーティーができそうかい?」

 ルーカスは机の隅にあったマッチ箱から一本取り出して、キャメルを深く吸いこんで、煙をベンにかけるように、煙を吐き出す。

「ああ、お前の十八番のほうだ」

「おお、そいつはよかったぜ。こないだは護衛任務だったからな。あんなのばっかやってたら腕がなまっちまうぜ」

 ベンは緩んだ口元にカップをつけて、コーヒーを流しこんだ。ベンは立ち上がって、ルーカスの机にあるマッチを取って、葉巻に火をつける。

「まったく、お前はマッチすら持ってないのか」

 ルーカスがキャメルでベンを指すと、ベンは葉巻の先をキャメルにぶつける。

「なぁ、ルーカス。ゲームしようぜ」

 ベンの陽気な顔にルーカスはため息をつく。

「お前なぁ、また話題を逸らして誤魔化すな」

「へへっ。そいつは失礼。生憎、ルーカスのように金髪を七三に分けるようなクソ真面目さは持ち合わせておりませんので」

 ルーカスは鼻で笑いながらキャメルを一吸いする。

「それで? また下らないことだったら、晩飯奢ってもらうぞ」

「単純なゲームさ。次の作戦の戦果で競おうじゃねぇか」

 ベンは勝ち誇ったように顎をあげている。ルーカスは目頭に力を入れて見つめる。ふと窓から強い風が入り、ブラインドが窓のさんにぶつかり音を立てる。ルーカスは、風が収まってからベンの葉巻の先にキャメルをぶつける。

「いいだろう」

「ほう。珍しいじゃないか。俺の提案に乗るなんてな」

「今度こそ、お前に前戦の戦いの戦果で勝ってやる」

 ルーカスの持つキャメルの火種が落ちる。それをベンが手で押さえて火種を消す。

「いい度胸だ。ルーカス。前戦で勝って証明してみな」

「他では威張れないのに、こんなとこで威張るな」

「ははっ。これくらいしか勝てないからな」

ベンは笑いながらマッチを取る。

「ほら。火消えたぞ」

 ルーカスのキャメルにマッチを取って火をつけなおす。

「それで、ゲームはそれだけか?」

「そんなわけない。勝った方がフェイスに告白できるってのはどうだ?」

 ルーカスは目を見開く。ベンは満足げにウインクをすると、ルーカスはキャメルを一吸いして、自分の胸元を見つめた。

「んで、どうするよ? 俺はそろそろ決着つけてもいいと思っているんだ。どうせ、戦果で競えるのはこれで最後かもしんねぇしな。俺たちの戦いにも決着つけようや」

 ルーカスが煙を最大限に吐き出すと、また火種が落ちた。

「いいだろう。全てに決着をつけるとしよう。全てに。戦友としてな」

「ああ。それまで首を洗っておくことだな」

「ったく。すぐ調子づくんじゃない。上官に挑発するな。負けたらお前の額に赤い丸を描いてやるよ」

「ルーカスが戦友って言うからだろ。だいたい、いつも堅すぎるんだよ」

 ベンはルーカスの肩を二回叩いて、部屋から出ていく。

「ベン、お前だって焦りすぎて、今なお昇進できてねぇくせに」

「俺が下でお前が上のほうがいい。そのほうが、俺は羽を伸ばせるし、怒られずに済むしな」

「最後の一文が余計だ」

「ははっ。じゃあな」

 ベンがドアを閉じると、ルーカスは胸元からペンダントを取り出し、紺碧色をしたロケットペンダントを握りしめて、目を瞑った。

読んでいただきありがとうございます!

本当はファンタジーを書こうとしたのですが、

とある映画を見て、時代ものになりました(苦笑

これから、10~15話想定となっております。

よろしければ、自己満足に近いですが、どうぞよろしくお願いいたします!


次回→ 第二章:Ben & Lucas

を予定しております!

見てくださる方がいらっしゃるか分かりませんが、頑張りたいです!

それでは!

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