take off
ここには鉄と油と消毒液の臭いが鼻に突き刺さる。
僕はこの臭いを待ち望んでいた。
「Hey!! ステインブ。マシンの操作性はどうだい」
「ああ、ジェイムズ大変素晴らしい仕事をしてくれた。君に頼んで正解だったよ。これで悔いなく赴けるよ」
彼の名前はジェイムズという。
マシンの整備をする事を生業としている。
いつもテンションが高い。
鬱な気分になりがちなこの場所において気分を紛らわせてくれる人だ。
彼に助けられる人は少なくない。
彼について知っていることは地球の赤道付近出身で色黒のtough guyだというぐらいだ。
「oh…そんな事言うんじゃないぜbaby!!
今までに消えていった戦友達と同じ末路を辿っちまうぜ」
「忠告どうも、発進して戻ってこられるかは時の運だ。気にしても仕方がない」
「crazy!! ここまで割り切った奴は今まで見たことがない。精々無事に帰ってこいよ。食事ぐらい奢ってやる」
「たらふく食べてやるから覚悟しろよ」
「少しばかりは遠慮しろよ。武装はこれで十分か」
「大丈夫だ、問題ない」
もうすぐ出撃だ。長年の夢のマシンのパイロットとしての晴れ舞台が僕を待っている。
「「warning.warning.整備員は直ちに退避場所に移動せよ。繰り返す、整備員は直ちに退避場所に移動せよ」」
回転灯とスピーカーが唸る。
「You go to the universe. Live and be returning.」
「Don't forget my way back.」
恒例の挨拶を交わしてジェイムズはここを離れた。
エンジンをかける。
ブロロロロー
特有の振動が操縦桿に伝わる。
「5・4・3・2・1・GO!!」
カウントダウンでマシンを発進した。
今回の目的はある星での実験で生み出された人工生命体を殲滅する事だ。
これが僕の初仕事だ。
マシンのスピードが加速する。
エンジンを少し吹かせすぎたような気がするが、まあいいだろう。