パンプキオハネイヤ
その日、街は雨に濡れていた。
石畳の道に、特大の雫が打つ。
陰鬱な雲が空に垂れ込めていた。
人々は心塞ぎ、家の中でじっと晴れるのを待った。
そんな夜、パンプキオハネイヤが現れた。
カボチャのジャック・オ・ランタンを被った、イカれた狂人だ。
擦り切れた合皮の靴をポカポカ音を鳴らしながら、彼は一人としていない道を歩いていた。
傘を持っていなかったので、雨に濡れている。
クルンとした短髪は雨のせいでぐっちゃぐちゃになり、服が身体にぴしりと張り付くことでますます異様だ。
気持ち悪くはないのだろうか。
彼はそのまま歩く。
のっそり、まるで雨を歓迎する奇怪な生き物のように。
道の脇に、ひっそりと咲いているかのようにビニール傘が打ち捨てられていた。
彼はそれを拾った。
傘を広げる。
軸が一本折れているだけで、まだ充分使えそうだった。
ビニール傘にビシバシ雨が打つその姿は、まるで部屋の中から雨を見ているみたいだ。
不思議そうにパンプキオハネイヤはそれを見る。
そして鼻歌を歌いながら、また街を練り歩いた。
雨はまだ降り止まない。
それの鼻歌が街に響く。
低く、高く。
ぼんやりと灯る街灯の下に、ダンボールがあった。
徐に彼が向かう。
そこには、雨に濡れた四つ足のぬいぐるみが他のおもちゃと一緒に捨てられていた。
パンプキオハネイヤは汚れるのも気にせず、それをニ、三回撫でると、傘を差し出した。
まるで高貴な誰かに手渡すかのように、丁寧に。
かつてのぬいぐるみの栄光を偲ぶように。
それはまた、濡れたまま歩く。
どこへともなく、ただ、雨音と足音が街に響いていた。




