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歪んだ世界  作者: 在原 剛
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『別れよう』

リハビリとして頑張っていきます



全ての授業が終わり、メールで急遽屋上に呼び出された俺は頭に疑問符を多く浮かべながらとりあえず屋上に向かうことにした


「アキト!これからカラオケ行かないか!?」


「悪い!ちょっと用事があるからまた今度!」


友達の誘いを断り、カバンを持って屋上に急ぐことにした。急ぐといっても別に全力で走るわけでもなく早歩きぎみに歩くだけだ。掃除や下校する友達が「じゃあね!」とか「またな!」と言ってくると俺も「おう!」と返事をしながら屋上へと向かう


途中、ケータイの画面を眺めながら考えた


「『アキト、ちょっと屋上に来てくれないかな?大事な話があるの。』か……なんだ、由穂のやつ」


由穂とは俺の彼女だ。中学二年から現在高校二年まで付き合っている


普通に可愛いやつだし性格も悪くない。勉強はそこそこ出来るし、運動センスも悪くない。まぁ平凡の域だけど

中二のときあいつに告白されたのはビックリした。あまり喋ったことなかったし、関係があまりなかったから急に放課後に告白されたときは驚いた


『黒河彰人くん、ずっと前から好きでした……私と付き合ってださい!』


さすがに告白されたことがなかった俺はその告白を簡単に受け入れてしまう。それからはよく喋るようになったし、俺なりに彼女に尽くしてきたつもりだ


それで今現在、昨日まで今までどおり過ごしてきたはずなのに


「何かあったのか?」


と、独り言をこぼして屋上につながる階段を上がりきる


屋上の扉を開き、顔だけ出して屋上の状態を確認する。他に誰かいたらめんどくさいからな


すると一人の女子が目に入った。パーマがかったショートカットの黒髪の女子、俺の彼女の水瀬由穂がフェンスに寄って立っていた


彼女も俺のことに気づいたらしくこちらに歩いてきた


「ごめんね。放課後に呼び出して」


「いや、気にするな。それよりもどうかしたのか?大事な話って……」


「うん……」


由穂の表情に翳りがさす。見た瞬間に俺の中で嫌な考えが浮かぶ。そんなことあるはずないと考えを振り払って俺は彼女をちゃんと見る


静かな屋上にいるのは俺と由穂だけ。何も邪魔は入らない


「……彰人?」


「なんだ?」







「『別れよう』?」







「……はっ?」


呆けた声が出てしまう。今由穂は何て言った?


「私たち別れよう?たぶんこのままいっても私たちうまくいかない」


「何言ってるんだ?おい、由穂!」


思わず彼女の肩を掴んでしまう。だがそれがどうした。なんで別れないといけないんだよ?


「……好きな人が出来たの」


その一言を聞いた瞬間に全身の力が抜けた。肩から手を離して由穂から距離をとってしまう


「同じクラスの北川くん。その人が前に私に告白してきたの。彰人と付き合ってるの分かってて告白してきたの。当然断ったよ?でもその後も告白してきて……だんだん私の中で彰人の存在が薄れてきた。北川くんの存在が大きくなっていったのが私には分かったの」


つまりこいつ……四年近くいた俺より全く関わりないそいつを選んだのか?


「北川くんは優しくしてくれたし、いつも私を気遣ってくれた。真剣だった。でも彰人は登校と下校のときだけ。休み時間も私と関わってくれない。でも北川くんは違う、いつでも私に真剣だった」


まるで俺が悪役のような言い回しだ。確かに俺はこいつの言うとおりあまり関わろうとしなかった。でも昼休みとかちゃんと一緒だった。それだけ、そうそれだったんだ


「それに……あの人は私の初めてを貰ってくれた」


頭が真っ白になった。それくらい今の発言は俺にとって衝撃的だった


「今年の三月にね?彼の誘いで二人で遊んだの。それで夜、彼の家で……。彰人が悪いんだよ?ずっとアピールしてたのにキスしかしてくれないから」


俺は無言でいた


「北川くんは違った。優しくしてくれた。ちゃんと私をわかってくれた」


由穂の表情がとても輝いているように見えた。その表情はあまり俺が見ることが出来なかった表情だった


「あっ、でも別れても友達でいよう?完全に別れるのはもったいないと思うから」


明らかに俺を追い詰めるようなことを平然と言ってくるこの女を殴り飛ばしたいと思いつつ、我慢して俺はこの場を離れる


あいつが何か言ってたけど俺には何言っているかわからなかった


彼女を寝取られた。この世界にはそんなことされた人間が何人いるのだろうか

今だったら寝取られた奴に気持ちが非常に分かる


「あっ、おかえりなさい。今日は遅かったんじゃない?」


妹の奈々が出迎えてくれた。エプロンをしているところを見ると夕飯の準備をしていたのか


「あぁ……ちょっと話してて遅くなった」


「ふーん?あっ、先にお風呂入ったら?暑かったから汗臭いと思うし」


「あぁ、そうさせてもらうわ。ありがとな奈々」


「兄さんがそうやって元気がないときは何かあった証拠だからね。先に風呂に入ってもらわないと風呂はいる時間なくなるでしょ?」


「……お前にはお見通しか」


「じっくり聞かせてもらうから♪」


そう言って再びキッチンに戻る我が妹は鼻歌を歌いながらキッチンに向かった。何故兄の元気がないときにお前はそうやって元気でいられるんだよ!


ちょっと妹がムカついた俺は着替えを部屋に取りに行き、風呂に向かった

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