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過去と創始。
2094年5月14日
「もうやめてくれよ!父さん!!」
朔夜は背を向ける父に言い放った。もっとも、聞き入れられることはなかったが。
母の首は絞まる一方。次第に赤くなる母の顔。
―――どうしたら、母さんを助けられる?
答えはとっくに決まっていた。
―――殺せばいい。
決意と実行は違う。決意ならまだ取り消す余地がある。そう思って行動しなかったのに。
朔夜はついに近くの棚からカッターを取り出し、背後から父の動脈を一息に切り裂いた。力加減なんてものはない。
「あ…、あ…。」
滴る赤。白いTシャツが紅に染まって、あっという間に黒く変わる。生ぬるい感覚。
これが血なんだと、朔夜は震えながら思った。