【おまけ】《スライムとメイドの小休止⑧》
レナ過去編
「わっちは農家の生まれにござんす。
小せぇ頃から力が人さまよりずっと強うて、父上や母上の畑を手伝えば、二人ともそりゃあ嬉しそうにしてくれたもんでござんすよ。」
「されど、同い年の子らからは『怪力女め』と笑われて、石を投げられることもありやした。
泣きてぇ気持ちを堪えて、わっちは平気な顔をしておりやしたが……ほんとは腹の底から悔しゅうてたまらなかったでござんすよ。」
「どうしてわっちに、こんな力がありやすのか――」
ある日、父上にそう尋ねやしたら、父上は穏やかに笑って、こう言いなすった。
「神様がな、必要だからお前に授けたのさ、いつか必ず役に立つ日が来る」
母上もにこりと笑って、そっとわっちの頭を撫でてくださりやした。
父上の百姓仕事はうまくいき、大金が入りやした。
けんど、それが災いして、まわりの連中の妬みも日に日に膨らんでいきやした。
ある日、領主様が父上に仕事を頼んできなすったんでござんすが──それは最初から仕組まれた罠でござんした。
父上は何も知らず快く引き受けなさったものの、日が経つごとにやつれていき……。
やがて、「仕事が進まねぇのは父上の怠けのせいだ」と難癖をつけられ、父上は捕らえられて牢に入れられ、そこで命を落としたと知らされやした。
母上も悲しみに耐えきれず、心を病み、ついには命を絶ってしまいやした。
土地も財もことごとく奪われ、わっちは奴隷商人に売り飛ばされちまったのでありんす。
そこで巡り会ったのが、イリシャはんでござんした。
互いに多くを語らずとも、境遇は察しがつきやす。
気がつきゃ、自然と寄り添うようになっておりやした。
どんなに過去が無情で残酷でも──生き延びる覚悟だけは、捨てられやせんのでありんす。
ある日、奴隷商がわっちらを東の大国にある、歓楽街の遊郭へと移す支度を始めやした。
護衛衆が周囲に気ぃ張っておりやすと、森の奥から何とも不気味な唸り声が響いてまいりやした。
次の瞬間、姿を現したのは──ゴブリンの希少種でござんした。
混乱の最中、血にまみれた護衛の一人が、わっちらの前へ駆け寄ってまいりやした。
「……逃げろ! 今、鎖を外す!」
一斉に森へ駆け出しやしたが……逃げ切れた者はおりやせなんだ。
背後から響く悲鳴と、肉を裂く生々しい音が、一人、また一人と途絶えてゆき、
気がつきゃ残ったのは、わっちとイリシャはんだけでありんす。
そんな時に――闇の中より、黒き粘体が音もなく姿を現しやした。
わっちにゃ見たこともねぇ妙ちきりんな武器――Mk23 SOCOMと、ずしりと重てぇ巨大な槌を授けてくれやした。
そいつを手にした瞬間、父上が申していた“神様”とは、このお方のことに違ぇねぇと、胸の底から思いやした。
わっちは深く頭を垂れ、この御方に一生お仕えする誓いを立て申したのでござんす。
それがわっちのスライム様でありんす♡




