表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《人間になりたいだけなのに、俺のメイドが強すぎる》  作者: やはぎ・エリンギ
メイド設定集

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/72

マスター流戦闘術

ダンジョンへ向かって駆けるブラックフォージの背後から、矢が次々に飛んできた。

だが、その直前——ユエルが片手で小さな魔導珠を生み出す。珠は淡い光を放ち、地面に触れると瞬時に薄い半球状の結界を展開した。

結界は矢を弾き、飛来する矢羽は光の膜に突き刺さって散っていく。


その隙に、レナが反射的にハンドガンMk23 SOCOMで射撃。残った一、二の矢を精確に撃ち落とす。銃声が木々の間に鋭く響いた。


木陰から現れたのは、快活な笑みを浮かべる蒼天の剣舞のエルフ――カレン・フィオレッタ。長い耳が揺れ、手には立派な弓。


「よくもうちらのリーダーに恥かかせてくれたね!」


レナは微笑みながら言った。

「もう、追いついてきたでありんすか」


イリシャが静かに一歩前へ出る。

「ここは――あてがやるどす」


カレンは鼻で笑い、弓を背から外して地面へ放り投げた。腰の短剣を抜き、くるくると回しながら間合いを詰める。


「女には容赦しないよ!」


低い姿勢から滑り込むように斬りかかってきた。イリシャはクロス気味に両腕で受け流し、刃を右へと弾き飛ばすと同時に、相手の左手首をがっちり掴んで背後へ素早く回り込んだ。


後方から左手でカレンの首の下へ左腕を引き寄せる。

後ろ側の首筋から右手に持ち替えてしっかりと固定。

さらに、自分の左腕を相手の左腕と首の隙間に差し込み、自分の右腕を掴み強烈に絞め上げる。


倒れ込むと同時に、イリシャは自分の脚を使ってカレンの胴体を両足で挟み込み、より強力に動きを封じた。


「――マスター流戦闘術《コブラクラッチ改》!」


カレンは徐々に意識を失っていった。


「お前らもう、帰れねーぞ!」

森の薄明かりの下、リオ・クレインは冷たい瞳でイリシャを見据えた。彼の手には長剣と細剣が握られている。二刀流の達人、その動きはまるで風の如く速い。


「行くぜ!」リオが叫び、一瞬の間もなく両剣が交差する閃光を放った。


イリシャは右手のナックル付きカランビットに装着されたナックルを鋭く光らせ、まずは長剣の重い斬撃を受け流す。カランビットの刃がしなやかに剣身を滑り、鋭い金属音が響いた。


しかし、そこにすかさずもう一本の細剣が襲いかかる。鋭く細い刃がイリシャの防御の隙を突きにかかった。


イリシャは右手のナックル付きカランビットを逆手に握り、リオの細剣の動きを鋭く見極めた。

カランビットの鋭い刃がリオの手首にひっかかり、そのまま素早く斬りつける。


リオの握りが一瞬で緩み、麻痺の痺れが全身に広がって動きが止まった。


「くっ……!」とリオは必死に痺れを振りほどこうとするが、手足はまるで鉛のように重く、反応できない。


イリシャは前へ踏み込み、素早く腕を回して相手の頭をしっかりと右肩に担ぎ上げた。

勢いのまま、背後の巨木へ駆け上がる。

足が幹の高い位置を踏んだ瞬間、全身を反らせて後方へと回転――。


「――マスター流戦闘術《不知火》!」


鈍い音を立てて、リオの後頭部が苔むした土に強く打ち付けられた。

その体は跳ね、ぐったりと動かなくなる。


イリシャはふっと息を吐き、長い髪を肩から払う。

「マスターに楯突く阿呆には、これくらいがお似合いどす」


木々の間に身を潜め、ミラ・ロザリア(双短剣を操る獣人・狼型)が攻撃の隙をじっと狙っていた。無口で奇襲に長けた彼女は、連携の要として参謀的な存在でもある。


一方、フェルナンド・グレイブ(魔法剣士)は雷魔法を剣に纏い、ユエルにじわりと詰め寄る。


結界を張りめぐらせるユエルは新たに魔法珠を作り出し、木の上に隠れたミラへ向けて火炎の一撃を放った。

ミラは激しい熱波に耐え切れず、木の枝から落下する。すぐさま立ち上がり、双短剣を構えて迎え撃つ。


そのときユエルは特級魔装武具《龍哭ノ薙刀ドラグリーヴ》を手にし、地竜ファフニールの咆哮が轟いた。

その凄まじい声と重圧に、ミラは恐怖に凍り付いて身動きが取れなくなる。


剣に帯びていたフェルナンドの雷の輝きも消え失せ、彼もまた恐怖に支配され、動けなくなった。


動きを封じられた二人のもとへ、レナとイリシャが猛然と走り込んできた。

勢いよく顔面を思い切り殴り飛ばす一撃が炸裂し、二人は宙を舞い、意識を失った。


リサ・ハーヴェイ(回復・支援)は

「ごめんなさい、ごめんなさい……」と謝罪の声を上げながら、彼らメンバーの回復に回るのだった。


レナが息をつき、満足げに声をあげた。

「ああ~スッキリしたでありんす!」



彼女はポヨポヨしているマサキを優しく抱き上げ、皆に声をかける。

「さあ、みんな、行くでありんすよ! ダンジョンはもう目の前まで迫ってるでありんす!」


イリシャとユエルが力強く頷く。


闇に覆われた入口が目前に現れ、彼らの胸に次なる激戦の幕開けを予感させていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ