脳天杭打ち《ノーザンライトボム》
鉱石が散らばった洞窟内。光を反射してきらめく結晶が天井から垂れ下がり、壁面は暗紫色の鉱脈で覆われている。足元の岩や砂利も、踏むたびに鈍い音を立てて崩れた。
レナ
「ん? ここはいったい、どこでありんす?」
「スライム様との念話も切れておりやすね」
バルグ
「フン、あのクソ魔族が言うにはよ……どっちかが勝つまで出られねぇらしいな。
ならば……悪ィが、俺はメイドだろうが容赦しねぇ!
早くメンバーに合流すんだ、さっさと決めるぜ!」
そこに立つのは、鬼人族亜種の男。
筋骨が剛鉄の如く隆々と張り、見る者の胸に自然と恐怖と畏敬を生む存在感を帯びていた。
バルグが金棒を振り下ろす。地を砕く轟音に対し、レナはひらりと身をひねり、
腰から抜いたMk23 SOCOMが火を吐く。重厚な銃声が洞窟を揺らし、銃弾がバルグの肩口にめり込む。
しかし巨躯は怯まない。迫る炎熱の金棒――その瞬間、レナは逆手に握った巨大ハンマーを振り抜き、火花が散る!
火花が散った刹那、衝撃は逆流のようにレナの腕を駆け抜けた。握り締めたはずのハンマーが吹き飛び、岩肌に叩きつけられる。
バルグは力任せにレナを持ち上げ、両手で首を絞めた。
だがレナは慌てず、体をわずかに横へひねる。
その瞬間、肘でバルグの前腕に鋭く衝撃を送り、力のバランスを崩させる。
さらにレナは下から上へ腕を押し上げるように前腕を持ち上げ、自らの体を横回転させ着地する。
すぐさまレナは丹田に力を込め、背筋をピンと伸ばし、膝を軽く曲げた。
その状態を保ちつつ全身の力を脱力し、両肩を震わせる勢いで肩甲骨を伸ばし拳を捻り込む。
一撃目が突き出た。
引き戻す間もなく、再び肩を震わせ、拳は連続して飛ぶ。
「――マスター流戦闘術《正拳突き二連》!」
拳の衝撃はバルグの内臓を貫き、背中の鎧を吹き飛ばす!
バルグは息を詰め、体が一瞬止まる。全身に痛みが走り、思わず膝を折りかける。
レナはバルグの体を抱え込み、片足をすくい上げる。
そのまま自らの体を反転させ、相手の体重を宙に浮かせた。
全身の力を込めて、バルグの頭を垂直に石床へと叩き落とす。
鈍い衝撃音が響き、脳天から杭を打ち込まれたようにバルグの体が沈み込んだ
「――マスター流戦闘術・脳天杭打ち《ノーザンライトボム》!」
バルグ
「があぁ……気をつけろ、ヴァレリア……このメイド、強すぎる……!」
巨大な水晶が洞窟の暗闇に浮かび、それぞれの表面に戦場の断片が映し出されていた。レナの必死の攻防、吹き飛ばされたハンマー、迫り来るバルグ――すべてが鮮烈に切り取られ、百夜の目に映る。
獣面の奥で口元を歪める百夜。冷酷な興奮が心を満たす。Sクラスはこれで二人落ちたか――さあ、次は誰だ。
「クハハハ!お前も見てみろ!この連中を!楽しいだろ?」
声が水晶を通して反響する。戦場を俯瞰する視線に、英雄も捕虜も等しくおもちゃのように映った。
そして水晶の中、鳥籠のような檻に囚われたブラックスライムのマサキが揺れていた。液体の身体が檻の隙間から垂れ、かすかな呻き声が洞窟中に響く。




