ギルド登録処理、正式完了
素材提出が終わったあと、受付嬢はふたたび緊張した面持ちで言った。
「で、では……お話の流れを整理しますと……」
彼女はカウンター下から一枚の登録用紙を取り出す。
「ご提出いただいた素材は確認済み、次に必要なのは──パーティー登録、そして代表者の冒険者登録です」
レナ
「スライム様を代表でお願いしやす。わっちらはその従者ということで」
イリシャ
「マスターは文字が書けんさかい、代筆はあてが務めますえ〜」
受付嬢はおそるおそる、イリシャに書類を差し出す。
「そ、そちらの記入を……パーティー名もお願いします……」
カウンターの端で、イリシャが筆を走らせる。
「《ブラックフォージ》。あてらがマスターに鍛えられてくような……そんな名にしてみましたんどす♡」
レナ
「センスよろしゅうござんすな。気に入りやした」
記入を終え、用紙を渡すと、受付嬢は魔導札を翳して全体に光を通す。
「……はい。冒険者登録、パーティー構成登録ともに完了です」
カチッという音とともに、金属製のタグがカウンター上に現れた。
「こちらが登録証となります。代表者“マサキ様”のスライム仕様……ですので、プレートには“無言種族”の表記がされています」
プレートには漆黒の地に、淡く青く光る円形の魔石がはめ込まれていた。
下部には小さく、《ブラックフォージ》と刻印されている。
イリシャ
「あてが預かっておきますな。マスターの首につけるのは……ちょっと危ないさかい」
レナ
「わっちの胸元にでもつけときやしょうかね? むしろスライム様がぶら下がってくれても……」
ぷるぷる。
……俺はそういう趣味ではない。
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ゼルがナンパしに戻ってくる
「お〜い、終わったのか? パーティー登録とかなんとか」
――声の主は、またしてもあの男だった。
革のコートの前を全開にして、懲りもせずイケメン風を気取っているAランク冒険者、ゼル。
「いやあ、びっくりしたよ。スライムが代表とか、マジ面白ぇ」
ぬっとレナの横に立ち、ニヤリと笑う。
「でもよ、マジメな話……」
指をくるくると回して、レナを上から下まで舐めるように見た。
「君たち、俺のパーティーに入らない? 戦力もスタイルも申し分なし。俺と組めば、Sランクも夢じゃないぜ?」
レナ
「……ふん、ナメた口きいてんじゃねぇでござんすよ」
「ん?」
レナ
「アンタの顔は無駄に整ってるくせに、中身は小学生の落書き以下でござんすなぁ」
「……えっ……」
レナ
「わっちらに声をかける暇があるなら、風呂にでも入って来なせぇ。
あんたの脂っこい匂いで、スライム様が萎びちまいやすよ」
「……ぐ、あ、あ……ッ!」
ゼルは顔を真っ赤にして崩れ落ち――だがその目は潤んでいた。
「……こんな酷いこと言われたの……初めてだ……ッ!」
「でも……いい……! たまんねぇ……!」
ゼルはレナに手を伸ばしかけたが――
「こらああああああッ!!」
背後から現れたギルド仲間の男が、全力でゼルの首を引き剥がした。
「だから! ナンパして叩かれて興奮すんなって言ってるだろォ!」
「俺の性癖に口出すなよぉ〜!!」
ギルドの片隅で、変態が再び鎮圧された。
……ぷるぷる。
俺はもう慣れてしまった自分が少し怖い。